海賊版サイトに対抗する「マンガ図書館Z」の勝算とは? 『魔法先生ネギま!』赤松健に聞く!

アニメ・マンガ

2018/5/11

――ブロッキングを巡り議論も巻き起こっている海賊版サイトですが、マンガ家としてどう見ていますか?

赤松健氏(以下、赤松):わたしのように長く紙で巻を重ねてきたマンガ家は、まだマシな方なんですよ。これまでの読者が引き続き紙でマンガを買ってくれるからです。

 いっぽう新人のマンガ家にとっては非常に厳しい状況です。ただでさえ今、マンガ雑誌の休刊も相次ぎ、マンガを知ってもらう機会も減っています。それに加えて、作品が海賊版サイトで読まれてしまっては、紙でも電子でも単行本を買ってもらえなくなりますから。海賊版は新人さんにとっては本当にダメージが大きいのです。

マンガ家・赤松健氏(代表作に『魔法先生ネギま!』『ラブひな』などがある。『UQ HOLDER!』連載中。「マンガ図書館Z」取締役会長、日本漫画家協会理事)

――新人が活躍できないとなると、マンガの多様性も失われてしまいますね。

赤松:(日本漫画家協会の理事長を務める)ちばてつや先生も、教鞭を執っておられる大学で若い人が海賊版サイトを利用していたり、それを新人のマンガ家が嘆く様子を見たりして、「これは大変なことだ」と急ぎ個人としてコメントを出されています。

 知的財産戦略本部が「海賊版サイト」の対策として緊急避難的に接続を遮断することが出来る、とする判断をされたと聞き、まずは日本が国をあげて「マンガの危機」に真剣に向き合ってくれていることに、とても心強さを感じました。

 しかし僕たちは表現者として常に大切にしてきた「表現の自由」や「知る権利」において、今回の「ブロッキング」という手段が諸刃の剣になりかねない、と危惧してもいます。

だからなお一層、そんな手段すら検討せざるを得ない「海賊版サイト」の存在には、強い憤りを感じるのです。
 才能あふれる若い漫画家の皆さんが今、本当に苦しめられています。

その酷い現実を見るほどに、守るべき自由の理念と、綺麗事では済まないかもしれない醜い現実のはざまで、身を引き裂かれるような思いを味わっているところです。

ちばてつや公式サイト

――海賊版サイトのなかには「マンガ画像へのリンクを提供しているに過ぎず、ユーザーが閲覧しても違法ではない」と主張しているものもあります。それについてはどう感じていますか?

赤松:たしかにマンガのような静止画は違法アップロードされたものを読んでも罪に問われないのですが、一方ではそういった行為も違法にしようという動きもあります。そうなってしまうと、インターネットが非常に息苦しいものになってしまい、経済活動も停滞してしまいます。

 また、わたしたちマンガ家の多くは、二次創作にも寛容ですし、ある意味コミケのような場所は創作の揺りかごだと捉えているのです。緩やかに著作権法とも向き合ってきたからこそ日本のマンガはここまで発展してきたのに、海賊版によって、音楽・動画だけでなく文章や画像のダウンロードも違法化されるなど著作権をより厳しい方向に向わせてしまうことにやや違和感をもっています。

――違法化もマンガの発展を阻害する危険があるとすると、どういった対策が有効なのでしょうか?

赤松:2つあります。まず「海賊版を使ってはダメだ」というモラルの教育。これは絶対必要ですがこれだけでは不十分です。もう1つ大事なのは「海賊版よりもずっと便利で楽しい場所がある」ことです。それが公式サイトであれば良いのです。たとえブロッキングのような遮断をおこなっても、似たような海賊版サイトが次々と生まれますから、抜本的に問題を解決するにはこれしかありません。

 わたしは5月から、GYAO!さんと提携して運営している「マンガ図書館Z」で、ある出版社と連携した展開をはじめます。Twitterを見ていても「漫画村のように、出版社を問わず、マンガが網羅されているサイトがなぜないの?」という声があがっていますが、まさにその実験の第一歩をやろうとしているのです。

図 1:マンガ図書館Zより

「マンガ図書館Z」では、これまで絶版作品やユーザー投稿作品を広告付きで無料公開(※成人作品を除く)してきました。広告収益を作者の方へ経費を除き100%分配してきたのですが、同じことを今度は出版社と組んでやります。過去の雑誌も対象にしたいです。もちろん新作との出会いの場にもなります。うちはフキダシの自動翻訳にも対応していますから、海外向けの海賊版対策にもなるのです。

 わたしはこれが拡がれば、海賊版サイトには勝てるとみています。だから正直、現時点では「海賊版が憎い」という気持ちがあまり強くないというのが本音です。先日のNHK『クローズアップ現代+』に出演したときも、「赤松は怒っていなくてけしからん」というお叱りも受けたのですが、実はこういう計画があるからなんです(笑)。

――なるほど(笑)。たしかに定額制サービスが拡がった、音楽・映像などの取り組みに通じるものがあります。

赤松:マンガ家は作品づくりに集中したい、出版社は既存の書店流通にも配慮が必要で、横断的な電子マンガ配信サイトになかなか踏み込めない――そんな隙をついたのが今回の海賊版サイトです。わたしは個人的にはユーザーのモラルに訴えかけることにも限界があると思っています。抜本的には技術が解決する問題なので、マンガ図書館Zでの取り組みをつづけていきます。

――期待しています。本日はありがとうございました。

取材・文=まつもとあつし