2018年、最注目の若手声優が登場! 『GGO』と自身の「夢」を語る――楠木ともりインタビュー(前編)

アニメ・マンガ

2018/4/6

TVアニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』4月7日より、TOKYO MXほかにて放送 (C)2017 時雨沢恵一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/GGP Project
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 4月7日に放送をスタートするTVアニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』(以下『GGO』)。昨年劇場版アニメーションが公開され、全世界で大ヒットを記録した『ソードアート・オンライン』(以下『SAO』)のアナザーストーリーであり、『SAO』のファンだけでなく、幅広く注目を集めている作品だ。そんなTVアニメ『GGO』の主人公・レン役に抜擢されたのが、昨年デビューを果たしたばかりの声優・楠木ともり。1話の映像を観たが、レンが劇中で見せる思い切りのよさを全力で体現していて、今後のキャラクターの成長が楽しみだし、エンディングテーマのキャラクターソングも担当する『GGO』は、まだキャリアが始まったばかりの彼女にとって、飛躍を遂げるための大きなきっかけとなるだろう。今回は、『GGO』の放送を機にロング・インタビューを敢行。前編は、『GGO』&レンとの出会い、そして声優としての現在を語ってもらった。「期待に応えたい」という強い思いを携えて、受け手を想像しながら表現と向き合う声優・楠木ともり。2018年は、きっと彼女の名前を目にすることが多くなるはずだ。

「充実してるな、幸せだな」とは思うけど、違う自分になりたい欲は消えない

――『ガンゲイル・オンライン』は『ソードアート・オンライン』のアナザーストーリーであり、大きな注目を集めている作品ですが、主役として参加することが決まったとき、どんなことを感じましたか。

楠木:わたしはもともと『SAO』が好きで観ていて、オーディションを受けたときも「自分がやりたい」という感情よりも、「あっ、新作やるんだ。やったぁ」みたいな、ファンとしての感想しか出てこなくて。オーディションを受けたときも、他の方が演じるものだと思っていた部分がありました。だから、決まったときはほんとに信じられなくて。「決定しました」というお話をいだたいて、プレッシャーや不安はあとから感じました。最初はほんとに何も受け止められなくて、とにかく「今、何が起きてるんだろう」みたいな感じで、自覚症状がなかったというか(笑)。

――(笑)ただ『SAO』の関連作品のオーディションを受けられて嬉しい、だけだった?

楠木:そう、受けること自体が嬉しくて。オーディションのお話をいただいただけで「声優になってよかった」って思ったくらいなので。もちろん、作品に関わることができたらすごく幸せなことだと思うし、「やってみたいな」っていう気持ちはあったんですけど、それよりもほんとにファンとして嬉しい、という感覚でした。だから、オーディションのときも変に気負わなくて。「絶対受かりたい!」という気持ちよりも「楽しみだな」という気持ちで、ルンルンやっていた感じでした (笑)。オーディションのテープを収録するときも、すごく楽しかったです。

――いちファンとして触れてきて、『SAO』はどういう作品だと認識してたんですか?

楠木:(劇場版の)『ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』が公開されたときに、友達に「絶対観た方がいい」って言われて、映画の前にTVアニメを一気観したんです。観ている間も、自分好みというか、すごく好きな作品だなってずっと思っていて。わたし自身ゲームが好きなんですけど、自分が普段経験できないこととか、自分ではできないこと、自分以外の誰かになれるところがゲームにはあるので、『SAO』を観ていて、すごくワクワクして。一番最初のシーズン(《アインクラッド編》)はデスゲーム、実際に死んでしまうっていう設定で、それまではアニメを観ていて「自分だったらこうしたい」という想像ができていたんですけど、『SAO』で描かれている死を実際に目の前にしたときに、「自分だったらどうするんだろう」っていうことが急に考えられなくなって。そこで、自分が想像しない方向に登場人物たちが動いていくのが興味深くて、ほんとにどんどんのめり込んでいったし、大好きです。

――今生きているところとは違うところに行って何かを体験する、潜在的にそういうことへの憧れみたいなものがあるんですかね。

楠木:はい、やってみたいです。

――それはなぜ?

楠木:すべてが、というわけではないんですけど、わたしはあまり自分が好きではなくて、今の自分にはできないことも、他の人になれたら、なりたい自分に近づけるんじゃないかなって考えていて。たとえばわたしは運動がまったくできないんですけど、違う自分になって速く走れたら気持ちいいだろう、とか、自分ではないものへの憧れは小さい頃から大きかったです。だから魔法少女アニメも好きで。変身して自分ではないものになる瞬間にすごく憧れます。自分じゃないものになった瞬間って、結果的に自分を客観視できると思うので。いろんな人生を味わってみたいなっていつも感じてます。

――とはいえ、今過ごしている声優としての人生も充実してきてるんじゃないですか?

楠木:はい、すごく充実感を感じてます。実際、自分が思ったより早く夢が叶って、どんどん発展していってるので、「充実してるな、幸せだな」とは思うんですけど、違う自分になりたい欲は消えないです。以前は、夢が叶ったら自分のことを好きになるだろうな、と思ってたんですけど、思ったほどそうでもなくて(笑)。やっぱり、自分はいろいろやってみたい人間なんだなって思いました。今の自分も、数年前の自分から見たらそれこそ変身後というか、まったく想像できなかった経験をしているので。いろんなものを味わうのは自分にとってプラスになっていくと思うので、まるっきり違う自分にはなれないけれど、できる限りいろんなことに挑戦していきたいと思っています。

――声優になって、いろんな人物になる経験をしたことで、自分の中で変わった部分はありますか。

楠木:考え方がすごく変わりました。けっこう、自分にとらわれないところがあるというか。『GGO』のレンちゃんも、臆病ではあるけれどもゲームの中ではそれを出さずに、勇気を出してどんどん行く子で。わたし自身はあまりそういうタイプではないので、役作りに関しては時間がかかる部分もあるんですけど、実際に演じたときに、「窮地に立たされたときはこう考えればいいんだな」とか、キャラクターたちから学ぶ考え方は役によって多種多様なので、いろいろ吸収できてるのかな、と感じています。

誰かのために何かを作り出せる存在でいたいし、前ではなくて横にいる存在でいたい。一緒に隣で歩いていきたい

――『SAO』はとんでもなくデカいスケールの作品で、『GGO』にしても待ってる人が多いことを自覚する場面がたくさんあったんじゃないかな、と想像していて。そこに主役として参加するにあたり、決意と覚悟を持って収録しているのかな、と思うんですけど、1話にはどんなことを考えて臨みましたか。

楠木:わたし自身は新人声優で、演技を学んだこともなくて。だから、自分が下手なことも自覚した上で、とにかく皆さんの期待値が大きいので、自分にできる最大限の力を発揮して、期待に沿える演技をしなきゃいけないな、という責任感やプレッシャーをすごく感じています。家で台本を読んで練習しているときも、オーディションを受ける前や受かったと聞いた直後は嬉しさがあったんですけど、1話の収録前に不安や恐怖心がガーっときてしまって、すごく緊張しながら現場に向かいました。現場も、はじめましての方ばかりだったので、すごく緊張しました。

――その緊張はどうやって乗り越えたんですか。

楠木:やるしかない、と(笑)。とにかくわからないことは先輩方に質問しまくって、不安要素を消してから挑もうと思いました。初めての方ともできる限りコミュニケーションを取っていました。

――1話の映像を観た感じでは、とても思いきりよくやってる印象がありましたよ。

楠木:そうですね、レンちゃん自身がすごく勢いのある子なので(笑)。最初にテストでやったときに、「不安そう」っていうディレクションをいただいたんですけど、たぶんそれはレンちゃんではなくわたしの不安なんだろうな、と思って。わたしの不安がレンちゃんに響いてしまうのはよくないと思ったし、「今さら不安になっても仕方ない」と思ったので、自分の中で区切りをつけて、レンちゃんと同じように、とにかく思いっきり前に前に、という感じでやりました。

――今まさに収録真っただ中という感じだと思うんですけど、得るものもすごく多い現場なのでは、と思います。レン役をやり遂げたとき、声優・楠木ともりはどんな人になってると思いますか。

楠木:なんだろう、いい意味で、ほどよい自信はつくのかな、と思います。今はとにかく不安要素ばかりだけど、やり遂げた事実そのものが自分にとっての自信というか、ひとつの経験値としてちゃんと刻まれると思います。でも、たぶん自分自身で成長を自覚することはなくて、最後まで録りきっても、やっぱり「大丈夫だったかな」という感情は消えていないと思います。でも、何かしらの形で他の作品に出たりしたときに、「ここは『GGO』で学んだな」みたいな部分が増えてたらいいですね。わたし、昔から責任感が強いというか、期待に応えたい気持ちがすごく強いんです。だから『GGO』をやっていても、視聴者、ファンの方の期待に応えたい気持ちは人一倍あると思います。

――へえ~。それ、けっこう珍しいことだと思いますよ。

楠木:えっ、ほんとですか?

――たとえば、シンガーにはそういう人がとても多いと思うんですよ。お客さんが目の前にいるわけだから。でも、声優さんでそこを強く意識している人、特にお芝居をしている時点からお客さんのことを考えているのは珍しいんじゃないですか。届く先をすごくイメージしているっていうことだと思うので。

楠木:そうですね。

――Twitterに「みんなの心に明かりを灯したい」というフレーズを載せてるじゃないですか。この言葉って、今の話とリンクしてくると思うんだけど、意味を教えてもらえますか。

楠木:わたしはいじめられた経験があるんですけど、そのときにわたしの心に明かりを灯してくれた存在がアニメやアニソンだったんです。だから、自分がアニメの仕事に携わることで、アニメ自体に恩返しをしたいというか。過去の自分と同じように苦しんでいる人がいたら、何かしらの形でイヤだな、と思っている気持ちを少しでも晴らしたり、前向きに考えられるきっかけになりたいな、と思っていて。なので、演技はもちろん、歌だったり、絵を描いてみたり、とにかくいろんなことにチャンレンジしたいです。それは自分のためでもあるけど、自分と同じ境遇の人にちゃんと寄り添っていきたいなっていう思いが強いので、そのスローガンを立ててます。

――スローガンなんだ(笑)。

楠木:スローガン? 方針? 指針?(笑)。何かしら目標が欲しいタイプなんです。

――「心に明かりを灯す」というのはつまり、誰かのためになることをしたい、表現を受け取る人の気持ちや心に何かを残したいっていうことですよね。

楠木:はい。光じゃなくて明かりになっていることにも、ちゃんと理由があって。わたし自身、誰かの前に立って「ついてきなよ」っていうのはあまり好きではないので、しっかり明るく照らすというよりも、隣でひっそり寄り添っていたい思いが強いです。そう考えると、光よりも「明かりを灯す」の方が自分の中でしっくりくるので、いつもこの言葉を選んでいます。Twitterのリプとかで感想を文字で伝えていただける方がいると、「よかったなあ」と思うし、嬉しくなりますね。実際に誰かが苦しんでいる状況があって、その人を救えたとしたらわたしもすごく嬉しいし、声優になってよかったな、と思います。

――それはきっと、受け手の人たちとの心の明かりの灯しあいなんでしょうね。

楠木:そうですね。わたしもファンの方から灯していただくことが多いので、すごく感謝が大きいです。声優になってみて思うんですけど、誰かのために何かを作り出せる存在でいたいし、前ではなくて横にいる存在でいたいな、と思います。一緒に隣で歩いていきたいですね。

――では、声優としての活動を続けていく上っで、今想像できる一番大きな夢は何ですか。

楠木:「生きててよかったな」と思えること、ですかね(笑)。幸せになりたいし、死ぬときになって「いい人生だったな」って思いたいです。

――先長いな……(笑)。

楠木:はい(笑)。

――幸せになりたいとして、その幸せの定義って何ですか?

楠木:後悔しないことです。失敗をしても、それを後悔にはしたくなくて、何かしら自分のプラスにしたいので、後悔をしないために動いている部分はあると思います。

――では最後に。声優・楠木ともりにとって『GGO』のレンはどういう存在になると思いますか。

楠木:ずっと変わらず、大きな存在になると思います。自分自身にあまり経験がない段階でいただいたチャンスで、今は何もない状態なので、レンちゃんは自分を形作るものになると思いますし、どんなに時間が経っても自分を作る基になったことは変わらないので、たぶん何年経ってもレンちゃんは大きな存在になるんだろうな、と思います。

取材・文=清水大輔 撮影=GENKI(IIZUMI OFFICE)
ヘアメイク=佐々木美香