累計70万部! 新感覚異能バトルで絶好調の『リィンカーネーションの花弁』を陰で支えたふたりとは?

アニメ・マンガ

2018/2/5

 宮本武蔵やレオナルド・ダ・ヴィンチ、アイザック・ニュートンにアルバート・アインシュタイン……誰もが知っている、あるいは憧れることさえある昔の偉人たち。その才能を自分も使えたら……と考える人もいることだろう。

 その願望を物語に取り入れ、異能バトルコミックとして昇華させたのが、小西幹久著『リィンカーネーションの花弁』だ。

『月刊コミックブレイド』で2014年5月に連載が始まり、現在は『月刊コミックガーデン』およびWebコミックサイト「MAGCOMI(マグコミ)」に掲載されている本作は、2017年12月9日にコミックス7巻が発売。累計発行部数は70万を超え、現在も順調にその数を伸ばしている。

『リィンカーネーションの花弁』は、なぜこれほどまでに人気の高い作品になったのだろうか。その魅力とは何か。本作品を陰で支えるマッグガーデン 真柴涼さんと、裏の仕掛け人ともいえるWebコミックアプリ「GANMA!(ガンマ!)」を運営するコミックスマート 小澤陽介さんに話をうかがった。

幻想的な花弁が舞い散る異能バトルマンガ

――まず、『リィンカーネーションの花弁』という作品の概要を教えていただけますか。

マッグガーデン 真柴涼さん(以下 真柴):宮本武蔵やニュートンら偉業を成し遂げた偉人や、ヒトラーやポル・ポトなどの悪名高い罪人、過去に実在した才能ある人たちを前世として持っている登場人物たちが、その才能を自分の身に宿らせて戦う“究極の異能バトルマンガ”です。

 前世の才能を引き出すには、「輪廻の枝」と作中で呼ばれているナイフのようなもので首を掻き切る必要があるのですが、そのときの血が飛び散る様が花弁にも見えるところから輪廻をあらわす「リィンカーネーション」と「花弁」をタイトルに持ってきたのではないかと考えています。

――先日7巻が発売されましたが、累計発行部数は70万部とのこと。どんな層からの人気が高いのでしょうか。

真柴:10代後半から20代前半の男性からの支持が高いようです。

――少年マンガというくくりにしては、過激な描写もなく、きれいな絵柄ですよね。わたしは女性ですが、初見から読みやすいと感じましたし、この世界観にすっかり引き込まれてしまいました。

真柴:ありがとうございます。バトルものではありますが、昨今にありがちな「飛び散る肉片! 噴き出す血潮!」ほどのグロい描写がないので、女性にも読みやすい作品だと考えています。魅力的な女性キャラが多いので、男性から人気があるのかな、とは思いますが。

実在した人物の立ち居振る舞いまで踏襲する斬新さ

――マグコミでの評価も高く、ここ最近のランキングでは、テレビアニメ化されている『魔法使いの嫁』と1、2位を争っていますね。どんなところがこの作品の魅力だと感じていらっしゃいますか。

真柴:異能バトルは、ある意味確立されたジャンルではありますが、この作品がこれまでのものと違うのは、偉人や罪人の才能だけでなく、彼らの立ち居振る舞い、彼らのバックボーンまでも取り込んでいる、というところなのではないかと考えています。

 というのも、読者アンケートに「引き出された前世の才能者について、どういう人だったか調べてみた」というものがあったり、「どういう才能者が次に出てくるのかという予想を立ててみた」というものがあったりするんです。歴史上の人物を学んでから、このマンガを楽しんでいるというより、マンガを楽しんでからリアルな人物に目を向けるようになる人が多いというのが面白くもあり、この作品の強みなのかもしれませんね。

――真柴さんも、「こういう人が出てくればいいな」と考えたことがありますか。

真柴:子どもの頃に大好きだった『ファーブル昆虫記』のファーブルが出てくればいいなと…。

――もう出てきちゃってますね(笑)。

真柴:そうなんですよ。しかも、考えもしなかった特徴が「異能」として出てきたので「こう来るか!」と思ってしまいました(笑)。

リアル書店と電子書店担当者に多い熱烈なファン

――ところで、わたしが『リィンカーネーションの花弁』を知ったのは、実はマグコミで、ではなく、コミックスマートが運営しているWebコミックアプリ「GANMA!」でのことでした。今はもう掲載されていないようですが、いつ掲載されていたんでしたっけ?

コミックスマート 小澤陽介さん(以下 小澤):2017年3月から4月と5月の終わり頃から7月末までの2回にわたってですね。初回はGANMA!上の掲載話として1話から28話、次は初回掲載分に加えて5巻分まで掲載しました。

――「GANMA!」は、ほぼオリジナル作品のみを掲載しているという認識なのですが、どういうことがきっかけでマグコミの作品である『リィンカーネーションの花弁』を掲載することになったのですか。

小澤:マッグガーデンさん内部で、「『リィンカーネーションの花弁』を盛り上げていきたいね」という話があったのと、弊社内部で「外部の出版社様の作品を載せる取り組みも進めていきたいね」という話が、ちょうど同じタイミングで出てきたんです。「よかったら、うちに載せてみませんか」とお話ししたところ、ご承諾いただけて……。
※現在までにGANMA!では10タイトル以上の外部出版社の作品を掲載している。

真柴:両社の思惑が合致するという絶好のタイミングでした。

――そもそも、人気作品ではあったんですよね?

真柴:そうですね。特に書店員さんからの人気が高かったです。1巻発売時に、「うちで取り扱わせてください!」とリアル書店や電子書店の担当者様から名乗りを挙げていただくこともありまして。その後も手作りPOPの掲示など売り場を作り込んでいただいたり、電子書店ではバナー広告の作成や1巻目無料という施策もしていただいたりしました。こういった積み重ねにより、弊社内で“主力タイトル”扱いされるようになったんです。

 ただ、弊社では珍しい部類の作品だったため、もっと盛り立てていきたかった。そこで、6巻が発売されるタイミングで、2回目の掲載をしていただいた、という裏の事情があります。

小澤:うちとしても、「続きを読みたい」と言ってくださる読者さんが多く、人気の高さをひしひしと感じているところだったので、「またどうですか」と言われたときには、「読者さんの希望に応えられる!」と思い、ありがたかったですね。コメント欄もものすごく盛り上がっていましたし。

真柴:「プロか!」と思うような、キャラ絵もあったりして。
(注:「GANMA!」アプリには、作品1話ごとにテキストだけでなくイラストも投稿できるコメント欄がある)

 しかも、主人公だけでなく、コアなキャラクターを選んで描いてくださる読者さんもいました。好きなキャラクターがばらけているのも、本作品の特徴のひとつですよね。

――真柴さんの好きなキャラクターをお聞きしてもいいですか。

真柴:不死の兵 舩坂弘ですね。主人公に大きな影響を与えましたし、罪人軍で不死の才能を持つハンス・ウルリッヒ・ルーデルとの戦いもアツいものがありました。

小澤:コメント欄も非常に盛り上がりましたよね。

――小澤さんの好きなキャラクターもお聞きしていいですか。

小澤:実はわたしも舩坂さんでして。完全な廻り者(前世の姿のままで定着)になると、もはや元々あった人間性がなくなってしまうんですが、それでも不死対不死の戦いで見せる人間味、お互いの考えをぶつけ合うところなどが熱く、感動してしまいました。

――おふたりとも、実はどこかしら似たところがあるんですね(笑)。中の人でさえ熱く語ってしまうぐらいなので、熱狂的なファンが多くついているのも納得できてしまいます。

GANMA!での出張掲載で新たに生まれた読者層

――両社の思惑が合致して実現した“出張掲載”ですが、どんな相乗効果が生まれたのでしょうか。

小澤:GANMA!としては出張掲載作品にも多くの読者が集まり、好意的なコメントもたくさん書き込まれたことは、マンガアプリとしてとても良かったことと感じています。作品に対してはコメント機能を通して、多くのファンの存在が見受けられました。読者のなかには作品の最新刊や更新サイト(マグコミ)について情報交換を行うなど、出張掲載終了後も作品と繋がり続けたいといった気持ちが伝わるコメントも多く見受けられましたね。

真柴:「GANMA!」のダウンロード数って今では900万以上なんですよね。おかげさまで、読者層が厚くなったと感じています。実際、2回目の出張掲載直後に発売された6巻の売り上げは爆発的なものがありました。5巻発売時の約3倍の部数を売り上げたんです。おまけに1巻の月間売り上げも、過去最高を記録しまして……。既刊の重版もして準備万端のつもりで6巻の発売を迎えたのですが、6巻発売後にも更に大量重版を行うこととなりました。これは、「GANMA!」に掲載したことで、新規の読者が増えたことのあらわれだと考えています。
※GANMA!掲載期間中の販売数の伸びは特に顕著で、リアル書店での展開や他電子書店の露出効果も相まって、1~6巻全巻で10万部以上を重版する結果となった。

小澤:1000万ダウンロードの声もそろそろ聞こえてきそうなので、作品のPR効果やコアファンの獲得という点で、お役に立てた部分もあったかと思います。わたし自身もこの作品のいちファンとしてうれしいですね。

――考えてみたら、わたしも「GANMA!」を通じて『リィンカーネーションの花弁』を知ったひとりですしね(笑)。
ところで、最新巻発売時には、「GANMA!」への出張掲載はありませんでした。どのような販促をされたのでしょうか。

真柴:販促のためのポスターやPOPの作成、書店への呼びかけ、飾り付けコンクールを開催しました。おかげさまで、5巻の3倍売れた6巻を超える勢いで売れています。これも、根強いコアなファンである書店員さんたちの地道な努力や各電子書店での展開、さらに以前の「GANMA!」での掲載がきっかけで「面白い」と思ってくださった読者さんが増えたからなのかなぁと、感慨深いです。

――熱烈なファンという書店員さんからの応援コメントも届いています。

AKIHABARAゲーマーズ本店 書籍担当 石渡

様々な能力が繰り広げられる壮大な戦闘シーンと、それぞれのキャラクターが持つ、偉人としての尊大さと元の人間味が本作の魅力です。個人的に好きなのは、ニュートンとアインシュタインが、ヒトラーとの戦闘でお互いをかばい合う場面。 個の能力や活躍が際立つ中で、キャラクター同士が共に戦う、ということがとてもアツく、印象に残りました。 一人でも多くのお客様に興味を持っていただけるよう、立体的な飾り付けをするなど、日々工夫を凝らしています。

――『リィンカーネーションの花弁』を応援し続けている書店員さんを中心としたリアル書店での展開や、ダウンロード数の多いアプリへの出張掲載によって、発見され、新たなファンの獲得につながっている、という感じなんですね。

――最後にダ・ヴィンチニュース読者へのメッセージをお願いできますか。

真柴:『リィンカーネーションの花弁』は、手に取れば、きっと好きになっていただける作品だと思います。スピーディーな出だしが人気の1巻から最新巻である7巻まで、全国の書店に並んでいますので、ぜひお手に取って読んでみていただけるとうれしいですね。

小澤:『リィンカーネーションの花弁』もそうでしたし、「GANMA!」ではこれからも様々な作品との出会いの場を提供し、読者の皆様に喜んでいただけたらと考えています。そしてもちろん、オリジナル作品の提供に力を入れていくといった軸はぶれることなく継続していきます。オリジナル、出張掲載、どちらも同じように楽しんでいただけたら、と思います。

文=渡辺まりか 写真=伊東祐輔(PEACE MONKEY)