読者に寄りそう“共感力”が話題!今までのオカマのイメージを覆す、BSディムとは?

暮らし

公開日:2018/11/23

 誰にでも少なからず、仕事や恋愛、家庭の悩みはあるはず。そんな時、みなさんは、誰に相談しますか? 家族、友達、それも先輩やカウンセラー、占い師? でも身近な人にも相談できず、一人で悩みを抱え込んでいる方も、結構いるのではないでしょうか。そんな中、いま、「自分の痛みがわかってもらえた!」「不安が解消され、前向きになれた」など、迷える大人たちの新しい救世主がTwitterを中心に話題になっています。SNSでのフォロワー数78,000人超と、絶大な信頼を得ている人物こそ、「西のオカマ」ことBSディムさんです。

 BSディムさんは、自らを「オカマ」と呼び、連日、TVで見かけるような明るくて、強くて、強烈なインパクトを残すようなオネエとは一線を画す存在。女装をして生活しているわけでもなく、見た目はオッサンで、昼間は中小企業で営業課の係長として上司と部下に挟まれ、肩身の狭い思いをしながら働く、どこにでもいるサラリーマン。しかし、ひとたびネオン街に繰り出せば、オカマ言葉を繰り出すオカマに。性格はとにかく暗くて、ネガティブ。口癖は「しんどい」で、常に「しんどい」「しんどい」を連呼する隠れオカマなんです。

 今回は、そんなBSディムさんにインタビューを敢行。なぜ、しんどいのに読者の悩み相談を続けるのか、さらには、謎多きBSディムさんの素顔にも迫ってみました。

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相談者を抱きしめずにはいられない!

――そもそも、なぜ、悩み相談をはじめたのですか。

BSディム氏(以下、ディム) お悩み相談の回答者って、もともと明るく強く前向きに生きている人だったり、苦難を自分の力でちゃんと乗り越えられた人だったりがほとんどなのよ。だけど、強者から弱者への助言って、問題の解決に強者と同じ体力と気力を要求されることが往々にしてあるのよね。同じような苦悩を抱えた誰かが、ただそっと寄り添ってくれるような、心を落ち着けられる場所ってなかなかないの。そんな場所を作れるようにと、明るくもないし強くもないネガティブなアタシを、とある編集者さんが指名してくれたのがはじまりよ。

――締め切りに追われ20キロも太ったそうですが、なぜ読者からのお悩みに親身になって答え続けるのですか。もっと、しんどくなりませんか。

ディム  いつも「突き放して、適当にあしらってやるわ!」と鼻息を荒くしながら回答を書きはじめるのだけど、書いているうちに、心の中で相談者を抱きしめずにはいられなくなってしまうのよ。困って弱りきっていることが相談の文面から伝わってくると、どうしても他人事にはできないのよ。しんどくなるけど、相談者のお悩みには共感できる部分も多いから、回答は相談者だけでなくアタシ自身に向けても書いている、という面があるの。相談者とアタシ、双方が「今後しんどくならないようにどうすべきか」という予防策を講じているのね。

――ディムさんには、仕事や恋愛だけではなく、「太りすぎてしんどい」など全方位からの悩みが寄せられますよね。

ディム  お悩みの中には「アタシから見れば羨ましい状況だけど……」と思うものもあるのだけど、本人は嫌味でも何でもなく真剣に悩んでいて、人の幸不幸はひとつの物差しでは測れないなと、つくづく思うわ。それに、悩みそのものや、悩んでいること自体は否定しない。「そんなことで悩むな」とは絶対に言わないわ。

――BSディムさんは、「なんでもオカマに頼るのは”終わりの始まり”」とおっしゃいますが、それでも悩みを抱える人がBSディムさんに救いを求めるのはどうしてだと思いますか。

ディム 身近な人に打ち明けられない悩みは、同性に相談すれば上下関係が生まれ、異性に相談すれば忖度があるように思える。そんなときにちょうどいい相手がオカマなのだけど、ハイテンションで毒気のあるオカマに相談したところで、自分が傷ついてしまう可能性があるのよね。よって、ローテンションで毒気のないオカマであるアタシに相談をするのではないかしらね。

――読者からは、「こんな言葉をもらえて嬉しい」、「BSディムさんの回答に涙が出ます」などたくさんの声が届いています。どうしてそんなに寄り添うことができるのですか。

ディム アタシ自身がたくさんの苦悩を抱えているからじゃないかしら。「なにかに悩んでいる」という時点で、すでに相談者との共通点があるわけだから、共感されやすいのかもしれないわね。それに、誰かに笑ってもらいたい。こんなどうしようもない孤独なオカマの人生、笑ってもらう以外にどう肯定すればいいのかわからないから。

――BSディムさんに悩み相談をすることで、悩みを抱えていた人がどんな風になってほしいですか。

ディム 「明日だけでも、なんとか生きてやり過ごしてみようか」と思っていただければ万々歳よ。万事解決して晴れやかな気分になってくれなくていいから、たった一日だけでも、しんどさが軽くなってくれればいいなと思うわ。

生きる理由を失った、ただ生きるだけの哀れなオカマよ

 相談者と同じように悩み、しんどさを抱えているからこそ紡ぎ出される言葉の数々。そのアドバイスのおかげで、読者たちは、気持ちが楽になったり、励まされたり、BSディムさんの優しさに包まれていくのですね。このように多くの人たちから慕われているBSディムさんとは、いったいどんな方なのでしょうか。

――サラリーマン生活について教えてください。サラリーマンとオカマとしてのバランスは。

ディム 本当はもっとオカマとしての時間を増やしたいとは思うけど、おまんまを食っていくためには、男の顔で生活する時間が今くらいは最低限必要なのよね。転職も常々考えていて、いい条件の会社があるならすぐにでも移りたいわ。この不平等な世の中を渡り歩いていくためには、貧しい愚鈍な人間ほどキャリアアップが必要だからね。

――サラリーマンとして大切にしている点は。

ディム 常に期待を超える成果を出し続ける努力と、それらの成果をなるべくサボりながら出すための努力を怠らないようにしているわ。

――「しんどいオカマ」として、どんなことに日々苦労しているのですか。

ディム 「オカマだってしんどい」ということを理解してもらえないことかしら。オカマというだけで毒舌を吐いて女性を敵視して、ストレスフリーで生きていると思われてしまうことがよくあるのよね。例外もあるのだと説明することに苦労しているわ。

――たまった”しんどい”はどうしているのですか。

ディム SNSで愚痴を言うか、オカマ仲間に愚痴を言うか、人のいない公園でパンダの遊具に向かって愚痴を言うことで解消しているわね。

――BSディムさんご自身の悩みは誰に相談しているのですか。

ディム 誰にも相談しないわね。相談する代わりに、誰かに延々と愚痴を聞いてもらうわ。

――これまでのBSディムさんの人生を客観的に振り返ってみて、もっとも”しんどかった”こととは?

ディム 夢を叶えられなかったことかしら。大病を患っていた時期があって、諦めざるを得なかったのよね。生きる理由を失った、ただ生きるだけの哀れなオカマよ。アタシの人生、しんどくなかったときがないわ。温泉でマッサージを受けたときですら、急な腹痛で脂汗が止まらなくなったくらいだし。

――皆さんからのお悩みを聞き始めて、BSディムさんご自身はどう変わりましたか。

ディム 以前は些細なことで落ち込んでいたのが、毎日のように多種多様でヘビーなお悩みをいただくおかげか、ちょっとやそっとのことでは動じなくなったし、悩まなくなったわね。

――この度、本を出版されましたが、サラリーマンを辞めて、エッセイストになる気はありますか。

ディム 巨万の富を築けるならなりたいわ。

――BSディムさんの考える”幸せ”とは。

ディム 人生は生きる目的を探し求めるための長い旅。それが見つかった人は”幸せ”よ。

”夢は叶うもの”とか”諦めないで”という根拠のないスローガンよりも響くBSディムさんのリアルな言葉の数々。その裏には、ご自身の夢を叶えることができなかった実体験があったからこそ。現実と理想の間で揺れ動く今を生きる人たちの気持ちを誰よりも理解し、優しく背中を押してくれるBSディムさん。SNSで話題になったり、本を出版しても、遠いところにはいかずに、堅実にサラリーマン生活を続け、心地いい距離感で、些細な悩みに常に耳を傾けてくれる。その現実的なところや親近感こそが、BSディムさんがこれだけ多くの人たちから受け入れられている理由なのではないでしょうか。今の時代に必要なのは、そんな親しみやすい”となりのオカマ”。悩みを抱えている人はもちろんのこと、誰もが、BSディムさんのお悩み相談集「しんどいオカマのちょっと一杯いかがかしら? ~人生の不安を解きほぐす、オトナのためのお悩み相談~」を読めば、いままで味わったことのない温もりを感じることができますよ。

取材・文:松﨑桃子
イラスト:shiroika