ジャニーズ事務所から小説家誕生! デビュー作『ピンクとグレー』で見せつけた小説への意欲

新刊著者インタビュー

2012/2/6

自分の一番の強みは、人が売れていく瞬間を間近で見てきたこと

二人の主人公はどっちも自分です

「自分の手で、ゼロから何かを生み出したかった」

 この人は、小説を書くべくして書いた。書くことで、自分と世界を理解しようとし、何かを変えようとした。その感触は、作品のすみずみから感じ取ることができる。

『ピンクとグレー』は幼いころから親友同士でありながら、芸能界に翻弄され絆を失ってしまった、二人の男の物語だ。物語は、主人公がある手記を書くと決意するシーンから始まる。「第一章 24歳 ブラックコーヒー」をしめくくる最後の文章は、こうだ。

 白木蓮吾――彼について、過去彼の隣にいたというだけの僕がこれを綴るのは忍びない思いももちろんある。彼のファンには僕を非難する人もいるだろう。
 それでも僕はこれを書く。永遠に外れる事のない足枷を引きずりながらも、それでも僕は生きていかなければならないのだ。

 その後、時間は巻き戻る。「第二章 9~11歳 イチゴオレ」「第三章 25歳 シングルモルトウィスキー」「第四章 17歳 Dr Pepper」……。時間軸が入り乱れ、「僕」こと河田大貴(りばちゃん)と、白木蓮吾=鈴木真吾(ごっち)との関係性の変化が描かれていく。

「時間軸をバラバラにするという構成は、書き出したときから考えていました。“この二人は別れる”とわかった状態で、読み始められるようにしたかったんです。そうすることで、“いつ、どんなふうに別れるんだろう?”って、読者の興味を持続させたかった。それから、二人の日常のなにげない瞬間でも“こんなに仲がいいのにいつか別れるんだ”って思わせたかった」

 二人は小学生の頃、横浜で出会い無二の親友となった。いつも一緒に行動し、バンドも組んでいた。高校2年で読者モデルにスカウトされたときも一緒、大学時代に芸能プロダクションと契約したときも同居生活を送っていたほど仲のいい二人だったが、「僕」は売れ残り、ごっちは芸能界のヒエラルキーを駆け上がった──。

「昨日、メンバーの小山(慶一郎)に渡したら、その場で20ページぐらい読んでたんですけど、“これ……大貴はお前なの?”って聞かれて。“すごく安直な質問をキミはするよね!”って(笑)。出来事とか描写はリアルに経験したことだったりもするんですけど、話自体は完全なフィクションですね。ただ、小山にそう聞かれたとき答えたのは、“どっちも俺なんだよね”と。大貴とごっちは、自分の中にある二つの視点なんです。やっぱり自分の強みとして一番でかいのは、メンバーとか他の先輩も後輩も含めて、一番近くで人が売れていく瞬間を見てきたこと。それってたぶん、逆からも言えることで。他人のことをうらやましいと思う自分もいるし、他人からうらやましいと思われてる自分もいる。その両方の自分を、二人のキャラクターで書いてみたんです」

 ファンの間では、加藤の文才はよく知られていた。アイドル専門誌やジャニーズ事務所の携帯サイトでエッセイを書き、「そっちでは笑いを取りに走ってましたね」。そのユーモア感覚は『ピンクとグレー』のとくに前半部分で活かされているが、後半以降は雰囲気が変わる。この物語は、王道の青春小説として始まりながらサスペンスへと変貌を遂げる。

「登場人物が常軌を逸した奇行に走るけど、なんか理解できちゃうっていう話に僕自身すごく惹かれるんです。そういう展開に、真ん中あたりから持っていきたいとは思ってました。……暗いですよね(笑)。“ジャニーズ事務所からこんな小説出していいんですか?”って、自分で書いておきながら言っちゃいましたからね」

 張り巡らせたさまざまな伏線がラストでひとつの像を結び、狂気の香りが濃厚に漂い出す。抜群の構成力。だが、物語はすっきりとは終わらない。独特の後味に翻弄され、読み終えた後でもう一度、冒頭から読み返す人が続出することだろう。

「小説の中にも書いたんですけど、『マグノリア』という映画のラストって、一度観たら絶対忘れられないじゃないですか。同じようなことを、この小説でしたかったんだと思います。自分がもし読者だったら、一度読んだら忘れられないようなレベルまで、ラストの衝撃度は持っていきたいと思ってました。……今すごい、ビッグマウスみたいになってますけど(笑)」

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