村川絵梨「演出家の方が与えてくださった明確なビジョンに向かって役を作っていくのは、目標が見えてる分、やりがいがあります」

あの人と本の話 and more

2016/4/6

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、5月に舞台『たとえば野に咲く花のように』に出演する村川絵梨さん。稽古真っ最中の彼女が語る、舞台の面白さとは?

「『観客をタイムスリップさせるのが役者の仕事だから』。そうおっしゃったのは、本作の演出家・鈴木裕美さん。稽古に入った瞬間、確かにセットや音楽から昔の場末のダンスホールの空気が立ち上がってきたんです。その空気の中に観てくださる方をどれだけ連れていけるかは、私たち役者の力量にかかっていると思います」

舞台『たとえば野に咲く花のように』では、朝鮮戦争さなかの九州のさびれたダンスホールを舞台に、この時代の4人の男女の恋愛模様が描かれる。この作品で村川さんが演じるのはダンスホール一の美女に婚約者を奪われる女性・あかね。

「あかねは、一見とても健全で健康的で由緒正しいお嬢様のような人。そんな女性がどんどん取り乱して崩壊していく姿をちゃんと見せたいねと、裕美さんと話し合いました。
裕美さんとご一緒するのは今回が初めてなんですが、稽古の最初に5日間くらいかけてしっかりと脚本を読み込み、それぞれの役についてとても明確なビジョンを与えてくださった。そのビジョンに向かって役をつくっていくのは大変だけれど、目標が見えてる分、やりがいがありますね」

スピーディで緊張感にあふれた稽古の中で、共演者と日々親密になっていくのも楽しみのひとつ。

「ともさかりえさんはすごく穏やかな方。私が緊張していると、『セリフ、覚えてきた?』『立ちげいこは緊張するね』とか話しかけてくださって、気持ちをほぐしてくださるんです。石田卓也くんは、私と二人して山口馬木也さん演じる康雄を憎む役回りなので、『康雄は本当にひどいよね!』と、彼への対抗心を共有して盛り上がっています(笑)」

みんなでつくっていく舞台というジャンルが好きと語る村川さん。

「映像は瞬発力の勝負だけれど、舞台は『こうしたらよかった』と悔やんだことを、次の日にまた取り返すチャンスがある。今回も日々トライを続けて、充実した舞台にしたいと思います」

(取材・文=釣木文恵 写真=冨永智子)

村川絵梨

むらかわ・えり●1987年、大阪府生まれ。2004年、映画『ロード88 出会い路、四国へ』で主演を務め、翌05年連続テレビ小説『風のハルカ』でヒロインを演じる。07年、東京セレソンDX『歌姫』以来、舞台でも活躍。主な出演作に映画『謎解きはディナーのあとで』『ポプラの秋』やドラマ『ぼんくら2』(NHK)、『荒地の恋』(WOWOW)など。
衣装協力=The Dayz tokyo

 

『ミッキーマウスの憂鬱』書影

紙『ミッキーマウスの憂鬱』

松岡圭祐 新潮文庫 490円(税別)

東京ディズニーランドに夢と希望を抱く青年・後藤。無事キャストに採用され、華やかな仕事ができると意気込んで出社した彼を、さまざまな困難が待ち受ける。バックステージから出ることを許されない地味な裏方の仕事、準社員と正社員との格差、同僚のトラブル……。実在の場所も続々登場する架空の青春小説。

※村川絵梨さんの本にまつわる詳しいエピソードはダ・ヴィンチ5月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

舞台『たとえば野に咲く花のように』

作/鄭 義信 演出/鈴木裕美 出演/ともさかりえ、山口馬木也、村川絵梨、石田卓也ほか 4月6日(水)~24日(日)東京・新国立劇場小劇場 THE PITにて上演
●朝鮮戦争真っ最中、九州の港町。恋人を戦争で失った満喜(ともさか)に夢中になる康雄(山口)。それを知った康雄の婚約者あかね(村川)は彼を執拗に責める。そんなあかねに恋する康雄の弟分・直也(石田)。4人の関係は次第にこじれていく――。