「どんなに大きな失敗をしても最悪ネタになる!」「コミケ童話」おのでらさんの失敗を笑いに変える力

アニメ・マンガ

2018/12/29

 2年前、「コミケ童話」シリーズの1作目となる「つるの恩返し」をツイッターに投稿して以来、“オタクあるある”が圧倒的な共感と笑いを集めているマンガ家・おのでらさん。今回は、新巻『コミケ童話全集2』(KADOKAWA)の発売を記念し、毎回読者を驚かせている話の作り方や、ネタが生まれる日々の生活などについてお話を聞いてきた。

おのでらさん(@onoderasan001

――『コミケ童話』といえば、毎回有名な童話と“オタクあるある”の絶妙な組み合わせが読者から支持されています。そのアイデアはどこから生まれてくるのですか?

おのでらさん:いくつかパターンがあります。ひとつは、自分が同人活動をしていて「こういう人がいたらいいな」と思ったキャラクターから話を作るパターンです。例えば、あらゆる手段を使って好きなマンガを製本にこぎ着ける「神おっさん」は、まさにそういう存在ですね。

 あとは、同人誌を作るのってどうしてもお金がかかるので、ネットでいい漫画を描いていても本は出さないという人がいます。そういう人に「自分が印刷代出せれば」と思うことがあるんですけど、もしそれを突然DMで送ったらキモがられる…(笑)。そういう経験が石油王「ドチャクソ・アブラデル」になったりしています。

――ご自身の経験から作られているのですね。最近、身近なことで「今度ネタに使えそうだ」と思ったエピソードはありますか?

おのでらさん:最近、原稿をやってるときにどうも集中力が落ちたんじゃないかと思うようになりました。昔は受験勉強を一日中やっても平気だったのに、最近は3時間原稿をやると疲れてしまうんです。液タブ(注:液晶タブレット)だから目が疲れてるのか、マジで集中力が落ちてるのか…。理由がわからなかったので、試しにゲームならどれくらい集中が続くのかをやってみました。そしたら30時間くらいぶっ続けでやってもまだ止まらなくて、集中力が切れてるわけでも目が疲れてるわけでもないとわかりました…。単純に原稿をやるときもゲームと同じくらい脳内に快楽が出せれば30時間ぐらいやれるんだなと思いながら35時間くらいで寝たんですけど、これはエピソード自体がおもしろいというよりも、こういうことやって編集にシバかれるキャラを書いたらおもしろそうだなと(笑)。

――普通の人なら「ゲームをやりすぎた…」と落ち込んでしまうところですよね。失敗談を笑い話やマンガのネタに変えていく姿勢は、どこで培われたのですか?

おのでらさん:昔「mixi」で日記を書いていたときに養われたものだと思います。たとえ何かで失敗したとしても、SNSに書けばネタになって、みんなから「いいね」がもらえて“おいしい”わけです。『コミケ童話』の1巻に収録されている「マッチ売りの漫画」でも、「最悪ネタになる」精神を持った女の子の話を描きました。

 今日のこの取材も、待ち合わせ時間を勘違いしていてタクシーに6500円も使ってしまいました(笑)。でも、その瞬間に「これはひとつネタになるな」と思うわけです。そこで6500円を払ったことで、僕はもうその話ができるし、高速を使えば家からKADOKAWA(注:当日の取材場所)まで30分で来られることも分かった…。トータルで見たらプラスになるように考えるので、あんまり悲観的にはならないですね。

――すごくポジティブな考え方ですね。作品の中に出てくるギャグも、ポジティブなものが多いですね。誰かをバカにするような嫌な人が出てこない。

おのでらさん:そうですね。これは自分の趣味なのかもしれないですけど、「俺はこれが嫌いだ」っていうタイプの笑わせ方よりも、「実はこれ俺めちゃくちゃ好きなんだよね」って言って笑いを取る方が好きなんです。例えば、電車でのマナー違反なんかをディスるマンガは、たいていの読者が共感できるし、日々のストレスのガス抜きになる、という意味で必要です。ただ、好きな人が半々とか6:4くらいでいるコンテンツをネタにするなら、中途半端な知識でディスるよりも、気持ち悪いぐらい調べて褒める側に転じた方がおもしろいと思うんですよ。

――まさに、VTuber「輝夜月」のファンたちの思いを描いた「輝夜月ガチ勢の日常」(現在、星海社「ツイ4」にて連載中)にも通ずるお話ですね。作品を描くにあたって、おのでらさん自身も動画は何度も見ているんですか?

おのでらさん:もちろんです。(手帳を取り出しながら)輝夜月の動画は第1回からすべて3〜4回は視聴して、自分で全動画のレビューを書いています。動画の質がどうだったか、他の人にすすめられるかどうかなどをまとめ、マンガでどのネタを使うかを考えています。作品の中で、屋久島というキャラクターが初心者におすすめの動画を提案する話があるんですけど、そういうキャラクターを描く以上、作者がいちばん“ガチ勢”にならないとファンには納得してもらえない。「ガチ勢が選ぶとしたらこれだろう」くらいの意気込みで描いています。好きな回は台詞の暗唱もしてました。

――『コミケ童話』「輝夜月ガチ勢の日常」は、どちらもオタクを題材にしたコメディ作品ですが、今後別ジャンルに挑戦してみたい気持ちはありますか?

おのでらさん:とりあえず、コミケネタに縛られないでギャグ漫画を描いてみたいです。ギャグ以外のジャンルでやりたいのは、『カイジ』みたいな頭脳バトル系と、他の人が書かなそうなヤバいキャラしか出てこないラブコメ。今考えているのは、公園の滑り台で寝ている女の子と、紙飛行機を飛ばすことが趣味の男の子の話です。僕自身が一時期公園で寝ていた経験があるので、ベンチよりも滑り台が寝やすいことを知ってるんですよ。そのことを女の子にしゃべらせたいですね。

――公園の滑り台で寝てる女の子…気になりますね(笑)。では、最後に『コミケ童話』読者の皆さんに一言お願いします。

おのでらさん:まず、1回読んで楽しんでくれたらうれしいです。あとは、コミケの時期に読み返してみてほしいですね。適当なページ開いてそこの用語集読んでもらえれば、コミケがもっと楽しめるようになっています。ふと思い出したら読み返してみてください。

文=中川凌