滝藤賢一「いつも“やりたい”と思える役をやれるのは、幸せなこと」

あの人と本の話 and more

2015/12/5

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回は、映画『はなちゃんのみそ汁』でよき“お父さん”を演じた滝藤賢一さんが登場。役作りに懸ける思い、そして原作との幸せな関係について訊いた。

 ドラマや映画、さまざまな役どころでオファーが引きも切らない滝藤さん。そんな忙しいなかでも、役作りのために1カ月は時間が欲しいのだそう。

「一人の人生を生きるには1カ月でも少ないくらいです」

 新作映画『はなちゃんのみそ汁』は、ガンを患い、この世を去った33歳の女性の実話をもとに描かれた家族の物語。滝藤さんは、家族の「楽しい」日常を牽引する父親という重要な役どころを演じた。

「実在の人物で、しかも今まで経験したことのない役だったので、とくに準備に集中したいと思いました。僕のコミカルな演技がやりすぎているんじゃないかと不安もあったんですが……試写を見て号泣しましたね。滅多にないんですよ、こんなことは。広末涼子さんの『信ちゃん、ありがとう』というセリフ、今言われても、たぶん泣きますね(笑)」

 今回選んだ一冊『破裂』は、自身が出演したドラマの原作。歪んだ正義に則って高齢化が進む日本社会を変えようと、医療業界で暗躍する官僚・佐久間を演じた。

「この小説を読んで、生きていることを苦しいと感じている人が、たくさんいるのだと知りました。僕は子どもが4人いるので、まだ見ぬ孫たちも含めて『ゴッドファーザー』のようにたくさんの人に見守られながら眠るように死にたい……なんて思い描いていたんですが、安易なことは言えませんね」

 最近は脚本を読むのに忙しくて、なかなか「本を読む時間がない」という滝藤さんだが、20代の頃は読書を楽しんでいた。「岡本太郎さん、重松清さん、東野圭吾さん……」と多くの作家の名が挙がる。

『クライマーズ・ハイ』(横山秀夫/著)は、映画に出演することが決まってから原作小説を読みましたが、『神沢を演じたい!』と強く思いました。『半沢直樹』(池井戸潤/著)の近藤の時もそう思いましたし、『破裂』(久坂部羊/著)の佐久間も、『はなちゃんのみそ汁』(著:安武信吾・千恵・はな)の信吾もそう。やりたいと思える役を演じられるのは、すごく幸せなことですよね」

(取材・文=門倉紫麻 写真=川口宗道)

滝藤賢一

たきとう・けんいち●1976年愛知県生まれ。映画『クライマーズ・ハイ』『ゴールデンスランバー』、大河ドラマ『龍馬伝』などで注目を集め、ドラマ『半沢直樹』で日本放送映画藝術大賞優秀助演男優賞を受賞。2016年は『残穢』『64』『テラフォーマーズ』『SCOOP!』など出演映画が多数控えている。
ヘアメイク=TOYO(BELLO)

 

『破裂』書影

紙『破裂』(上・下)

久坂部 羊 幻冬舎文庫 各600円(税別)

画期的な心臓病治療の完成を目指す野心家の医師・香村、医療ミスの告発に挑むも麻酔中毒の麻酔科医師・江崎、老人が「ぴんぴんポックリ」逝く社会を目指す厚生省の官僚・佐久間。それぞれの思惑が交錯し、劇的に転がり始めた。現役の医者でもある著者が臨場感たっぷりに描く傑作医療サスペンス。

※滝藤賢一さんの本にまつわる詳しいエピソードはダ・ヴィンチ1月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

映画『はなちゃんのみそ汁』

監督・脚本/阿久根知昭 出演/広末涼子、滝藤賢一、一青 窈、赤松えみな(子役) 配給/東京テアトル 12月19日(土)テアトル新宿&福岡県内先行公開、2016年1月9日(土)全国拡大公開 
●乳がんを宣告された千恵は信吾と結婚し、娘・はなを授かる。がんが再発した千恵は「ちゃんと作る、ちゃんと食べる」ことを決め、4歳になった娘・はなにみそ汁作りを教える。実話をもとにした温かな家族の物語。
(c)2015「はなちゃんのみそ汁」フィルムパートナーズ