1.4東京ドーム 史上初の4WAYマッチ「KUSHIDAがいるジュニアヘビー級には価値がある、と思わせたい」――新日本プロレス・KUSHIDA選手インタビュー〈後編〉

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更新日:2017/12/29


 きたる新年、新日本プロレス最大の舞台である「WRESTLE KINGDOM 12 in 東京ドーム」、通称「1.4(イッテンヨン)」にて、史上初のIWGPジュニアヘビー級選手権試合4WAYマッチが決定。出場選手のひとりであるKUSHIDA選手に、ジュニアヘビーへの熱き思いを訊いた。


――10.9のあと、「やりかけの仕事があるからとりかからねば」というようなこともおっしゃっていました。

KUSHIDA KUSHIDAはいい試合するよね、あいつがベルトを持っているジュニアヘビー級選手権はメインイベントだよね、と思ってもらえるような信頼感を得るためにもこの数年間、試合を重ねてきたんですけど、残念ながら、志半ばでベルトを失ってしまった。ベルトを持たない者に発言権はないですからね。ベルトを取り戻して、IWGPジュニアヘビー級選手権というものの価値を、もっともっと、高めていきますよ。

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――なぜそんなにも、ジュニアヘビー級に対する思いが強いんですか?

KUSHIDA ぼく自身、小さい頃から憧れていましたから。そこらへんを歩いていそうな普通の体格の男の人が、リングに上がってコスチュームを着たとたん、別人のように強くなって活躍する、そういうプロレスラーに。もともとレスラーになれるような体格ではなかったぼくが、メキシコに行ってデビューして今こうしてリングに立っているように、海外からも同様にその場所に憧れ、オスプレイやマーティ・スカルをはじめとする優秀な選手が続々と集まっている。いろんなスタイルの多様性だったり、他団体との交流に寛容だったり、自分より大きなヘビー級のレスラーに立ち向かっても勝てる技術だったり気迫、そんな可能性に秘めてるジュニアヘビー級こそ、いちばん面白い舞台だとぼくは信じています。この灯を絶やしちゃいけないし、今、ぼくらが大きな爆発を起こして次世代につなげなければと思います。

――最近、ヤングライオンの川人拓来選手とタッグを組んでいるのも、その一環ですか。

KUSHIDA 別に望んでやっているわけではないんですけど34歳になって、いつのまにかそういう役回りというか、気がついたら考える立場になってきていますよね。ただ、教えるって難しいです。一から十まで説明することが果たして指導といえるのか、と考えさせられます。ぼくらの上の世代は口下手な方が多かったので、見よう見まねで学べ、わかれ、って感じで、でもだからこそ、自分の頭で考えて、自分なりのスタイルを確立できたんだと思います。かといってぼくのやり方が、誰にとっても正解だとは限らないですし。日々試行錯誤していますが、勝った負けたの日々のなかで、自分の生き様をリング上で表現していくのがレスラーという職業なんだということは伝えたい。ぼく自身、初心に返りつつ、新たなステージに立とうとしている感じがあります。

――2017年は、KUSHIDA選手にとっていろんな意味で変化の年だったんですね。

KUSHIDA 何度かベルトを手にした今、ただチャンピオンになりたいと思っていた自分はまだまだ初級編だったなと思います。ある選手に、「またKUSHIDAかよ、とお客さんに言われるようになって初めて一流だよ」と言われて。それほど認知されてようやく新しい闘いが始まるんだと。今まさに、新しい闘いの幕開けという気持ちです。

東京ドームという特別な舞台で、新時代のスタートダッシュを切る


――ところでKUSHIDA選手は、読書がお好きなんですよね。Instagramによると、若林正恭さんの『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』や、又吉直樹さんの『劇場』を読んでいるとか。

KUSHIDA 若林さんのは、旅行記が好きなので手にとりました。その土地に行った気になれるのは楽しいですし、いつもと違う環境に身を置くことで気づくことがあるというのは経験上わかっているので、実際にそういう光景を見た人の言葉に触れたいんです。角田光代さんの旅行エッセイとか、沢木耕太郎さんの『深夜特急』とか、読むと刺激を受けます。『劇場』はまだ読んでいる途中なんですけど。

――『火花』は読まれました?

KUSHIDA 読みました。映画も観に行きました。ぼくもずっと抱えていたけれど言葉にできなかった思いが文字になっていて、面白かった。舞台に立つというのは、悦びでもあり苦しみでもある。フィールドは違うけど、その葛藤は同じなんだなと思うと救われたような気持ちにもなりました。一流のものって、無駄がないんですよね。映画でも、だらつくなと感じるものは、実は作品のなかで不必要な場面が描かれていたりする。プロレスも同じようなことが言えまして…動きひとつひとつに意味がなきゃいけないと、ぼくはずっと教わってきました。

――プロレスは勝ち負けを競うものであると同時に、一種の表現であると。

KUSHIDA はい。たとえ自分より体重が重い相手でも闘わなきゃいけないし、勝たなきゃいけない。じゃあどうするか? 相手を寝かせて腕にダメージを与え、最後に間接技で決める。ぼくならではの戦法も、ひとつの生き方の表現。自分がやりたいと思ったことをやれなきゃ、プロレスラーになった意味がないですからね。とくに1.4の東京ドームでは、あの長い花道をひとりで歩く姿を、レスラーの誰もがめざしている。その特別なリングに立てる機会をせっかくもらえたのだから、思う存分闘いたいですね。

――東京ドームは、やはり特別なんですね。

KUSHIDA ほかの会場とは見える景色が全然違いますね。今回は4wayということで、賛否両論あると思います。タイトルの価値が下がるんじゃないか、とか。でも、観る人の期待を覆し続けてきたのがジュニアヘビー級なので。この4人ですから、すげー試合になると思います。そしてぼく自身、この一年をしめくくると同時に、2018年のスタートダッシュとしたい。新しい闘いを始めるにふさわしい舞台になるよう、なんとしてでもベルトは奪いに行きます。


取材・文:立花もも 写真:川口宗道

【前編】「1.4東京ドーム」史上初の4wayタイトルマッチで、絶対王者に返り咲けるか。新日本プロレス・KUSHIDA選手インタビュー