今何皿目?――アプリ内でオリジナルアニメ配信を開始したコミックアプリ「GANMA!」が目指すものは「三方よし」

アニメ・マンガ

2018/2/3

 無料で掲載中の作品すべてを読めるWebコミックアプリ「GANMA!」が好調だ。ダウンロード数は2017年12月末時点で930万以上。連載作家は100人以上、連載中の95本も含め145本以上ものオリジナル作品を掲載している。

 そんな「GANMA!」が、2017年12月にオリジナルアニメの配信を開始した。企画も資金も運営会社のコミックスマートによるもので、制作もアニメ制作会社との協業で行った。作品は「GANMA!」オリジナルコミックの『焼肉店センゴク』だ。

 なぜコミックを配信するアプリ内でアニメを視聴できるようにしたのか。『焼肉店センゴク』を選択した理由は? どのような狙いがあるのか――コミックスマートでGANMA! 編集部副編集長を務める瀧口さとみ氏とアニメプロデューサー福留俊氏に話をうかがった。

■もっと多くの人に作品を楽しんでもらいたかった(または、ユーザーも作家も喜ぶ方法を模索)

――これまで、TVアニメ化した作品をアプリ内で配信するコミックアプリはありましたが、GANMA!ではアプリ専用にオリジナルのアニメを制作されました。どういういきさつがあったのでしょうか。

瀧口さとみ氏(以下、瀧口):オリジナルアニメの配信には、ふたつの大きな目標がありました。ひとつは自社のIP価値(IP:知的財産)を向上させること。もうひとつは、アプリの大型アップデートにより、ユーザーのみなさんに驚きと楽しみを提供することです。

 以前からマンガアプリとして、これまでとは異なる新しい方法で、ユーザーさんたちを楽しませることはできないかと考えていました。より多くのユーザーさんたちが楽しめれば、それだけ作品の価値が上がっていく。価値が上がれば、作家に還元できるものも多くなるので、もっとユーザーさんの楽しめる作品を送り出せるようになる。相乗効果ですよね。

 そのために「じゃあ、どうすればもっと楽しんでもらえるか、新鮮な驚きをもってもらえるか」と考えたときに「マンガアプリなのにアニメを配信してみたらどうだろうか」という話が出てきたんです。マンガアプリでアニメを見たいと思うかどうかは別として(笑)。

――テレビじゃなくてアプリ内で。

瀧口:そう。アプリ内で。しかも無料で。

――全話無料なんですか。

瀧口:はい。毎週日曜更新で12話まで配信予定なんですが、いつでも1話から無料で全話視聴できます。自分の好きなタイミングで見られる、というのがテレビと違うところですね。

――作品は『焼肉店センゴク』ですよね。もともと人気のある作品なんですか。

瀧口:この作品は、気が優しくてちょっと小心者の大学生「モップ」が、ひと癖もふた癖もあるスタッフたちのいる近所の焼肉店「センゴク」で、はじめてのバイトをしながら、人間として成長していく姿を描いた4コマのギャグマンガなんですが、2013年12月の連載開始時から160万人以上からの高い支持を得ています。

覆面うさぎ著『焼肉店センゴク』。記事執筆時点で197皿(話)目まで配信中

 また、ただ作品を読むだけでなく、応援の意思表示である「ハート」をつけてくださっている読者がたくさんいました。じゃあ、もっとこの作品を好きになってもらうにはどうすればいいか、もっと多くの人に知ってもらうにはどうすればいいか、というところでアニメ化に踏み切りました。

――(2017年)12月17日に配信を開始されましたが、反応はいかがですか。

瀧口:1皿目(第1話)の配信後、約1400件ものコメントをいただくことができました。しかも、多くの人が好意的な書き込みをしてくださっていました。コミック版のセンゴクのコメント欄にも「アニメ見てきた、おもしろかった!」とコメントを投稿してくださるかたもいらっしゃいました。

(注:GANMA!では、コミックの各話末にコメントを書き込める機能がある。アニメでは、アニメ本編終了後にある「おまけ」に応募するための公式ページがあり、応募するついでにコメントを書き込めるようになっている。)

――どれぐらいの人が配信を視聴したんでしょうか。

瀧口:3皿目配信が終わった現時点で40万人(延べ視聴者数[再生回数])が視聴してくださっています。

――40万人ですか。

瀧口:関東圏の地上波の深夜アニメで「成功」といわれる視聴数に匹敵する数である、というのが社内の意見です。また、多くの視聴者が作品に対して高い熱量をもって見てくださっていました。作品自体の価値を高め、ユーザーにも喜んでいただき、作品をもっと好きになってもらう、という目的を達成しつつあるので、オリジナルアニメ化の取り組みは成功だと感じています。

■大物 つぶやきシローさんがまさかのあの役

――制作時に気をつけたことはありますか。

瀧口:スマホという限られた画面サイズで視聴するので、どれぐらい線を抜くか、ということに気を遣いました。あまりにディテールがごちゃごちゃしていると見づらいですし、逆に線を単純化しすぎるとチープになってしまいます。その境界線がどこなのか、という見極めが大変でしたね。費用の問題もありますしね(笑)。

――費用といえば、通常のTVアニメなら委員会方式を取るので、制作費が多少楽になると思うんですが、今回はコミックスマート一社で制作されています。

瀧口:確かに予算は限られていました。でも、企画から制作、配信までがワンストップなので、「企画しました」「では作りましょう」という感じで意思決定も早く、非常にスピーディーに制作できました。制作に入るまでの工数が少ないぶん費用も抑えることができました。

――一社ならではのご苦労はありましたか。

瀧口:特に大変だったのは、フォーマット決めの部分ですね。

 コミックなら、ユーザーがどういう時間帯に閲覧しているのかというデータはありますが、アニメについては未知数。どういうフォーマットにしたら負担なく見やすく楽しめるか、という議論にかなり長い時間をかけました。

――キャスティングの裏話も気になります。

瀧口:2016年にテレビCMをしたときに出演してくださった声優さんにご協力いただいています。特にメインキャストは新人で伸びしろのある、若々しくて才能あふれるかたにお願いしました。

 逆に、サブキャストには著名なかたに出ていただいて……。

――おまけコーナーに出てくる「食べられた牛の亡霊ちゃん」ですね。

『焼肉店センゴク』コミックスと、おまけコーナーで出題されるクイズに答えると抽選で当たる「食べられた牛の亡霊ちゃん」のぬいぐるみ。帯にある「このマンガがすごい!」ではなく「この焼肉店マンガがすごい!」の文字がいい味を出している

瀧口:つぶやきシローさんにお願いしています(笑)。このキャスティングが最も難渋しました。食べられた牛の亡霊ちゃんは性別不明、しかも関西弁。制作会社と一緒にものすごく悩んで、最終的につぶやきシローさんに決まりました。サブキャラとはいえ、おまけコーナーの進行役も兼ねているので、キャラ立ちされているつぶやきシローさんで大正解でした。

■マンガもアニメもすべてのクリエイターが評価され活躍できる世界を目指して

――アプリ内で配信されているので、どれほど人気があるのかといった情報もすぐに把握できますね。

福留俊氏(以下、福留):コミックスマートに入社して、最も驚いたのがその部分でした。配信してすぐにデータの分析ができる。それをもとにして次の手を考える。ワンストップだから、というだけでなく、そういうところも意思決定を早めている要素だと感じています。

 たとえば、今、「こういう作品をアニメ化したいね」という話が出ても、実際に放送するのは2年後というのが、アニメ業界では当たり前です。でも、GANMA!では、アニメ化する作品も決まっていない状態から確実に1年以内に次のアニメを作ってアプリ内で配信できる。また、自社IPだから、DVD、グッズ、コミック、どれが売れても会社の利益になる。自社内だけでシナジー効果が得られるのも面白い部分です。

 今後アニメ制作自体も内製化できるようになれば、もっとスピード感がアップすると思います。……あの、これに関連してお伝えしたいことがあるんですが、続けて話しちゃって大丈夫ですか(笑)。

――どうぞどうぞ(笑)。

福留:コミックスマートでは、マンガ家を「子どもたちの憧れの職業」にしたいというビジョンがあり、そのためにマンガ家を育成・支援する「Route M」という取り組みをしています。「Route M」では、制作支援金の提供や広告売上の還元等の報酬システムが構築されているほか、液晶タブレットの無償貸出による制作環境のサポート等を行っています。支援金の総額は2017年12月に7億円を突破し、現在月収100万円を超える作家さんもいらっしゃいます。

 この「Route M」のような仕組みをアニメ業界にも広げ、アニメクリエイターの支援につなげられないかと考えているんです。

瀧口:GANMA!に掲載している作品はほとんどが専属作家さんによるものなので、いわば内製したものです。それでわたしたちの収益も作家さんの収益も上がっています。ならば、アニメ制作も自社内でできれば、携わってくださるアニメクリエイターさんたちの収益も上げられるのではないかと思っています。

 GANMA!立ち上げから5年。マンガ業界について何も知らないところからはじめ、徐々に事業規模を拡大しながら、ここまでやってくることができました。

 ユーザーに楽しんでいただき、クリエイターに喜んでいただき、わたしたちはビジネスとして成功する。関係者全員にメリットがある「三方よし」というコミックスマートの理念を実現できていると思います。

 これからも、マンガを読む楽しさプラスαをユーザーのみなさんに提供しつつ、すべてのクリエイターさんたちが幸せになれる道を模索していきたいと思います。

――ありがとうございました。

取材・文・撮影=渡辺まりか

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