河原雅彦「レキシ好き、舞台好き、歴史好き…すべてのファンが楽しめるエンタメ作品を一番の目標にしています」

あの人と本の話 and more

2019/2/11

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、3月より上演するミュージカル『愛のレキシアター「ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ』で演出・脚本を手がける河原雅彦さん。大ファンだと公言するレキシの楽曲を、どうミュージカル化するのか。その制作の裏側をお聞きしました。

河原雅彦さん
河原雅彦
かわはら・まさひこ●1969年、福井県出身。92年、「HIGHLEG JESUS」を結成し、舞台・音楽活動を開始。2002年の解散まで全作品の作・演出を手がけた。その後は舞台演出に重きを置き、活動。06年の『父帰る/屋上の狂人』では読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞。代表作に「ねずみの三銃士」シリーズなど。

「日本のいろんな歴史を題材にした歌詞をキャッチーなメロディに乗せて歌にしている。これは池田貴史さんの発明だと思うんですよね。その歌詞も、史実をユーモアな視点で切り取り、現代にもリンクする人間ドラマとして浮かび立たせるというインテリジェンスに溢れている。いつか、レキシの楽曲でミュージカルを作ってみたいと思っていました」

 そう話すのは、演出家・脚本家・俳優として活躍する河原雅彦さん。レキシとは池田さんのソロユニットであり、別名義でもある。3月からはじまる舞台『ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ』は、そのレキシの曲で綴るオリジナルミュージカルだ。気になる内容はというと、肩書きに囚われ過ぎた人生に煮詰まったニートな男とオタクな女が、様々な日本の歴史に触れることで次第に心を開き、やがて“愛の始まり”を知る物語になる、とのこと。

「ネガティブな人間が徐々に成長していくストーリーにしたいと思っていて。そんなときに出会った一冊が、今回僕がおすすめした『人生はあはれなり…紫式部日記』でした。レキシの代表曲でもある『SHIKIBU』を劇中でも使う予定なのですが、そのために紫式部に関するいくつかの本を参考として読んでいた中にありました。これがね、本当に素晴らしい!(笑)」

 紫式部といえば『源氏物語』の著者。しかし、彼女がどんな性格で、どんな日常を送っていたかを知る人は少なくないだろう。その実態は、嫉妬の塊ともいえる“こじらせ女子”だった。

「自身の半生を日記として綴った『紫式部日記』をわかりやすくマンガにしたものなんですが、とにかくネガティブ思考なんですよ(笑)。誰もが憧れる宮廷に仕えることになっても、“自分はここに合わない”と感じ、出仕してすぐ5カ月も引きこもったり。あるときは、庭園の池で泳いでいる水鳥を見て、“のんきそうに見えるけど、地に足がつかない人生を送っている水鳥って大変そう。私も同じだわ”って思ったり(笑)。でも、そこに共感を覚えるし、歴史の裏側にある普遍的な人間模様が垣間見えるのも面白い。それに、こうして視点を変えることで、がぜん歴史自体が面白く感じられるようになるのは、レキシの楽曲にも通ずるところなんですよね」

 現在は公演に向けての下準備の段階。そこで、少し進捗状況をうかがってみた。

「本当に名曲が多いんです。ですから、いちファンとしてはできるだけたくさん使いたくて。そしたら、通常のミュージカルに比べて、かなり多めの曲数になってしまいました(笑)。ただ、この演目の場合曲数が多いということは、時代がぴょんぴょん変わる都合、着替えやらなんやらなにかと負担を背負わせることにもつながるわけで……。きっと、稽古初日の顔合わせでは、『ごめんなさい』という謝罪から始まると思います(笑)」

 また、作品を作る上で一番の目標にしているのは、「誰もが楽しめるエンターテインメントにすること」と河原さん。

「今回はレキシファン、演劇ファン、歴史ファンといろんな層のお客さんがいらっしゃると思います。その全方向に向けた舞台にしていくつもりです。例えば、レキシのライブでは『狩りから稲作へ』という曲でお客が稲穂を振るのが定番なんですが、この舞台でもやっぱり振ってもらいたいじゃないですか。いや、振ってもらわないと僕的にレキシの曲で舞台を作る意味がない。でも、演劇・歴史ファンはそういう文化を知らないわけで。それでも、自然とみんなが一緒になって振りたくなるようにしていきたい。そんなエンタメ作品になればなと思っています」

 そして、「できれば、レキシを知らない方は少しでも代表曲を事前に聞いてきていただければ」とも。

「予習をしていかないと楽しめない作品なんて、本当のエンタメじゃないと思うし、僕自身もあまり好きじゃないです。でも、今回ばかりは曲を知ってから劇場に来ると、より楽しんでいただけると思います。もちろん、この『人生はあはれなり…紫式部日記』を読んでくるのもおすすめします!」

(取材・文:倉田モトキ 写真:干川 修)

 

ミュージカル『愛のレキシアター「ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ」』

ミュージカル『愛のレキシアター「ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ」』

原案・演出:たいらのまさピコ(河原雅彦) 上演台本:たいらのまさピコ、大堀光威 音楽:レキシ 出演:山本耕史、松岡茉優、佐藤流司、井上小百合、藤井 隆、八嶋智人ほか 3月10日(日)よりTBS赤坂ACTシアターほかにて上演 
●ロック、ファンク、ラップなど多彩な音楽に乗せて日本史を謳うレキシの音楽を、演劇界の奇才・河原雅彦が舞台化。日本の歴史とラブストーリーを組み合わせた、予測不能のオリジナルミュージカル。