「リタイアしたら飲食業をやりたい」は、一番失敗しやすいパターン! “老後の落とし穴”にハマらないために今知っておくべきこと。『PRESIDENT』編集長に訊いてみた!【後編】

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公開日:2017/12/15

人気の特集のひとつ(プレジデント2017年11/13号)

 人生100年時代といわれる昨今、定年後の暮らしに不安を感じている人も多いだろう。40、50代になると、自分だけでなく子どもや親の問題も抱えるようになり、生き方、働き方、暮らし方を見つめ直す機会が増えてくる。いざというとき後悔しないために、今から準備できることはあるのだろうか? 人気ビジネス雑誌『PRESIDENT』の鈴木勝彦編集長に話を伺った。

鈴木勝彦編集長

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――人生100年だと考えると、定年後も働き続けるのが当たり前の時代になりそうですね。

鈴木編集長(以下、鈴木) リタイア前にやっておけばよかったと思う後悔のひとつとして、「一生続けられる仕事を見つければよかった」という声も定年後の読者の実感として多いようです。ですから2017年11/13号の「金持ち老後 ビンボー老後」特集でも、「有望な仕事、商売の始め方 50代からでもOK“儲かる自営業”入門」という企画をつくりました。

 今60代後半の団塊の世代が90代になっても健在であることを考えると、私たちは70代まで働かなければならないだろうと想定しています。若い世代もよりいっそう将来をみすえて、独立することを目標に働いている人も増えているのではないでしょうか。ベンチャー起業家も20、30代に優秀な方が多いように見えます。しかしそういったケースも全体の一部でしかないと思いますので、会社勤めの次のステップとして、どういう働き方がいいのか考えるために具体的な成功事例も紹介しました。

「リタイアしたら飲食業をやりたい」というのはよくある話ですが、これは一番失敗しやすいパターンです。自営業を趣味の延長のように漠然と考えるのではなく、自分の強みと市場のニーズを考えて、儲かるかどうかしっかり分析してから準備しなければいけないんですね。そのためには、現役時代から「何をどうすれば金になるのか?」ということをリアルに考える習慣を身につけることです。

 記事のなかで、「大企業出身の人は、(開業するときも)大風呂敷を広げたがるから非常に危険」と企業コンサルタントの方も忠告しているように、どんな事業をはじめるときも人より腰を低くしないといけませんし、お金のやりくりもすべて自分で考えて何とかしなきゃいけないわけです。そのための練習を現役時代からはじめておいたほうがいいでしょう。

 私自身、独立しているわけではないので大きなことは言えませんが、たとえ自分がやりたくない仕事を担当することになっても、その分野ならではの専門知識や人脈があるはずです。そういうことを積極的に自分のものにしようという気持ちで取り組めば、仕事も楽しくなっていきますし、そこから次の仕事へつながる可能性も広がります。どんな仕事からも逃げずに、失敗しても仕事で取り返して、すべて自分のプラスにしようとする意識を持つことですね。

――特集のなかにある「団塊の世代1000人“ハッピー度”調査」はとても興味深いです。「夫は妻にすがり、妻は夫を見放す!?」という見出しにドキッとした読者も多かったのではないかと。近所付き合いなども含めて、人間関係が幸福度に深く関係しているように感じました。

鈴木 基本はやはり精神的な自立が大事で、最初からあまり人に期待しないほうがいいというのが私の考えです。人間関係は自分でコントロールできることばかりではありませんから、そこに生き甲斐を求めてしまうと、自分も相手もストレスになる可能性があります。奥さんや仕事仲間や地域のコミュニティに寄りかからない生き方が基本で、そのうえでいろんな人間関係を楽しむことができれば、精神的により豊かになれるでしょうね。

 ただ、年をとると何事も無理は禁物ですから、いらないと思うものは物も人間関係もどんどん整理していったほうがいいと思います。70過ぎて友人が多いと、死んでいく人も多くなるから香典代もかかりますし(笑)、子どもが結婚すると聞けばお祝いしたり何かと出費がかさみますからね。まずは独りの時間を楽しめるようにして、整理できるものは整理したうえで人づきあいをしたほうがいいと思います。

――定年後、暇を持て余して何をすればいいのかわからない、という方も多そうです。

鈴木 私が昔、定年後に何をしようか? という話をしていてある人から言われたのは、「18歳の頃の自分に戻ってみたらいい」ということです。その頃にやっていて楽しかったこと、好きだったことを思い出して、またはじめたら面白いんじゃないかと私も思いました。世代によって興味は変わることもあるでしょうけど、自分が何をしているときが一番楽しいか、幸せを見つめ直すことが大事だと思います。

――「財産分与、年金分割……50歳からの損する離婚、トクする離婚」の記事では、離婚のコストは「夫と妻の知恵比べ」次第とありますが、大抵は男性のほうが不利になるようですね。男性が離婚でトクするためのポイントが、「隠し口座で隠し財産を貯める」「なるべく別居する」など、妻が読んだら目論見がバレそうです(笑)。

鈴木 企画はすべて男性目線でつくっていますが、この老後のお金の特集は女性読者が4割を超えています(笑)。女性は男性が思っている以上にしっかりしていますね。男性は甘くてスキだらけですよ。女性はいろんなことをお見通しだと思いますが、そのことにさえ気がついていない男性が多いでしょうね。すべて妻に任せっきりで油断していると、いざ離婚を切り出されたとき痛い目に遭いますので、そうならないための情報をできるだけ提供しています。

『定年後』の著者の楠木新さんは、60~74歳の15年間を「黄金の15年」と呼んでいます。一日の自由時間は11時間でトータル6万時間もあるんですね。この膨大な時間を有意義に過ごすための情報を提供していますので、ぜひ参考にしていただきたいですね。

取材・文=樺山美夏

人生100年時代の「金持ち老後」と「ビンボー老後」の分かれ目とは? 『PRESIDENT』編集長に訊いてみた!【前編】