中川大志「知念くんと交わした音だけの会話。目線が合う瞬間もあって、それが本当に気持ちよかった」

あの人と本の話 and more

2018/3/6

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、映画『坂道のアポロン』でバンカラな不良少年でジャズドラマーの高校生・千太郎を演じた中川大志さん。天才科学者・ホーキング博士による児童書『宇宙への秘密の鍵』を薦めるわけとは?

中川大志さん
中川大志
なかがわ・たいし●1998年、東京都生まれ。2009年、ドラマ『わたしが子供だったころ』で俳優デビュー。出演作に、ドラマ『家政婦のミタ』『GTO』『重版出来!』、主演映画『きょうのキラ君』『ReLIFE リライフ』など多数。公開待機作に映画『虹色デイズ』(2018年7月)がある。
ヘアメイク:青山佑綺子(NICOLASHIKA) スタイリング:内田あゆみ(creative GUILD)
衣装協力:靴 2万2000円(税別)(Dr.Martens/ドクターマーチン・エアウエア ジャパン TEL03-5428-4981)、その他スタイリスト私物

「もともと宇宙関連の写真集や図鑑を読むのが好きなんです。望遠鏡をのぞいたり、三脚を立てて星空を撮影したりしながら、ぼうっとするのも好きですし」という中川さん。

「でも、小学生のとき親に買ってもらった『宇宙への秘密の鍵』は、それまでに読んだどの本とも違っていて。小学生のジョージが不思議なコンピュータで宇宙を旅するSF小説でありながら、ところどころに写真や図解が挟まっていて、わかりやすく宇宙のしくみを説明してくれる。物語としても図鑑としてもおもしろい、その構成が新鮮で夢中になりました。なぜ星が存在しているのかなんて、ふだん改めて考えることはないけれど、そうした壮大な謎が大人にも子どもにも楽しめるように解き明かされていくその過程が楽しくてワクワクしました」

“わからない”ことがすべての原動力。『ダ・ヴィンチ』本誌でそう語っていた中川さんだが、高校生たちのジャズ青春映画『坂道のアポロン』で演じた千太郎もまた未知の存在だったという。

「最初に原作を読んだときは、自分と共通するものがなさすぎて、どうして僕がこの千太郎役をいただけたのか、不思議に思ったくらい。でも挑戦しがいのある大役だったので、光栄だったし、嬉しくもありました。しかも、手元の吹き替えなしで、僕たち自身の演奏を画面に映すことになっていたので、ドラムの練習もしなくちゃいけなくて。クランクインの10カ月前、まだ台本もできあがっていないうちから、ジャズドラムの基礎を叩きこまれました」

 それは映画の見所のひとつ。音楽こそ完成されたものを流してはいるが、あわせて演奏される薫(知念侑李)のピアノと千太郎のドラムの動きは、すべて、本人たちの手によるものなのだ。

「演奏はまさに、言葉のない会話でした。僕と知念くんが本当の意味でつながりあっていないと、薫と千太郎の絆も、二人の音楽も生み出せない。そのために大事なのはどれだけ相手の言葉に耳を傾け、想いを受け取ることができるか。そして、それをどう感じて返していくか。それは役者としても忘れちゃいけない大切なものなんだと改めて思いました。本番では音楽にあわせながら演奏するんですが、それだと二人の熱情は表現しきれない気がして、本番の前に知念くんと二人で何度もセッションしたんです。知念くん、すごくて。そのまま使えるんじゃないかってくらい完成度の高いピアノを弾くんです。それに負けないよう僕もドラムを叩きながら、きっと二人はここで視線をかわすよねとか、曲が変わるこのタイミングでお互いに仕掛けあうよね、ってことを打ち合わせたんです。その積み重ねがあったうえで本番を迎えたら、演奏のテンションがどんどんあがってきて。まさに薫と千太郎が通じ合うように、知念くんと僕も音だけの会話をかわし続けていた。示し合わしてないのに目線があう瞬間もあって。それが本当に気持ちよくて、キュンキュンしました」

 薫にとって千太郎は生まれて初めて出会った親友だ。それもひとつの「ラブストーリー」であると監督は語っているが、ソウルメイトとして二人がつながる瞬間を、芝居を超えたところで二人が表現しきったからこそ、本作は原作者も感涙するほどの出来栄えとなったのである。

「千太郎という役をいただかなければ、あんな大人数の前でドラム演奏することもなかったし、千太郎を通じてしか味わえない感情もたくさん経験しました。一方で、知らないと思っていた感情も、自分のなかの遠い記憶を探ってみると似たものが見つかって、新たな発見もあったりして。未知のものに出会うって、本当に面白いです。知りたいと思う心が、僕を先へと引っ張っていってくれるんですから。やっぱり“わからない”は僕のすべての原動力なんだと思います」

(取材・文=立花もも 写真=冨永智子)

 

映画『坂道のアポロン』

映画『坂道のアポロン』

原作:小玉ユキ『坂道のアポロン』(小学館『月刊flowers』FCα刊) 監督:三木孝浩 出演:知念侑李、中川大志、小松菜奈、中村梅雀、ディーン・フジオカ 配給:東宝=アスミック・エース 3月10日(土)全国公開
●父を亡くし、佐世保に住む親せきの家に預けられた薫(知念侑李)。孤独を癒すために時折ピアノを弾いていた彼は、レコード屋を営むクラスメート・律子(小松菜奈)の実家でジャズに出会う。学校一の不良・千太郎(中川大志)が奏でる自由な音に魅せられた薫は、千太郎とセッションを重ねることで自分の居場所を見つけていく。
(c)2018 映画「坂道のアポロン」製作委員会 (c)2008 小玉ユキ/小学館