実写映画が公開間近!『ビブリア古書堂の事件手帖』三上延、黒木華インタビュー

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更新日:2019/3/29

篠川栞子役・黒木華インタビュー

 

黒木 華(くろき・はる)●1990年生まれ、大阪府出身。舞台『表に出ろいっ!』で女優デビュー。『小さいおうち』(2014年)で第64回ベルリン国際映画祭最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞、実力派女優として確固たる地位を築く。公開待機作に『日日是好日』『億男』『来る』がある。NHK大河ドラマ『西郷どん』に出演中。

ビブリア古書堂店主・栞子を艶やかにしなやかに演じるのは、実力派女優・黒木華。演者ならではの栞子像を語る

「栞子は本が好きで、人とのコミュニケーションをとるのは苦手な女性ですよね。私も性格的にそういうところがあるので、分かりあえるんじゃないかなと思いながら臨みました」

 そう語る黒木さんもまた読書家で、好きな本は太宰治の『人間失格』だという。

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「主人公のダメさ加減が、読みながら分かる分かる! となります(笑)、太宰治の書くネガティブな部分には惹きつけられます。映画の中に出てくる太宰や漱石の本はほとんど読んでいたんですが、今回、栞子を演じるにあたってもう一回読み直しました」

 古本屋さんの店主役ということで取材もしたそうだ。

「古書組合の方に、お話を伺いました。本を査定するときはどこを見るか、ページの落丁がないか、汚れやごみはないかなどを。本を重ねて縛る方法も教えていただきました。映画の中には出てこない所作であっても、やはり知っておいた方が演技をしやすいんです」

 それは本作に限らず、どんな役を演じるときでも意識していることだという。

「その人物の職業などに関することは、勉強してから臨む方だと思います。ある程度の知識があるかないかで全然ちがってくると思います。今回でいえば古本屋さんの所作であり、登場してくる本を読み直すことでしたね」

 

本に込められている謎も、想いも見ることのできる人

 栞子というキャラクターをどう表現するかは、三島監督と相談して形づくっていった。

「頭を掻く癖や、人の目をちゃんと見ることができないところ、ぼそぼそとした喋り方などの特徴をつくって原作のイメージに近づけようと意識しました。栞子は本に関する話題になった途端に口調のスピードが上がり、人の目をまっすぐに見つめます。普段のときと、スイッチが入ったときのメリハリをつけるようにしました」

 メガネ・黒髪・美人と、ビジュアルイメージが確としてあるキャラクターなだけに、どこまで近づけるか、そしてどこからこだわらないかの按排に悩んだそうだ。

「栞子はすごい美人じゃないですか。私はそうではないので(笑)、見た目ではなくて中身的なものや雰囲気で、彼女という女性がどういう人なのかを見せていこう、と監督と話しあったんです」

 黒木さんは栞子を「本に込められている謎も、想いも見ることのできる人」と語る。

「彼女には共感できる部分がある一方で、理解できないところもありました。たくさん本を読んで、さまざまな登場人物の気持ちを理解しているのに、どうして近くにいる人の気持ちは分からないのか。たとえ言葉にして伝えられていなくても、相手の行動や表情から分かるでしょう、と演じながら思いましたね。特に好意に対して鈍感。でも、それも栞子の不器用な性格の表れかもしれません」

 三島有紀子監督とは、『繕い裁つ人』(2015年)という映画でも共に仕事をしたことがある。その作品では黒木さんの出番は短かったけれど、今回、主演作での再結成となった。

「『繕い裁つ人』のときに、三島監督とはもっと時間をかけてご一緒したかったと感じたので、それが叶ったのがすごく嬉しいですね。三島監督は厳しい方です。カメラのピントや光の加減に徹底してこだわり、けっして妥協されない。作りたい画のイメージが明確にある方なので、そういう意味ではとてもやりやすく、信頼が持てました」

 

栞子は黒木華がやりそう、そのイメージに応えたい

 五浦大輔役の野村周平さんとは初共演となる。

「初対面ということもあって、いい緊張感がありました。栞子と大輔も初対面同士からスタートしてだんだん親しくなっていくので、その過程がうまく重なった感じがします。野村さんは甘え上手というか、監督から『大輔もっとかわいく!』と言われてかわいい仕草をして応えていましたね。年上の女性から好かれるタイプなんだろうなと思いつつ、眺めていました(笑)」

 実は原作の大輔も、たとえば栞子の母・智恵子から「あなたはなんの役にも立たないわね」と罵倒されながらも気に入られている(7巻)。大輔というキャラクターには年上女性に愛でられる要素があるのかもしれない。

「向けられる好意に鈍感な栞子なので、大輔との関係もそうそう恋愛に発展しないだろうと思って演じました。ただ、自分でも気づかないうちに態度で親近感を出していたような気がします」

 栞子に魅せられて意識する大輔と、彼の想いになかなか気づかない栞子。彼らが少しずつ関係性を深めていく様子が、微笑ましくもじれったく繊細に描かれる。
映画本編を観た感想も伺ってみた。

「自分が出ている場面は、やはり冷静には見れないですね。ちゃんと栞子になっていたらいいのですが。現代パートはミステリードラマとして物語が動いていて、過去パートは純文学の映像化みたいでした。東出さんと夏帆さんの悲恋がしっとりと展開されて、映像の色味も本当に美しい。過去と現在が絶妙にリンクしていて一観客として面白かったです」

 現在公開中の作品も待機作も目白押しの状態にあって、この映画に出たことは黒木さんにどんな意味をもたらしただろうか。

「たくさんの方に愛されている小説の主人公を務めさせて頂けることに『ありがたい』と感じました。と同時に古書が持つ魅力と、それを通して過去と未来がつながっている不思議。それらを詰め込んだ映画です。観た後、古本屋さんに行きたくなると思います」

取材・文:皆川ちか 写真:干川 修

ヘアメイク:新井克英 スタイリング:島津由行 衣装協力:ワンピース4万9000円(LOKITHO/問い合わせ先ALPINISME TEL03-6416-8845)

映画『ビブリア古書堂の事件手帖』

映画『ビブリア古書堂の事件手帖』場面写真


原作:『ビブリア古書堂の事件手帖』メディアワークス文庫 監督:三島有紀子 脚本:渡部亮平、松井香奈 主題歌:サザンオールスターズ『北鎌倉の思い出』 
出演:黒木 華、野村周平、成田 凌、夏帆、東出昌大ほか 配給:20世紀フォックス映画×KADOKAWA 
11月1日(木)全国ロードショー
映画公式サイト:https://biblia-movie.jp/

亡き祖母・絹子の遺品から夏目漱石のサイン入り『それから』を見つけた大輔は、本を販売したビブリア古書堂を訪れる。若き店主の栞子はこの本に込められた絹子の秘密を解き明かす。さらにその秘密は、栞子所蔵の太宰治『晩年』にまつわる謎とつながっていた。