水道橋博士「人の深みや濃淡を活字で表現したい」

新刊著者インタビュー

更新日:2013/8/9

人の深みや濃淡を活字で表現したい

――これまでにも『お笑い男の星座』など、いろいろな人物のことを活写して来られましたが、博士が「この人を書こう」と思う、モチベーションはどんなところにあるんですか?

水道橋: この人のことを知ってよ、っていう気持ちはあるでしょうね。こんなふうに注目している人は俺以外にいないだろう、という気持ちも強い。

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湯浅卓さんと苫米地英人さん(第3回に収録)の話はまさにそう。「ロックフェラーセンター売ります・買います」の文脈で湯浅さん、苫米地さん、あの二人のワンパックにした人は誰もいないと思う。しかも、「ホラ吹き」くくりだから。そんな着目の仕方は普通しないもん。まあ、本人は迷惑でしょうが(笑)。

――おもしろい人をテレビで紹介する、というやり方もあると思うのですが、それでも「文章で」というお気持ちは強いのでしょうか。

水道橋: テレビで見えているのとは違う部分を活字にしたいんでしょうね。

活字で描ける人間像っていうのは、やっぱりテレビとは違う。テレビで観ているあの人の裏や底にはこんなドラマがあった、という人間の深みや濃淡は、活字じゃないと表現できない。
稲川淳二さんの回なんかは、裏だから。

――そうなってくると、普段のテレビなどの現場でも文章を書く人の目で、共演者の方を観察してしまうのでは。

水道橋: それはありますね。でも最近、相手も俺がどういうものを書く人かというのがわかっているので、向こうが俺を「書く人」として見返してるのに気付くんですよ。

――それは、ちょっとやりにくいですね。

水道橋: やりにくい……でしょう(笑)。

「書かないでよ」って言う人もいますからね。徳光和夫さんとか。善人として通っているけど「毒光」さんと言われるほどの毒舌家でもあるの。前は無防備だったけど、もう「君は書くからな~」って警戒してる。

草野さんも、楽屋話とかしててもリミッターつけて話しているのがわかりますよ。でもリミッターの付け方にも個性が出るから。人に迷惑をかけるから話さないようにしよう、と思う人もいれば、逆にわざと話を盛ってくる人もいるし。古館さんだったら、次に会った時は絶対話を盛ってしゃべってくれると思いますよ(笑)。

取材・文=門倉紫麻 写真=相馬ミナ

 

電子『藝人春秋』

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ビートたけし、松本人志、草野仁、甲本ヒロト……といった、これまで水道橋博士が出会った錚々たる芸人、タレントを描いた評伝。これまで数々の媒体で連載していた原稿を集めて再編集し発表。第6回まで、各回3~5人分の人物評伝が収録されている。水道橋博士初の電子書籍。