東出昌大&新田真剣佑が激突! モータースポーツで世界を目指す兄弟を描いた『OVER DRIVE』公開。羽住英一郎監督インタビュー

エンタメ

2018/6/13

ラリーファンも知らない人も魅了される作品をつくりたかった

『海猿』、『暗殺教室』、『MOZU』……数々のヒット映画をつくりあげてきた監督・羽住英一郎さんによる10年ぶりのオリジナル映画『OVER DRIVE』。題材に選んだのはモータースポーツ。公道を車で駆け抜け最速を競うラリーで世界をめざす兄弟の熱い絆と戦いの物語だ。「幼いころからモータースポーツが好きだった」という監督の、映画にかけた想いをうかがった。

はすみ・えいいちろう● 1967 年、千葉県生まれ。「踊る大捜査線」シリーズのチーフ助監督などを経て、2004 年、『海猿』で映画監督デビュー。シリーズ2 作目の『LIMIT OF LOVE 海猿』はその年の実写映画部門で興行収入第1 位を獲得。シリーズ全4作をてがける。ほか代表作にドラマ『アンティーク ~西洋骨董洋菓子店~』、映画『おっぱいバレー』『暗殺教室』、テレビ&劇場版の『MOZU』など。

――日本ではあまりなじみのないラリー競技を、なぜ今、映画の題材に選んだんですか?

羽住 大好きなモータースポーツでいつか映画を撮りたかった、というのがいちばんの理由ですが、ラリーに興味のない人にもスクリーンで走りの迫力を見せれば、きっと退屈させないものになるはずだと思ったんです。ただ、とっかかりとなるドラマ性がなければ、お客さんは劇場に足を運んでくれない。そこで、ものづくりのプロフェッショナルであるメカニックに焦点をあてることにしました。

――東出昌大さん演じる、スピカレーシングファクトリーのチーフメカニック・檜山篤洋ですね。

羽住 そう。コンマ1秒でも速く走らせるために、チーム一丸となってトライ・アンド・エラーを繰り返し、途方もない時間と予算をかけて車をつくりあげていく。モータースポーツは「2位は最初の敗者」といわれるくらい、優勝しなければ意味のないスポーツなんですよ。最速を競い、さらに自分たちのマシン(車)の技術と威力を見せつける。その姿はきっと、観る人の琴線に触れるのではないかと。そのリーダーには、多くは語らず黙々と手を動かす人がいいと思っていたので、東出くんはぴったりでした。

――対して新田真剣佑さんが演じるのは、篤洋の弟であり、チームを顧みず傲慢に走り続ける天才ドライバー・直純です。

羽住 やはりモータースポーツで面白いのは、エモーショナルで迫力のあるドライビング。ラリーに興味のない人にも足を運んでもらいたいと言いつつ、やっぱりもともとのラリーファンに納得してもらえるような作品をつくりたかった。ドライバーというのは自分が一番速いと思っている連中の集まりなので、不遜なドライバーが華麗なる走りで観客の目を釘づけにする、そんな映像を撮りたかったんですよね。ドライバーというのはみんなぴったりしたレーシングスーツを身にまとっているので、肉体美にも魅了される。マッケンには実際のドライバーの写真を見せて、こんなふうに鍛えてほしいとお願いしたら、2カ月かけて完璧に身体を仕上げてきたので、さすがだと思いました。

プロフェッショナルな“馬鹿”が熱い感動を生み出す

――車そのものに興味がなくても、ラリーシーンはその迫力だけで魅了されるものがありました。

羽住 ラリーファンを納得させたい思いがあったので、専門的な細部にまでこだわってつくってはいるんですけど、だからといってラリーに興味のない人に、いちいち説明する必要はないと思っていて。わかる部分だけを追いながら観ていれば自然と惹き込まれていくつくりになっていると思います。ただ車が走っているだけだといくら迫力があっても飽きてしまう。だけど登場人物の心情に重ねて画を変えていけば、それだけで気持ちは盛り上がっていく。

――たしかに、多くは語らないことで、物語に余韻を生んでいるように感じました。兄弟の過去や、それぞれの因縁も、実は最後まではっきりと説明されていないことが多いですよね。

羽住 映画を観るというのは脳をフル回転させる作業で、お客さんはシーンの断片からその先を無意識に予想してしまっているんです。その想像どおりに物語を展開させると早々に飽きてしまうから、常に裏切り続けなくてはいけない。むしろ「お客さんはこんなふうに想像するだろう」というものを利用して、物語を膨らませていくことが大切なんです。ときどきありませんか、何年後かに映画を見返してみたら「自分の好きなシーンがなかった」という経験。僕はレンタルビデオが普及した頃にそれを味わったんですが。

――あります。物語を勝手に、脳内で再構成してしまっているんですよね。

羽住 お客さんの想像と一緒に物語を完成させていく。そういうものがつくれたら理想ですね。もちろん、だからといってお客さんに伝わりづらいものになってはいけない。今回の映画でも、エージェントという役割も日本になじみがないことを僕が認識していなくて……。

――森川葵さん演じる、遠藤ひかるのことですね。直純のエージェントとして登場する。

羽住 そう。ラリーに関して素人の目線を入れたかったんですが、彼女にもまたある種のプロとして成長する姿を描きたかったので、スポーツ選手のマネジメントを請け負うエージェントという役割を与えたのですが、編集中に観た人たちから「わかりにくい」という声があがって。あとから、冒頭の説明シーンを足しました。

――監督がプロとして現場で心掛けていることはありますか。

羽住 お客さんにわかりやすい物語をつくり、それでいて飽きさせないこと、かな。劇場に足を運ぶ人というのは、最初からある程度、能動的な興味を抱いている。テーマや予告が気になったとか、好きなキャストが出ているとか。だけど、僕は究極を言ってしまえば映倫(映画倫理機構)さんにも「観てよかった」と思えるような作品にしたいんです。彼らは仕事として、審理するためだけに映画を観るわけでしょう。そういう人たちにもおもしろいと思ってもらえたら、最高ですよね。

――今回の作品も、ラリーファンだけでなくあらゆる“プロ”の琴線に触れるものになっていると思います。

羽住 劇中には、実際のラリードライバーたちのセリフもいくつかアレンジして入れています。そこには彼らのプロとしての魂が宿っている。役者馬鹿、映画馬鹿、ラリー馬鹿……僕は、基本的に馬鹿が好きで、羽住組はスタッフもキャストもみんな「そこまでやらなくても」というくらい己の職分をまっとうする馬鹿ばかり。そういう連中だけが、大きな感動を生み出すことができると思うんです。彼らとともに作品にこめた熱い想いは、お客さまにもきっと、画面を通して伝わると思います。

取材・文:立花もも  写真:干川 修

■映画『OVER DRIVE』

【あらすじ】
スポーツマネジメント会社に勤めるひかる(森川葵)が、突然の配置換えで担当することになったのは、若き天才ラリードライバーの檜山直純(新田真剣佑)。傲慢で素行も悪い彼を支えるのが、兄の篤洋(東出昌大)率いるメカニックのメンバーだった。だが二人の関係はどこか不協和音。篤洋の静止をふりきり、危険をかえりみずアクセルを踏み続ける直純の走りには、過去に理由があるようで……。

監督:羽住英一郎
脚本:桑村さや香
出演:東出昌大、新田真剣佑、森川 葵、北村匠海、町田啓太、要 潤、吉田鋼太郎 ほか
配給:東宝
制作プロダクション:ROBOT
公式サイト:http://overdrive-movie.jp/