「掃除」と国家と青春と!? 異色にして王道な熱血小説の続編

新刊著者インタビュー

2012/2/6

前作の特集記事を読んで作品世界をつかもう!

世界を呪うよりは、それを踏み台にして新しい世界へ行けばいい

掃除とは「頃良しっ!」の一声と共に空中高く舞い上げた塵芥を長物で華麗に操るスポーツ競技である──。そんな摩訶不思議なもうひとつの日本を舞台に、三崎亜記が高校生の青春を描いたらどうなる?

 奇想天外にして実は王道な青春小説として話題を呼んだ『コロヨシ!!』。続編にあたる『決起! コロヨシ!!2』が約2年を経て刊行された。

 前作では主人公にして掃除部のエース・藤代樹の先輩や後輩、顧問、ライバル関係など、学校内での出来事を中心に物語が外へ外へと広がっていったが、さて続編は何処へ?

「風呂敷を広げるだけ広げたから、今度は畳むというよりも出来上がった箱をどう上手く包むか、という感覚で考えていきました。今回のストーリーの要となっているのは、前作で登場した人々がガラッと様相を変えて樹に対峙してくるところでしょうか。

指導者が立ち向かう相手になったり、敵だと思っていた人間がある局面では味方になったり、自分を翻弄していた人を逆に導くことになったり……。それぞれの関係性が変わっていく中で、樹が何をどう選びとっていくかという過程が今回書いていて一番難しく面白かったところでもあります」

 高校3年の春、樹が主将を務める掃除部には入部希望者が殺到した。高校生だけに許されたマイナースポーツの「掃除」が、突然「新国技」候補に持ち上げられたためだ。ところがなぜか部費が大幅に削減され、樹を目の敵にする牧田先生が新顧問に就任。信頼していた寺西先生、掃除を通じて絆を深め合っていた後輩の高倉偲も学校から姿を消してしまう。

 だが、樹も同じ場所に留まってはいない。導かれるように外の世界である「居留地」や「西域」へ渡り、そこでの経験を糧に成長を遂げていく。

「居留地は主人公にとって何らかの大きな決断と変化をするために行く場所、ということは『失われた町』(2006年刊。居留地が登場する)のときから決めていたこと。今作でもそれは変わりませんが、作者の意図以上に樹が成長しようと歩き出したところはありますね」

 居留地で樹が学んだこと。それは嘘と欺瞞にまみれた掃除に携わる大人たちを「謀る」術だ。世界を呪うのではなく、踏み台にしてでも新たな世界へと飛び出してやるという決意。それは純粋な子どものままの心では到底できない、システムへの合理的な抗い方でもある。

「もう出来上がっている大人がそれをやったらダメですが、まだ不完全な10代ならば、いくらでも自分を謀ればいいじゃないですか。青春の純粋さ、一途さっていうものをもう一回考えてみようよ、というところで樹を走らせてみたい気持ちはありましたね」

『コロヨシ!!』シリーズが他の青春スポーツ小説と決定的に異なるのは、ルールの中で正々堂々と戦うだけの純度100の物語ではないという点だ。ルールや枠組みという不自由さの中でこそ見えてくる自由がある、と三崎さんは語る。

「自由に生きるということは、会社に入ったけど上手くいかなかったから辞めてフリーターになった、ということではないですよね。不自由な環境の中で、自分が動けるだけのスペースをそこで創り上げていくことが自由だと私は思う。だから『コロヨシ!!』は若い世代にこそ読んでほしいし、そういう意味での自由を履き違えてほしくないという思いもあります。自由と不自由は対極ではない。不自由なつもりで動いていたのが実は自由だったり、不自由な中にも幾許かの自由がある。そんな一歩高い視点から自由を突き詰めてみたかった」