お悩みだらけの幽霊との出会いが、こじらせ女子の人生を変える! 映画『ルームロンダリング』、まもなく公開!

エンタメ

2018/6/14

「小さな惑星にどんどん花が咲いていくような映画。
ささやかな世界のなかで起きるけど、実はとっても大きなお話です」(池田エライザ)

『ダ・ヴィンチ』本誌の「七人のブックウォッチャー」で書評を連載している“本読み女子”の姿は、世にはびこる池田エライザ像とは異なるものかもしれない。『ルームロンダリング』で演じた八雲御子は、さらにその像を混沌とさせていく。御子の役のオファーが来たとき、即座に思ったのは「バレたな(笑)」――その心とは? そこから広がっていく豊かな“池田エライザワールド”とは?

いけだ・えらいざ●1996年、福岡県生まれ。2009年、モデルデビュー、11年、映画デビュー。15年、園子温監督、映画『みんな!エスパーだよ!』でヒロインに抜擢され、以降、女優業が急増。公開待機作に『ルームロンダリング』『SUNNY 強い気持ち・強い愛』。『ダ・ヴィンチ』「絶対読んで得する14冊 七人のブックウォッチャー」で書評連載中。

“伝えるには自分の器が足りないんです!”という思いをずっと抱えてきました

 映画『ルームロンダリング』のオファーともに脚本が届けられたのは、母の故郷に帰り、祖母をはじめ、久々に会ったファミリーたちとの、ほっこりした時間を過ごしているときのことだったという。

「私の見えないところに国境というものがあって、それを跨いだ先に別の言語で話す家族がいて。私はそれほど母の国の言葉を話せるわけではないのですが、それでも心には通じ合うものがあり、互いが互いの思い出を持っていて――ということを実感する、愛情ある時間を過ごしていたときに、この脚本が届いたので、すごくエモーショナルな気分になりました。“あー!”って、叫び出したくなるほど(笑)。こんな作品に出演できる日が、私に来るなんて!と」

「ある種、日本的な映画」とエライザさんは言う。『ルームロンダリング』で演じた主人公の八雲御子は、5歳で父と死別、翌年には母も失踪、祖母に引き取られ、その祖母も18歳のときに亡くなり……という人生を送ってきた。引っ込み思案で、人づきあいが苦手――けれど、そのキャラクターは、天涯孤独な境遇がもたらしたものばかりではなく、どこか“日本人気質”のようなものにも思いを馳せてしまう。

「御子ちゃんは、人とコミュニケーションをとることが、自分のなかでつっかえ棒みたいになっている。それは、私自身も日本で育つなかで、ずっと感じてきたことだったんです。でもけっして、伝えたい気持ちがないわけじゃない。“伝えるには自分の器が足りないんです!”ってことなんです。それを叫びたくて、叫びたくて、でもそれを叫ばなくても日本では生きていける。ハグをする文化のある国と違って、引きこもっていても、毎日は過ぎていくし、でも過ぎていくと、向き合わなきゃいけないことも出てくる。御子ちゃんの日々はまさにそれで。その感覚は、私自身がずっと引きずってきていたものでもあったので、“よくぞ、この映画に私を呼んでくださった”と思いました……というか、“バレたな”と(笑)」

 御子は、世にある“池田エライザ像”とは真逆の役。けれど、以前からエライザさんのことが気になっていたという片桐健滋監督は『ダ・ヴィンチ』で書評を書いていることから“この子、本が好きなんだな”と、御子役のオファーを考え始めていたという。片桐監督が相談した廣木隆一監督も、その配役、“ありでしょ!”と。そう、御子は“本を読む女”だ。

「そういうところも、これ以上、素で演じられた役はないなという気がして。自分の殻に閉じこもっていけば、御子ちゃんに寄り添える部分はたくさんあったし、逆に御子ちゃんとして時間を過ごし、幽霊と向き合えば、ほんとに心から素直にその言葉を聞けるような気がしました」

“浄化”したその先できっと彼女は誰かのためにもなっている

 ワケアリの物件に住み込んで事故の履歴を消し、次の住人を迎えるまでにクリーンな空き部屋へと浄化(ロンダリング)することが御子のお仕事。ところが行く先々で待ち受けるのは、幽霊となって部屋に居座る、この世に未練たらたらな元住人たち。なぜか彼らの姿が見えてしまう御子は、そのお悩み相談に振り回されていく。みずから命を絶ちながらも、ミュージシャンになる夢を諦めきれないパンクロッカー(渋川清彦)、見ず知らずの男に殺され、恨み節が止まらないOL(光宗薫)……。でも幽霊たちはどこかコミカルで愛らしい。

「御子である私が何をしなくても、ともに演じた皆さんがポップに世界を回してくださいました。『ルームロンダリング』という小さな惑星にどんどん花が咲いていくというか、どんどんその世界が彩られていったようで。映画の大切なアイテムとなっている、御子ちゃんが描く絵のように。ささやかな世界で起きること、でもこの物語は、実はとっても大きなお話で。無意識に部屋を浄化している御子ちゃんですが、自分も浄化し、実は、その先で、誰かのためにもなっている。映画のなかで描かれている彼女は、きっとまだそのことに気付いていないのですが、それを気付いた瞬間、御子ちゃんは照れることができたり、笑うことができたり、もっと可愛くなっていくんだろうなという予感があります」

“オリジナル脚本、どうしようもなく好きだな”と作品世界のなかにどんどん飛び込んでいきました

 御子がいつも抱えているアヒルのランプ、引っ越した先々で彼女がつくるノスタルジックな部屋、描くイラスト、バックに流れる三拍子の音楽……殊に、可愛いもの好きな女子なら目を凝らしてしまう繊細でキュートな空間。ストーリーをくるむ、そんな“独特”の世界観をまるっと構築できたのは、本作が映画オリジナル作品であるということも大きいだろう。

「このストーリーは、片桐監督と、脚本家の梅本竜矢さんが、居酒屋で飲んでいるときに、ぽんっと生まれたそうなんです。男性二人が、居酒屋でこの可愛らしいお話を生み出していったということがそもそもとても愛おしいですし、そこから御子ちゃんや、オダギリジョーさん演じる、一見いかつけど心優しい悟郎ちゃんなど、ひとりひとりが生まれていったその行程は、想像するだけでワクワクしてしまいました」

 ストーリーを生んだ人々と、“撮影の間もずっと一緒”という環境で大きな安心感も得たという。

「原作がある作品に対しても、もちろんそこへのリスペクトは撮影中ずっと持っています。けれど、オリジナル脚本の場合、一緒にものづくりをしていて、いま同じ方向を向いていると感じられる充実度がすごく高くて“どうしようもなく好きだな”と。それで、私もどんどん作品世界のなかへ飛び込んでいきました。“御子ちゃんの気持ちはここまで行っているよね?”“いや、まだそこまで行けてないんじゃないか”ということを、その都度、監督と話し合えましたし、共演者の方々との化学反応みたいなものもチューニングできる。だから、映画にはそんなライブ感のようなものも滲み出していて。そこもきっと楽しんでもらえる要素だと思います」

“人間のほうがよっぽど怖いよ。嘘つくし”と言っていた“こじらせ女子”が、どう変化していくのか。御子の行く先々はぜひスクリーンで見届けてほしい。

「幽霊たちはかつて生きていた人で、そこにはちゃんと“生”があり、愛しい時間が流れていた。それはいま生きている自分が対峙している、生きている人も同じで。そんな気付きがふと降ってくるこの映画は、どこか小説的でもある。観る方が穏やかな時間を過ごしていただける作品になったと思います」

取材・文:河村道子  写真:鈴木慶子

■映画『ルームロンダリング』

監督:片桐健滋
出演:池田エライザ、渋川清彦、健太郎、光宗薫、木下隆行、奥野瑛太、つみきみほ、田口トモロヲ、渡辺えり、オダギリジョーほか
配給:ファントム・フィルム
公式サイト:http://roomlaundering.com/
7月7日(土)より新宿武蔵野館ほか全国公開

【あらすじ】
友達ゼロ、彼氏なし、人生こじらせ中の御子の仕事は“ルームロンダリング”(=事故物件の履歴の浄化)。なぜだか見えちゃうこの世に未練タラタラなユーレイ達に振り回される毎日。周囲の人々も巻き込んで御子の人生初の恋とトラブルが訪れる!?こじらせてきた分だけ幸せになれる、ハートウォーミングコメディ。

(C)2018「ルームロンダリング」製作委員会

■コミカライズ