売り切れ書店続出! SNSで話題沸騰マンガ『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』制作秘話を聞いてみた!

アニメ・マンガ

2018/7/22

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『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』1巻(松本ひで吉/講談社)

 ふてぶてしいほど我が道をいく猫と、フレンドリーで元気いっぱいの犬。性格が真逆の2匹との暮らしを綴ったコミックエッセイ『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』が、今、Twitterで大人気なのをご存じだろうか? 300万「いいね」を記録するこの作品が、このほど連載に書き下ろしを加えて待望の書籍化がされ、これまた大ヒット中。著者の松本ひで吉さんに現在の心境を聞いた。

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松本ひで吉さん

●ツイッターのライブ感とリプライが楽しい!

―発売直後に大重版。すごい快挙ですね。

 うれしいですけど、びっくりしてます。前に「うちの犬はこんなふうにかわいいよ」とテキストでツイートしたら、それがバズったことがあって。漫画家だし、せっかくなら漫画にして描き直そうと、時間ができたときに始めたんですよね。書籍になるのが決まったのも結構後でしたし、ただただ趣味で描いていた作品なんで。

―今は他に連載作品もあって、本作はTwitterで毎週更新。頭を切り替えて描くんですか?

 基本的にはずっと漫画を描いている状態なんですが、「(連載の)漫画描いて疲れたんで、(Twitterの)漫画描いて休憩しよう」っていうローテーションですね。漫画家って結構そういう人多いんですよ。漫画描いて「疲れた~。漫画でも描くか~」みたいな。全然違うものを描きたくなるんですよね。連載作品は読者を考えて描かなきゃいけないんですが、こっち(犬と猫)は自分の好きなことでいいので、なにも気にせずリラックスして描いてます。

―やっぱり使う脳みそというか感覚は違うんですね。

 どっちも楽しいですが違いますね。連載作品のほうはまずゴールがあって、さかのぼって伏線とかスタートとかきっちり作るんですけど、エッセイはスタートからゴールまでだーっとやっていいので。楽というか、時間の流れが違う感じですね。Twitterは描きたてホヤホヤにすぐ感想がもらえるのですごくライブ感があって楽しいし、リプライをもらうときに「うちの猫は」「うちの犬は」って井戸端会議になって、写真とか送ってもらうのもすごくうれしいです。

―エピソードは全部実話ですよね。事件がおきまくっているんですか?

 いえいえ全然、おこらないですよー。ただ9年間、一緒にいるのでそれなりにストックがありますから。中にはこのネタは前とかぶったなーというのもありますけど、「まあ、かわいいからいいかな」って(笑)。ホントに描くことがないときは「なあ、なあ」って犬と猫にちょっかいを出すことも多いですけど(笑)。

―今回の本はだいぶ描き下ろしもあるんですよね。

 そうなんです。Twitterでも読めるのに本を買ってくださる方もいますから、ほんとうにありがたくて。実は私自身、自分の作品なのにすごく読み返してます。ああ、かわいいなって(笑)。こんなに自分の作品を読み返すことはないですね。でも最近、猫の顔がこわすぎるなと思うときがあって。筆がのりすぎてるんですかね…(笑)。かわいいと思って描いてるんですけど、ちょっと距離をおくと「あ、こわかったわ」って思いますね。

 

(C)松本ひで吉/講談社

●犬と猫には相当助けられてます

―デビュー作から猫や犬をよく描いていたんですか?

 デビューがそもそも動物漫画だったんで最初から動物でしたね。描いていて楽しいし好きなので、関係ない作品でも出すことも多いです。連載中の『ねこ色保健室』は猫が保健の先生というギャグマンガですが、猫っぽい仕草とかにうちの猫のやってることをちょっと参考にしたりしています。

―ちなみに漫画家になろうと思ったのはいつぐらい?

 小学校の頃に描いた漫画をクラスのみんなに「見て見てー」ってまわしたりしていて、中学くらいから投稿しはじめました。漫画家になるというより漫画を描くのが楽しいっていうことの延長で、笑ってもらうのが楽しかったからギャグ漫画を描いていました。とりあえず笑ってもらえたらって。この『犬と猫~』も、そのときとおんなじ気持ちで描いてるところはあります。

―なるほど。2匹はどういう存在ですか?

 相当、助けられてますね。未来のことで不安になったり、過去のことをクヨクヨしたりしてるときに犬がフラフラしてたりすると、「あ、かわいい」ってなるじゃないですか。キュッて現実に戻るっていうか、未来でも過去でもない「今」に戻る。そういうペットたちの存在がすごくありがたいですね。

(C)松本ひで吉/講談社

―余計なものを背負わず、ただそこにいてくれますもんね。

 そうなんですよ。人間はやっぱり頭がタイムスリップしますからね。でも犬とか猫とかはたぶん今しか考えてないし、悩みなんかないですから。犬とか猫って不思議で、描いて自慢したりしても誰も傷つけないし、むしろかわいいって喜んでもらえるすごい存在なんですよね。今回、本が出たお礼にちょっといい爪とぎを買ってあげて、「君たちすごいよ。みんながかわいいって言ってくれてるよ」ってほめてます。たぶんわかってないですけど(笑)。

●何も考えず「たのしー」のが一番!

―この本で二頭飼いしたくなる人も増えるかもしれません。

 よく言われます。世話が倍になる大変さはありますけど二頭飼いは結構おすすめです。うちの猫は小さい頃はもっと弱々しくてかわいい感じだったのが、後からすごく元気な犬が来たらふてぶてしくなって、犬の前ではすごくかっこつけます。とはいえすごく仲良しなのはラッキーでした。2匹が必ずしも仲良くなるとは限らないので。まあ、仲悪い人の話を聞いても面白そうですが。

―飼い主になると、ただ「かわいいかわいい」だけじゃすまなくて、「最期まで面倒をみる」とか責任が生まれますよね。そのあたりはどう意識していますか?

 逃れられないですからね。前の犬は最後、おしっこももらすし、見た目も変わっちゃうしで介護状態になりました。「かわいい子犬」を飼ってたつもりでも、そうじゃなくなっちゃう。でも、その頃には「かわいいから」というパートナーじゃなくなってるんですよね。きっかけは「かわいいから」でも、最期まで一緒に暮らしてたら、「かわいいから」が理由じゃなくなってるんですよね。だから、最期までつきそえるはずだと思います。
「かわいいって理由だけで飼わないで」とも言われますが、私はかわいいから飼うでいいと思うんですよ。かわいくなくなったら捨てるっていう考え方は、もともと動物と向き合ってないっていうか。毎日、しっかり一緒に楽しい時間を過ごしていたら絶対大丈夫。動物病院に連れて行っても行かなくても後悔するし、結局、どんなにしても別れたときは必ず後悔しかないし、満足な死は絶対ないと思います。でも、そういうものですよね。だからとにかく一緒にいて「今」を大事にするっていうか。

―その「今」がいっぱい切り取ってあるのがこの漫画でもありますね。

 前に飼っていた犬の思い出を描いたものがありますが、ずっとモヤモヤしたままでぶん投げる感じで描いたんです。そうしたら「やっぱり最期の印象ばっかりが残ってしまうから、あの子がくれた幸せな時間というのは確かにあるってことを忘れないで生きていこうと思いました」ってTwitterで感想をもらって、「それだよ!」って。今が幸せに感じられることが幸せというか。特になにも考えず「たのしー」っていうのがいいですよね。よく猫と犬にも「楽しいよね?」って話しかけるんですよ。ニコニコしてるんで彼らも楽しいのかなって。動物は教えてくれないけど、だったらいいなって。

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取材・文=荒井理恵
写真=中 惠美子