「ソードアート・オンライン」などを手掛けるCGデザイナー、A-1 Pictures雲藤隆太氏に聞いた!アニメーターになるために大切なこと

アニメ

更新日:2015/7/8

今後のアニメシーンに期待するのは、オリジナル作品がもっと増えること

――アニメ業界についても伺います。アニメが増えたこともあって業界では人材不足という現状を耳にしますが、CG分野に関してはいかがでしょうか?

雲藤:他の分野と同じように、人材は不足しています。A-1に関しても、今決まっているタイトルに対してスタッフがまかないきれてないので、社内常駐のスタッフを増やしたいと常に考えてますね。

――撮影は人気があるけど、CGデザイナーはまだ少ないということですが、どんな理由があると思われますか?

雲藤:今日のセミナーを終えて思ったのは、CGってとっつきづらいのかなと。撮影は、基本的に合成や絵づくりだったりするので、Photoshopの延長と考えれば比較的イメージしやすいかもしれませんが、CGは何もないところから取り組むこと自体が分かりづらいですし、絵づくりのようなアートワーク的なアプローチが必要なのか、数学的要素が必要なのか、どっちの人間がふさわしいのかという見解があると思うので。実際には両方とも必要だと思いますが、プログラムやスクリプトに強いスタッフもいれば、アートワークに強いスタッフもいて、けっこうわかれますね。

――クリエイティブな仕事で体力も必要だと思いますが、CGデザイナーという仕事は長く続けていける職業でしょうか。

雲藤:ずっと同じ作業ではなかなか難しいかもしれませんが、仕事内容は年齢とキャリアに応じて変わるので、キャリアを身につけて変化していければ長続きする仕事だと思います。僕も今はディレクターとしても関わっているので、20代のころの仕事のスタイルとは違っています。

――今のアニメ業界の現状を見て、雲藤さんが業界に入ったころと変化したことは。

雲藤:画面のクオリティが圧倒的に上がったんじゃないですかね。昔も、いい作品はいいと思うんですけども、見比べてみると、絵の質というかクオリティは比較にならないぐらい上がっていると思います。CG、作画すべてを含めた相乗効果で、アニメに関わる全員でクオリティを高めてるんじゃないですかね。昔は劇場版で時間をかけてじっくりやっていたCGがテレビシリーズでできるようになったのは、マシンスペックが上がったことも大きく影響しているし、CGのスタッフの習熟度が上がってアニメ演出のことを理解できるようになったのもあると思います。



▲セミナーで説明された「モデリングの要点」からは、現場で様々な能力が求められることが伝わる。CGが仕上がるまでの工程には、ポリゴンなどを操作するモデリング、リギング、基本色や質感を設定するセットアップなどがある。ちなみに「アルドノア・ゼロ」スレイプニールのポリゴン数は356,126。「ソードアート・オンラインⅡ」シノンのポリゴン数は190,898。また、リギングは技術的に難しく、多脚戦車や人型ロボットなど関節の多いメカを扱うには熟練した腕が必要だという。

――今後のアニメ業界がどうあってほしいと思いますか?

雲藤:オリジナル作品がもっと増えたらいいなと思います。シリーズが見たいお客さんももちろん大事ですが。与えられた素材ではなく、キャラクターの造型、世界観、デザインなどを誰も知らないところから作り上げるので、原作モノとはまた違う“つくりがい”があると思います。オリジナルアニメからコミカライズなどされれば、また新たな発見があるかもしれませんし。

――あらためて、アニメでCGに挑戦したい人に必要なものとは。

雲藤:いろんなところに関心をもつことですかね。CGに限らずかもしれませんが。たとえばロボットが好きで同じものを追い掛けるのもいいと思いますけど、興味が狭まると出てくるものを狭めてしまいかねないのでもったいないなと思います。好きなことばかりに捕われすぎないで、見たことがないものにも注目することが大事なのかなと。

――A-1 Picturesさんのこれからの作品にも注目しております!

雲藤:これからも魅力的なタイトルがいっぱいあります。本当にいっぱい。まだくわしくは話せませんが…(笑)。手を止めることなく、みんな全力で取り組んでいます。どんどん繰り出しますので、ご期待ください。よろしくお願いします。

アニメーターにとっていちばん大切なのは想像力、とのこと。雲藤氏も、ふだんは映画や演劇を見て想像力を養うことを欠かさないそうだ。CGデザイナーにおいては、デジタル社会の流れに乗って効率の良さを求めることも必要だと言えそう。ちなみに、「文芸、演劇、物語を見ないで映画、アニメがつくれると思うな」とは富野由悠季監督の名言。この考えはアニメ業界に脈々と受け継がれていることかもしれない。

A-1 Picturesでは、新たなCG分野の才能を求めて、希望者はほぼ全員面接を行っているという。作品が羅列されたポートフォリオも確認はするが、最終的に採用の決め手となるのは「やる気」や人柄、プレゼンテーション能力だそう。なお、それらは実際の現場でも養われていくそうなので、まずは志を持って、心強い先輩たちのもとに飛び込んでみてはいかがだろうか。

文/麻布たぬ

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■セミナー概要
【名称】アニメ業界デジタルワークスセミナー
【講師】株式会社A-1 Pictures 雲藤隆太 氏
【主催】一般社団法人日本動画協会 デジタル技術研究会
【協力】株式会社A-1 Pictures
【会場】日本動画協会 会議室
【開講日時】2015年5月30日(土)

■日本動画協会公式サイト
http://www.aja.gr.jp

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