アトムを演じる森山未來が語る、『プルートゥ PLUTO』という舞台を海外に持ち出す意義

エンタメ

2018/1/5

インタビュー 森山未來

近年、ダンサーとしての活動もより活発化し、その身体性の高さもあいまって俳優として独自の立ち位置を獲得している森山未來。そんな彼の魅力を存分に堪能できるのが、浦沢直樹・長崎尚志らが手塚治虫の『鉄腕アトム』「地上最大のロボット」をリメイクした『PLUTO』(小学館刊)を世界的な振付家シディ・ラルビ・シェルカウイが演劇作品に仕立てた『プルートゥ』だ。2015年に引き続きアトムを演じる森山に、新演出の本公演に臨む気持ちを訊いた。

©原作:『PURUTO』(浦沢直樹×手塚治虫 長崎尚志プロデュース
監修/手塚眞 協力/手塚プロダクション 小学館)
イラスト©浦沢直樹・スタジオ ナッツ 長崎尚志 手塚プロダクション/小学館

――2018年に新たな『プルートゥ』を、という話を聞かれたときはどう思いましたか?

「AIやロボットも、ここ数年でぐっと身近な存在になっています。前回以上に『ロボットだから、アトムだから』という見られ方はされないだろうと。改めて脚本を読み直してみたら、前回よりもずっと物語が心に突き刺さりましたね。国内だけでなく、欧州ツアーを組むと聞いて、そこにも大きな意義を感じました」

――欧州ツアーがあることも、重要だったんですね。

「日本では、映画や演劇を国内でつくって国内で消費するという考え方がいまだに根強い気がします。それを否定するつもりはもちろんないのですが、最初から海外に持っていくことを意識してつくる作品もあっていいんじゃないかと、つねづね考えていました。とくに、ラルビのような海外の作り手とコラボレーションしたものであれば、なおさら、その思いは強かったですね」

――ロボットが自らの存在意義を問うという『プルートゥ』のテーマは、世界に通じるもののように思います。

「僕自身は、この作品自体を海外向きだと思っていたわけではないんです。ただ、ラルビはベルギーとモロッコのハーフで、中東問題に対してもビビッドな感性をもっている。日本人の僕らにとってそこまで直接的ではないことが、ラルビにとってはパーソナルな部分と直結した問題なんです。その視点をもって作られた『プルートゥ』を海外で上演してみたら、どう受け止められるだろうという興味はあります」

『プルートゥ PLUTO』2015年 舞台写真より
©手塚治虫×浦沢直樹 長崎尚志プロデュース 監修・手塚眞 協力・手塚プロダクション/小学館
鉄腕アトム「地上最大のロボット」より『プルートゥPLUTO』(2015)Bunkamuraシアターコクーン(撮影:小林由恵)

演じる人によって変化していく作品

――森山さんはシディ・ラルビ・シェルカウイさんの作品に何度か参加していますが、演出家であるシディ・ラルビ・シェルカウイはどんな方ですか?

「ラルビは振付家ですが、ダンスなどのパフォーマンスだけをみるのではなく、テキストを用いたりコンポーザーや音楽家ともコミットして作品をつくる人です。稽古では、台本をもとに『ここは身体の動きで提示できそうだ』というところを彼がピックアップして、それを一緒につくっていくところからはじまります。

 たとえば『プルートゥ』では、ロボットという存在を視覚化するために、ラルビは文楽の人形遣いのようなスタイルを取り入れたんです。人工知能がロボットを操るように、ダンサーたちが役者について動きを操る。それを具体的につくってみるところからはじめました。

 ラルビの作品は、『パフォーマンスする人間によって変化する』ことがかなり顕著だと思います。彼は幾何学的にものを構築したり構成したりしていく。だからこそ、スタッフ、キャストがどういう提示をしていくか、どうパッションを持ってアプローチをしていくかによって、作品の膨らみがすごく変わるんです」

――今回の公演には土屋太鳳さん、大東駿介さん、吹越満さんといった新キャストが参加しますが、そういった新たな人が参加することで前回とはまた違った『プルートゥ』になりそうですね。

「いまは太鳳ちゃん、駿介の二人と一緒の稽古が始まっていますが、二人とも能動的だから、さまざまな膨らませ方ができそうな気がしています。

 僕たちが提案する動きをラルビが拒否することはないんです。ある提案に対して、ラルビがいいと思ったものは採用されるし、そうでなければ、『それもわかるけど、こっちのほうはどう』と提示される。今回も、ラルビとのコミュニケーションを信頼して、作品づくりを進めていきたいですね。僕自身、前回とは違ったアプローチができる部分もあると思うので」

『プルートゥ PLUTO』(2015)
Bunkamuraシアターコクーン(撮影:小林由恵)

作品を通じて、もっといろんな景色を見たい

――森山さんはスケールの大きなエンターテインメント作品から、ご自身で企画から携わるダンス公演まで、規模の大小や作品の性質、色合いの違うものを自由に行き来されている印象があります。どのように作品をえらんでいるんでしょうか?

「いまは、しっかりコミュニケーションをとってものを作っていける現場に関わりたいという気持ちが強いですね。それは、舞台でも映像でも同じです。2019年の大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』に参加させていただくことが先日発表になりましたが、『いだてん』もチーフディレクターの井上剛さんや、脚本の宮藤官九郎さんといった、一緒に作品を作っていけそうな方がスタッフにいらっしゃるのが僕にとっては大きいですね。

 規模の大小に関しては区別していません。それよりも、もっといろんな景色が見てみたいんです。今回であれば、ラルビをはじめとする才能豊かなアーティストやダンサーの方々と関わることで、『こういう考え方、見せ方、見え方があるんだ』と刺激を受け、それが自分の中に深みをくれる。そのために自分で能動的に動くほうが早ければ動くし、そういう要素があるオファーにはどうしても心惹かれてしまうんです」

もりやま・みらい●1984年、兵庫県生まれ。舞台・映画・ドラマに出演する一方、様々なダンス作品にも参加。2013年秋より1年間、文化庁文化交流使としてイスラエルに滞在、インバル・ピント&アヴシャロム・ポラック ダンスカンパニーを中心にヨーロッパで活動。主な近作に映画『怒り』、舞台『髑髏城の七人 SEASON鳥』など。2019年のNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』出演予定。
miraimoriyama.com

取材・文=釣木文恵  写真=山口宏之