群れたがり、情緒不安定…あなたを疲れさせる“めんどくさい女子”との上手な付き合い方

暮らし

公開日:2018/4/7

『読むと心がラクになる めんどくさい女子の説明書』(山名裕子/サンマーク出版)

 ことあるごとに友達の悪口を言い、深夜のSNSで鬱ポエム、遊びに誘わなかったらすねてしまう、上昇志向はいいけど押し付けがましくて疲れる……。

 大人になっても、こういった「女子」との人間関係で悩む人は多いもの。

『読むと心がラクになる めんどくさい女子の説明書』(サンマーク出版)を著した臨床心理士の山名裕子先生に、どうして「女子」はめんどくさいのか、その理由について伺いました。またこのインタビューでは特別に、書籍の中から“新生活が始まるタイミングで多く遭遇するタイプ”を抜粋して紹介。それぞれの対処法も教えてもらいました!

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 女子疲れしている方は要チェックですよ。

山名裕子先生

■なんで女子はめんどくさいの?

――本を読んでいて「大人になってもこういう人多いよな~」と何度も頷きました。そもそも、どのような経緯でこの本を出されたんですか?

山名裕子先生(以下、山名) 私は普段、臨床心理士としてカウンセリングを行っているのですが、相談にくる方の9割以上は対人関係の問題を抱えているんです。その中でも、特に対女子への悩みというのが少なくなかった、というのがひとつのきっかけですね。

 あとは、もともと私自身も幼い頃から、自分や他人に「女子」を感じることが何度もあって、いつかはこの女子特有の悩みというのを解消できる本を出したいなと思っていたんです。

――本の中ではめんどくさい女性性のことを「女子率」といった言葉で呼んでいますが、山名さんご自身にも「女子」を感じることがあったのですか。

山名 もちろんありました。といっても私の場合はだいぶ早い時期で、小学生くらいの頃でしょうか。いつも仲良く遊んでいた女の子の友達に突然冷たくされたことがあって、そのときに不思議に感じたんですよね。

 その後も、男子の前だと豹変する女子などが気になったりしましたが、気になっている時点で、私の中にも「女子」の性質はあるんですよね。いまは心理学を学んだことで、「めんどくさいから嫌いだ」とかは思わなくなりましたが、多くの人は、単純に「嫌な人」で終わってしまっている。そこがもったいないですね。

――たしかに、なぜ相手がそんなことをしたのか、という理由がわからない限りはストレスが溜まっていく一方な気がします。

山名 今回は「説明書」という形にして、めんどくさい女子がどうしてそんな言動をするのか、というのを解説しています。相手の状態がわかれば対策がとりやすい。そしてこの本で提案しているのは、「自分を変える」ということです。

――普通は、めんどくさい相手が変わるべき、って思ってしまう気がします。

山名 そうですね。人って、「自分が正しい」という感情が強いので、相手を変えようとしてしまいがちです。ただ、相手も相手で変えようとされたら反発心で余計に意地になってしまいます。人を変えるよりも、自分を変える方が何十倍も楽なんですよ、ということを伝えたいですね。

――ちなみに、どういった人がめんどくさい女子になりやすい、など共通点はあるのでしょうか。

山名 ケースバイケースですが、不安を感じやすい人、ですね。たとえば小さい成功体験をこつこつ積んできた人たちは、地盤ができている分、わざわざ他人と自分を比較しなくても済むので安定しています。一方で、失敗が怖くて挑戦してこられなかった人は、成功体験が少ないケースが多いのですが、それが素直に見せられないから、言動がめんどくさい表現につながりやすいんですよ。

■ケース1 群れたがり女子



――まずは群れたがり女子ですね。

山名 イケてる女子のグループに属するだけで、自分もイケてると思うんですよね。これはハロー効果といいます。群れたがり女子の特徴としては、根本的に自信がなくて、人目を気にしすぎるところがあります。自分が一人だと思いたくないし、思われたくもない。「人気者の私」を保つために自分をすり減らしていく。

――群れたがり女子で悩んでいる人からは、どういった相談を受けることが多いのですか?

山名 いつものグループと違う子と遊んだときに、「どうしてその子と遊ぶの?」なんてことを言われたり。遠回しに「あの子といるとあなたの価値が下がるよ」というような伝え方をされる場合もありますね。そういう人は、グループ内で自分以外の人同士が仲がいいのも気に食わないし、自分に声がかからないと不安定になってしまう。一人の時間をうまく使うのが苦手なんですね。

――群れたがり女子とはどういう風に付き合っていくべきでしょうか。

山名 まずは「私はこういう人間です」と時間をかけて提示していく必要があります。たとえば映画を一人で見に行ったとSNSに投稿したら、「なんで誘ってくれなかったの?」と言われたとする。そしたら、「突然誘ったら悪いと思ったし、一人の時間も大切にしているんだよね」と伝えればいいんです。大切なのはブレないこと。相手の気持ちに寄り添いながらも、ネガティブな発言に同調して一緒になって悪口を言ったりしてはいけません。

――え、そうなんですか。ある程度同調しないと逆に「嫌な奴」だと思われてしまうかと思ったのですが。

山名 相手の心の動きを感じて「それは辛かったね」などと気持ちの部分に共感することは大切なことです。悪口を言って絆を強めようとする、女子に特有の行為は実は逆効果なんです。「あの子は私といないときに悪口を言っているかもしれない」と相手の不安を増幅させてしまうので。逆に悪口に同調しないことで、「この子は私と一緒にいないときでも悪口を言わない人なんだな」と安心感をもってもらうことができます。

 人間関係を構築する上で多少のお付き合いをすることは大切ですが、違う部分で好意を示すことはできます。誘われたことに喜んだり、参加できなかったときに残念がったりすることでも相手には気持ちが伝わるので、無理して相手に合わせず適度な距離を保てるといいですね。

■ケース2 意識高い系女子



――次は意識高い系女子ですね。

山名 意識高い系女子は、特に攻撃をしてくるわけではありませんが、周りにプレッシャーを与えがちなのが特徴ですね。このタイプも一人の時間をうまく使えずスケジュールを詰め込みやすいんです。

――攻撃してこないということは、あまり実害はなさそうですね。

山名 付き合い方を考えなければならないのは、ポジティブなことを無理にでも押し付けようとしてくるときですね。今の時代ポジティブなことが歓迎されやすい風潮があるのもプレッシャーを強めてしまう原因に。私のところに相談に来る方も「私はポジティブになれないのですが、間違っているんでしょうか」ということで悩んでいる人が多い。

――たしかに弱音を吐きづらかったり、頑張り続けないといけないような気になったり、そういう世間のプレッシャーはありますね。意識高い系女子も無理している部分があるのでしょうか。

山名 そうですね。完璧主義な人が多く、頑張りすぎちゃうところがあります。そういう人に対しては、「ちゃんと休めてる?」と声をかけてあげたり、もしくは彼女たちは自己啓発が好きなので、「ゆっくりすることが心の潤いにつながるらしいよ」など休むためのアイデアを与えてあげたりするとといいですね。

――自分のためになるよ、と意味付けしてあげるんですね。

山名 あとは、カラオケや温泉など一緒にリラックスできる場所に行くのもいいですね。「あなたといることが楽しい」ということが伝わることで、感情感染効果によって、相手の副交感神経が優位になりリラックスできるようになります。無理しなくても楽しいんだ、ということを体で覚えさせてあげたりするのはいいですね。

――気楽に過ごせる友人の一人になってあげるんですね。

山名 そうですね、その子の一種の逃げ場になってあげるのはひとつの方法だと思います。ある意味、「私は適当だからさあ」と言って、相手を優位に立たせてあげるということでもあります。相手が無理しなくても優位に立てる状況にし、そして心に寄り添ってあげます。

■ケース3 情緒不安定女子



――最後は情緒不安定女子ですか。

山名 五月病の季節も近いので、このタイプの女子が多く出てくる可能性があると思い選びました。そもそも「変わること」のストレスというのは大きくて、たとえ職場や住居などが変わったわけではなくても、人間関係に変化があっただけで疲れやすい。緊張状態などが続いて情緒不安定女子になってしまう人が多いのです。

――確かに、疲れや緊張で情緒が安定しづらいときはあります。

山名 情緒不安定女子の特徴としては、深夜にSNSをたくさん更新したり、LINEのタイムラインに自分の心境を載せる頻度が高かったり、LINEの文面が長かったり、友達関係が長く続かなかったり……とにかく不安で気持ちが落ち着かない人が多いですね。

――本人にとっては感情の起伏が大きいのが日常かもしれませんが、そばにいる人間はその不安定さにふりまわされてしんどい、というのはよくある気がします。

山名 余裕があれば、「聞いてるよ」というアピールだけでも有効です。カタルシス効果といって、本人は愚痴や悩みを吐き出すことで安定しますから。ただ、もし自分が流されやすいタイプであれば、その子が悩んでいるときはそっと距離を置くのがいいですね。夜に悩んでいても、朝起きたら落ち着いている、なんてことは多々あります。

――なるほど、相手が落ち着くまで待っているだけでいいんですね。

山名 基本的に、情緒不安定女子は、話を聞いてほしいだけで具体的な解決方法は求めていないんですよ。でも優しすぎる子は感情感染効果で相手に流されてしまって、どうにかしてあげなきゃと思い悩んでしまったりする。また、そこでも悪口を言ってくる場合がありますが、同調ではなく共感を心がけましょう。

――同調ではなく、共感、ですか。

山名 「その人本当にムカつくね」じゃなくて、「私も同じこと言われたら悲しいかも」と伝えるんです。怒りはピークを過ぎれば落ち着いていきますし、むしろそこで対応しちゃうと、逆に彼女の怒りを増幅させてしまう可能性もあるので。


■「あ、私◯◯女子だ」と気づいたときの直し方

――この本を読んでいて、私、「否定女子」に当てはまるなって思ったんです。

山名 そうなんですか! でも、今回の本の反響のひとつとして「私も◯◯女子だと気づきました」という感想は多いですね。

――もし◯◯女子に当てはまる、と気づいた場合、まずどこから直していけばいいのでしょう。頭ではわかっていても、なかなかすぐには直せない気がしていて……。

山名 まず、すぐに直す必要はないんですよ。何よりも「気づき」が大切です。自分が◯◯女子だな、と気づいたら、その日から少し自分の言動を意識して観察してみる。否定女子だとしたら、「今日“でも”って何回言ったかな」など。あとはネガティブな発言は極力避けて、口に出すときだけでもポジティブなものにしてみる。「疲れた」だけでなくて、「疲れたけど、頑張ったな」など、小さく変えていくだけでいいんです。

――口にする言葉も大切なんですね。

山名 言葉にすることは大きな力があります。内心はそう思っていなくても、ポジティブな発言を繰り返すことで、脳がポジティブな解決策を考えるようになる。

――本の中では「褒めるボキャブラリー」という表現もありました。

山名 そうそう、褒め上手になることで、自分の長所にも目が行くようになります。よくカウンセリングで自分の長所はなんですか、というワークをすることが多いんですけれども、みなさん外面か内面に偏りがちなんですね。外面ばかりとか内面ばかりとか、いろんな角度からその幅の魅力を捉えられる視点というのは増やしていった方がいいですね。

 また、自分に自信がない人ほど、他人の粗探しをしてしまいがちです。こうやって人を否定してしまうときは、「感謝」が抜け落ちやすいんですね。心理学では「感謝」の反対は「当たり前」だと言われています。仕事がもらえて当たり前、とか、病気をせずに生きているのが当たり前、とか、そういう普段当たり前だと思っていることを、「ありがとう」に戻していく作業も大切です。感謝という感情があれば、人は心が穏やかになっていきます。

――ありがとうございました!

取材・文=園田菜々
撮影=山本哲也