Oguri(s**t kingz)「ぱっと見るだけで、“あー、楽しいね!”と思っていただけるパフォーマンスをしていきたい。新作『The Library』も、そんなハッピーな舞台になります」

あの人と本の話 and more

2018/8/6

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、人気番組『行列のできる法律相談所』でも世界中から熱視線を浴びる極上のダンスを披露、注目度急上昇中のダンス界のパイオニア的パフォーマンスチーム、s**t kingz(通称・シッキン)のOguriさん。メンバー代表として、ひとりここにいるのは、とある勝負に勝ったから……。普段の読書スタイル、本から得るもの、そして9月から上演される待望の新作舞台『The Library』についてお伺いした。

Oguriさん
Oguri
おぐり●1987年、東京都生まれ。2007年に結成したs**t kingzで米国最大級のダンスコンテスト「BODY ROCK」2年連続優勝。三浦大知のステージを作り続けるほか、振付家としても各々活躍。ミュージカル『JAM TOWN』の出演ほか、宝塚花組公演『BEAUTIFUL GARDEN』の振り付けを担当。
ヘアメイク:早水望華

「他の3人は恋愛小説、選ばないだろうって思ったんですよ。で、唯一、読んだことがあって、自分のなかにずーっと残っていたのが、吉田修一さんの『東京湾景』だったんです」
 9月から上演される2年ぶりの新作舞台『The Library』にちなみ、3都市で開催されたトークショーの目玉企画、シッキンメンバーによるビブリオバトル。舞台は、ストーリーをダンスとアクティングで表現する、シッキンならではの芝居手法、“無言芝居”だが、この時ばかりは4人の喋りが白熱した。横浜・昼の部で開催された会の優勝者の副賞は、単独でこのインタビューページに登場すること。審査員となる会場の人々の気持ちを掴みたいと、恋愛小説をセレクトしたOguriさんは、『東京湾景』で、この権利を見事ゲットした。
「ひとり3分間のスピーチは、めちゃくちゃ緊張しました(笑)。ちなみにこの時、shojiくんは辻村深月さんの『かがみの孤城』、NOPPOが藤田紘一郎さんの『病気にならない乳酸菌生活』、kazukiが白取春彦さんの『頭がよくなる思考術』を選び、観客の方々に向け、プレゼンテーション。セレクトした本にも、メンバーの個性がそれぞれ出ているなぁと(笑)」

 Oguriさんが本を選ぶときのキーワードは、“楽しい”“わくわく”だという。
「道尾秀介さんのミステリーが大好きなんです。“え、そういうことする?”みたいな驚きがどーんっとくる。しかも本じゃなければ絶対にできない仕掛けによって。読後、スカッとするんです。“また、やられた!”みたいな(笑)」

 そうした日々の読書体験は、創作表現の糧にもなっているのだろうか。
「舞台におけるストーリーの展開とか、話の落とし方に活かせないかなということは、読書をするとき、アンテナを張っています。シッキンの舞台は言葉を使わない、本とは真逆な表現手法。だからこそ、本でなくては伝えられないものに触れることで、ダンスでなくては伝えられないものを思考していける部分もあります」
 新作舞台『The Library』――結成10周年の記念すべき“舞台”を図書館にしたのは?
「実はまったくどうして図書館になったのか、メンバーの誰も覚えていないんです(笑)。去年の終わりくらいから4人で話し合っていたんですけど、気付いたら図書館になっていた。それくらいみんなしっくりと来ていたんでしょうね。だって、すごくわくわくする場所じゃないですか、図書館って。そこにある本にはいろんな歴史も詰まっているし、これからのことも書いてある。シッキン結成10周年にふさわしい舞台だとも思いました」

 いい本を匂いで嗅ぎ分ける男、見たこともない便利グッズを大量に保有する男、本の登場人物にいつも恋をしてしまう男、そして図書館にいるのに本を絶対読まない男――仲のいい4人の男たちのストーリーが、不思議な図書館で展開していく。
「いつも通りのシッキンがそのまま出ているような感じを覚えていただけると思います。“こいつら、仲いいんだろうな”みたいな感じで。集まるといつも俺たち、ふざけているだけなので(笑)、その空気感がそのまんま舞台には現れると思います。でもちょっと謎めいたところもあるよ、舞台だからね、という感じもあります(笑)」
 2013年の『THIS SHOW IS s**t』を起点にした“無言芝居”は、一昨年、『Wonderful Clunker―素晴らしきポンコツ―』で初のロングラン公演を達成、全国6都市で約2万人を動員した。
「今、新作舞台をつくっている真っ最中。やりたいことはいっぱいあるんですけど、回を重ねるごとに難しくなってくるというか、前のものを超えていきたいという思いが強くて。上演に向け、そんな煮詰り方もしていますけど、同時にそれごと楽しんでます、すっごくいい感じに。きっと今じゃないと出せないものがあると思うので、それを出せたらいいなと」
 毎度、観客をあっと驚かせ、ハッピーにしてきたシッキンが、この舞台でどんな仕掛けを見せてくるのか、テンションがあがる。
「こういう風に、やりたいことを好きにやらせていただけて、自分たちは本当にラッキーだなって。だからこそ楽しいことをして、お返ししたいなと思っているんです。そして、その楽しさ、新しさは、誰もがすっと入っていけるわかりやすいものでありたい。アーティスティックなものや前衛的なものも素適だけど、シッキンは、ぱっと見るだけで、“あー、楽しいね!”と思っていただけるパフォーマンスをしていきたい。『The Library』も、そんなハッピーな舞台になります。戸外で本を読むような気持ちで、ぜひ観にいらしてください!」

(取材・文:河村道子 写真:山口宏之)

 

舞台『The Library』

舞台『The Library』

演出・振付・出演:s**t kingz 9月12日(水)~11月23日(金・祝) 横浜、仙台、愛知、広島、福岡、大阪、東京の全国7都市で上演。詳細はhttps://shitkingz.jp
●不思議な出来事が日々起こるちょっと変わった図書館。そこに集まる仲の良い4人の男もまた奇妙。ひとり頑なに読まない男がいて……。オリジナル楽曲含め、20曲以上のナンバーで踊り出す、ダンスで魅せる“無言芝居”。2年ぶり待望の新作舞台!