津田大介2011年を振り返る 「政治メディア作り」

スペシャルインタビュー

更新日:2013/8/9

もっと理想的なメディアが欲しい。
自分で読みたい情報がないなら自分で作ろうと思った

――投資のお話しが出ましたが、結局、自分のおカネではじめなくちゃ、と別のインタビューで答えておられますね?

  津田:「おカネは出すけど、口は出さない」というのが理想ですけれど、まあやっぱり出すんですよ(笑)。それは分かっていたんで、そことどう折り合いをつけるか、というのは考えてはいたんですが、3.11が起こっていったんは政治メディアどころではなくなり、僕自身は情報を整理・精査したり、ということにまず2~3ヶ月は専念することになりました。

津波、放射能、そして物不足……Twitter上にも情報が溢れかえり、混乱状態にありました。僕が自分でできることはなんだろう、と考えたときに、フォロワーも一定数いるし、メディアとしてのTwitterでの情報流通の特徴も分かっている、ならばある程度正しい情報を整理してまずは伝え、一定の道筋を付けることができるはず、それが自分の役割だと考えて取り組んでいたんですね。

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そういうことをやっているうちに、日本の政治がいよいよ複雑な課題を抱えているということが浮き彫りになってきて――突き詰めて言えば、これはメディアの課題なんですが――これはやっぱり本気で(政治サイト作りを)やらなきゃ、という思いを強くしたんです。

役人が無能だ、とか、行政が無能だ、というそういうことは全然なくて、みんな優秀で一生懸命取り組んでいるんだけれど、その結果が、なぜこんな事になってしまうのか?そこにはたぶん、そのプロセスを伝えるメディアの責任がすごく大きい。

――津田さんはそこで「アジェンダ設定」がきちんとなされてない、とも指摘していますね。

津田:そうですね。あるいはグランドデザイン、大きな目的を描く人がいない、とも言えるかも知れません。TPPなんかまさにそうですけれど、もうちょっと国民が整理された情報をもって、政策に向き合う、それこそ1~2年をかけて議論して意見を表明していく、そして、それを政治側がプレッシャーとして感じる情報環境が無ければいけません。新聞やテレビの政治報道は「政局」が中心すぎて、残念ながらそうなっていません。もっと理想的なメディアが欲しいし、自分で読みたい情報がないなら自分で作ろうと思ったわけです。

――マスメディアにはもう期待しない?

津田:いや、そんなことはないですよ。別に僕がメディアを作ったから、マスメディアが必要なくなるなんて全く思っていません。構造的にマスメディアが絶対できないことを、僕はやっていこう、ということです。

――具体的には?

津田:マスメディアは国会を中心に取材します。
もちろん役所も取材しますけれども、どうしても話題は政局中心になる。
でも、実際、政策の多くは役所が作っているわけです。ぼくが作るメディアでは、国会ではなく役所を取材するつもりです。もちろん、役所が作った政策に対して意見したり、時には止めさせたりというのが、政治家の役目――つまり政治主導ということだとは思いますけれど、少なくとも今はそれが十分に機能しているとはいえない。

役所を取材している記者さんもおられますが、なかなか記事として世の中にでない。それをなんとかしたいと思っています。

――開始時期や名前は決まっていますか?

津田:まだ名前は内緒です。年明けから人の募集をはじめるつもりです。記者もそうなんですが、エンジニアの方に参加してもらいたいですね。

つだ・だいすけ●ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース 非常勤講師。一般社団法人インターネットユーザー協会代表理事。J-WAVE『JAM THE WORLD』火曜日ナビゲーター。IT・ネットサービスやネットカルチャー、ネットジャーナリズム、著作権問題、コンテンツビジネス論などを専門分野に執 筆活動を行う。ネットニュースメディア「ナタリー」の設立・運営にも携わる。主な著書に『Twitter社会論』(洋泉社)、『未来型サバイバル音楽論』 (中央公論新社)など。
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取材・文=まつもとあつし 写真=隼田大輔