「イラストレーター」という肩書ではくくれない。 loundraw(ラウンドロー)【インタビュー・前篇】

文芸・カルチャー

2017/7/20

 『君の膵臓をたべたい』の装画で一躍注目を浴び、出版界からオファーが相次ぐ人気イラストレーター・loundraw(ラウンドロー)。弱冠22歳の彼がこの夏、初の個展を開催する。先日、卒業制作のオリジナルアニメ『夢が覚めるまで』をYouTubeで公開し、1週間で30万回以上再生されるなど大反響を呼んだことも記憶に新しいが、他にも自身もメンバーとして活動するアーティスト集団CHRONICLEでの音楽活動を開始。表現の幅どころか、表現ジャンルをも拡張し始めたloundrawとは何者か?

前後篇のインタビューで、素顔に迫る。

 

——昨年12月刊行の初作品集『Hello,light. ~loundraw art works~』(双葉社)には文芸書の表紙を飾った数々の装画と共に、オリジナルイラストも多数収録されています。見渡してみて改めて感じたんですが、光の表現が独特ですよね。光が個性になる、武器になると感じたタイミングって覚えてらっしゃいますか?

loundraw ちょうど今、個展に向けて昔の絵を見直しているところなんですが、大学1年生くらいから光の表現を使い始めていることに気づきました。それはたぶん、デジタルに慣れ始めた時期で。デジタルの絵の特徴的なところは、グラデーションの機能を使うと指定した範囲の色がシームレスに変わることです。それは現実の光の変化とすごく近い。デジタルで絵を描く以上、これを取り入れたら面白いだろうなと思ったのが、きっかけだった気がします。

『Hello,light. ~loundraw art works~』より

 

——初めて絵の仕事をしたのはいつですか?

loundraw それも大学1年生の時です。pixivで発表していた僕の絵を見たメディアワークス文庫の編集さんから、『星の眠る湖へ―愛を探しに―』(永田ガラ)の装丁をお願いしますという依頼を頂いたのが一番最初です。

——その本の装画にも光は入り込んでいますが、女の子の目の中で白鳥が泳いでいる構図が印象的ですね。構図って、もしかしたら絵のタッチ以上に個性が出る要素だと思うのですが、発想の源泉はどこにあるんだろうとか、この若さにしていろいろ経験されてきたのではないか(笑)とか妄想してしまうんですが……。

『星の眠る湖へ』(永田ガラ/メディアワークス文庫) 

loundraw その逆で、とても平坦な人生を歩んできたと思います(笑)。両親が二人とも地に足の着いた考えをもっていたこともあり、勉強するのが当たり前で、田舎の進学校に普通に通って友達も普通にいて。福井出身なのですが、そこから九州の大学に進学したことでたまに驚かれることがあるぐらいです。なので源泉があるとすれば、経験というよりも自分の考え方とか、そういうものなのかもしれません。

——考え方、とは?

loundraw 物事にロジックを求めるタイプで、「どうしてそうなるんだろう?」とずっと考えているんです。例えばこの前、洗顔剤を変えて、乳液を以前より高いものにしたんですね。そうしたら、飲み物を飲む時にこぼすようになって。「なんでこぼすんだろう?」と考えたら、乳液の保湿性が高いから、唇が濡れている。その状態だと「水が唇に付いた」って感触が一瞬遅れるので、いつもの感じでコップを傾けると、こぼれるんです。それくらい感覚というものは微妙なところで成立してるんだな……という気付きを、絵の中でどう表現しようかと考えるんです。そういったことがわかると、「では、目が見えないキャラクターにとっての恋愛とはどういったものだろう? 人との距離感はどうするんだろう?」というように、ひとつのきっかけに紐付いてイメージされることが増えていくんですよね。

——日常で考えることによって得た気付きを、絵に反映させていく、と。

loundraw 他の方の絵を見る時も、その人の気付きをもらっているという気持ちが強いです。絵は結局、その人が現実の世界をどう見ているかという解釈を、色や形で表現したものだと思うんですね。なので例えば「こういう色を使えば、人はこういう感情を持つ」というロジックを、強くお持ちの方に惹かれることが多いかもしれません。例えば、新海誠さんや細田守さん、たかみちさんなどです。

——現実での気付きが絵を変えていくならば、画風は無限に変化できそうですね。実際に、『君の膵臓をたべたい』の装画と、同じく住野よる作品の『よるのばけもの』の装画は、まるで別人かのようにタッチが違います。

『君の膵臓をたべたい』(住野よる/双葉文庫)

 

『よるのばけもの』(住野よる/双葉社)

 

loundraw 最近は「『君の膵臓をたべたい』のようなイメージで」とご依頼を頂くことも増えたのですが、どの作品もまずは本を読んでみて、キャラクターの話し方や文章の感じをふまえ「こういう世界観か、じゃあこんな絵を描こう」と進んでいくかたちなんです。何パターンか提出する中で、『君の膵臓をたべたい』の絵とはまったく違う、かなり攻めているものを入れることもあるんですが、それが使われるかどうかは編集者さんのディレクション次第で。もちろん、絵を描くプロとして、どの案が一番効果的かという話は必ず伝えるようにしています。不本意なものができてしまって困る、という経験はほとんどなかったですね。

——今年4月から、東京のデザインコンサルティングファーム「THINKR」に所属されたと伺っています。

loundraw 大学四年生のときは普通に就職活動をしていましたし、働きながらイラストの仕事を続ければいいかなと思っていたんですが、そんな時にTHINKRさんにお声がけ頂いたり、色々な転機がありまして、これはきっと人生で1回あるかなないかのチャンスだな、と思ったんですよね。遠くに行きたい、っていう気持ちが強いんですよ。もっともっと、自分の知らない世界を知りたい。

——その思いが、イラスト以外の表現ジャンルへの挑戦に繋がっている?

loundraw はい。僕にとって絵を描くことは、表現手段のひとつなんです。絵を描くのが特別大好きとかそういうことではなくて、人に何かを伝えたいとか自分の感情を表現したいという時に、これまでは絵が一番得意でしたし、仕事にすることもできた。そろそろ他の手段も試してみたいな、という段階に気持ちが入ってきたんです。

——後篇ではそのあたり、詳しく伺っていきたいと思います!

後編はこちらから⇒「このアニメは、今の僕の繋がりの集大成」 loundraw(ラウンドロー)【インタビュー・後編】

取材・文=吉田大助