まったく部活になりえないものを、部活にでっちあげてしまおう

「掃除」ルール解説

「敷舞台」といわれるフィールドの中で、長物を用いて舞い上がった塵芥を回収するスポーツ競技。約800年前に大陸の大国「西域」から日本へと伝播された。いわゆる家庭の「掃除」とはまったく別のものである。「頃良しっ！」とは「掃除」の舞い初めの一声。試合開始の掛け声であると同時に、自らを鼓舞する鬨の声でもある。

登場人物紹介

①寺西先生
掃除部の顧問。顧問になってずいぶん経つが、掃除のルールに無知であるため部員たちには疎んじられている。

②高倉 偲
謎の多い新入生にして天才掃除プレイヤー。見かけは可憐な美少女だが、意外と気は強い。掃除に対して複雑な想いを抱いているらしいが……。

③藤代 樹
掃除部のエース。才能に恵まれながらも、どこか冷めた性格の主人公。ある事情のため、掃除部に所属していることは両親に秘密にしている。

④大介
召喚部に所属する樹の親友。一見ぼーっとしているが抜群の運動神経を持つ。くせ毛の前髪は常に長い。なぜか物言いがやけに古風。

⑤梨奈
完璧な美貌で周囲を圧倒する、樹の幼なじみ。生まれついての女王様体質で常に周囲を翻弄するが、樹とは強い絆で結ばれている!?

コロヨシ!!世界を読み解くための４つのキーワード

◆掃除と国家
この世界における「掃除」は、古から続く日本固有のスポーツ。だが連綿と受け継がれてきた伝統を誇る一方で、何らかの理由によって現在は国家保安局の管理下に置かれている。国家が定めた活動制限があるため、公的にスポーツとしての掃除ができるのは高校の3年間だけ。その背景には居留地や西域との関連もあるらしいが？

◆恋とライバル
掃除部の中では圧倒的な実力を誇る樹。そんな彼の前に現れたのが、可憐な年下の美少女・偲。だが実は彼女は樹以上の腕を持つ掃除プレイヤーだった！　甘酸っぱい恋が始まる前に、熾烈なライバル関係が幕を下ろす!?　さらに思慮深い親友だと思っていた大介も、大胆な決断を下して樹に大きなショックを与える。

◆樹と掃除
初めて長物を握ったのは3歳のとき。きっかけは掃除の達人であった祖父の手ほどきだった。とある事情で祖父がいなくなった後も、掃除スポーツに魅了された樹は周囲に内緒で練習を重ねてきた。ちなみに家では妹・沙月の協力を得て、「肩車スポーツ部」に所属していると嘘をついている。

◆この世界の「日本」
近世に300年にわたって閉鎖政策を続けていた日本。だが40年前に起こった戦争に敗れたことで、独自の発展を遂げていた掃除の歴史も大きな転換を迫られる。戦後の暫定統治機構は日本を8つの州に分け、実験的な意味合いも含めてそれぞれ異なる政策を実施。掃除が「活動制限スポーツ」として復活したのは戦後10年を機にである。

(取材・文＝阿部英恵　写真＝茂木一樹　イラスト＝睦月アキラ)