板尾創路「『八つ墓村』のような、誰も見たことない“画”を目指して映画を作り続けていきたい」

あの人と本の話 and more

更新日:2013/12/19

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、長編映画第2作『月光ノ仮面』で主演・脚本・監督の三役をつとめ、またしてもイタオワールドを爆発させた、板尾創路さん。敗戦直後の落語界を舞台にしたこの映画は、この時代ならではの独特なムードを映しとっていた!

「『脱獄王』(長編第一作)も『月光ノ仮面』も、
どっちも戦中戦後を舞台にした時代モノなんですけど、
そのあたりの時代は個人的に興味があって。
あの時代って、混沌としてますよね。
日本社会がまだ完成してないというか、
いろんなものがまだ整理されてない、
フツフツとしてる感じがする。人間も、どこかダークでね。
そういう時代だからこそ、『月光ノ仮面』みたいな
出来事も起こるんやないかなぁ、と。
……最後のシーンみたいなことは、
絶対起こらないですけどね(笑)」

役者としては今回、帰還兵を演じていた。
帰還兵と言えば、横溝正史! そう投げかけると、

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「ああ、好きですねぇ。
『八つ墓村』は名作やと思います。
映画の方も好きですよ。
僕は自分の映画で、
誰も見たことないものを見せたいんですけど、
『八つ墓村』はまさにそんな感じですよね。
そういう“画”を目指して、
これからも映画を作り続けていきたいです」

(取材・文=吉田大助 写真=石川信介)

板尾創路

いたお・いつじ●1963年生まれ。大阪府出身。86年にお笑いコンビ「130R」を結成。芸人としてバラエティ番組などに出演する一方、映画やドラマ、舞台で役者としても活動を行う。『板尾創路の脱獄王』で長編映画監督デビュー、同作で第29回藤本賞「新人賞」を受賞。文筆家としては、06年より『板尾日記』(リトルモア)シリーズを継続中。本作のノベライズで、小説家デビューも果たす。
ヘアメイク=杉山裕則(pink)

 

紙『昭和の爆笑王 三遊亭歌笑』

岡本和明/新潮社 2100円

「三平が憧れた三遊亭歌笑こそが『昭和の爆笑王』なのだ」(あとがきより)。戦中戦後の日本に爆笑の渦を巻き起こし、1950年に交通事故により33歳で急逝した落語家・三遊亭歌笑。その生涯が、小説形式で綴られる。幼少期からいびつな顔を笑われていた歌笑は、コンプレックスを武器に変え、落語家になることを決意する。家出して師匠に弟子入り、下積みに耐えて真打昇進、「あんなのは落語じゃあない」と言われながらも己の芸を磨く──。

※板尾創路さんの本にまつわる詳しいエピソードは
ダ・ヴィンチ2月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

『月光ノ仮面』

監督・脚本/板尾創路 出演/板尾創路、浅野忠信、石原さとみ 配給/角川映画 1月14日(土)角川シネマ有楽町、シアターN渋谷ほか 全国ロードショー 
●「俺はいってぇ誰なんだ」。満月の夜、軍服に身を包み、顔面に包帯を巻いた男(板尾創路)が、寄席小屋に足を踏み入れる。その男は、戦死したと伝えられていた落語家・森乃家うさぎ、らしい。記憶をなくしていた男を、森乃家一門と婚約者(石原さとみ)は歓喜で受け入れる。そんなある日、もう一人の男(浅野忠信)がやって来て、奇妙な三角関係がはじまり──。古典落語「粗忽長屋」のささやきと、「月光」の調べが交じり合い、誰も見たことがないビジョンが爆発する!
©2011「月光ノ仮面」製作委員会