『最高の生き方』ムーギー・キム対談【第2回 山極壽一】ゴリラに学ぶ幸福論――力を誇示せず、触れ合いを重んじる

暮らし

2019/4/7

 2019年3月末に新著『「あれ、私なんのために働いてるんだっけ?」 と思ったら読む 最高の生き方』を上梓した、ムーギー・キム氏。本書の中では、いわゆるエリート職に就きながらも働きがいや生きがいについて悩むビジネスパーソンの悩みに応えるべく、霊長類学・宗教学・哲学・心理学・脳科学の第一人者とともに、「価値を実感する生き方」を多元的に論じている。自らも多様なグローバル企業で活躍し、国際的ベストセラーとなった『最強の働き方』『一流の育て方』の著者としても知られるムーギー氏が、3部作完結編『最高の生き方』の真髄を本連載でお届けする。第2回は本書の第3章に登場する霊長類学者で京都大学総長の山極壽一氏に、ゴリラと人間を比較することで見えてくる「霊長類としての人間」の幸福の本質をうかがった。

来るもの拒まず、去るもの追わずの美学

ムーギー・キム氏(以下、ムーギー) 人間はもともとゴリラやチンパンジーと同じ霊長類ですが、知能が発達して400CC程度だった脳容積が3倍ほど大きくなりました。そのため生物としての本質的な性質から乖離した、無理のある生き方をしている部分もあるのではないか?と思うのですね。

 そこで、もともと霊長類である人間の幸福のために必要なことは何なのか、ぜひ山極先生に伺いたいのですが。まず、先生がゴリラに興味を持った理由を教えていただけますでしょうか?

山極壽一(以下、山極) それはね、類人猿のなかでゴリラだけが人間を超えていると思えるからです。

ムーギー それは、どういうところで?

山極 抑制力だね。

ムーギー 性欲の衝動にまかせてメスを襲わないからでしょうか?

山極 いや、強いのに自分の力を行使しないのです。これは最大の美学ですね。

ムーギー ゴリラというと、胸を叩くドラミングをしたりして、力を誇示しているイメージがあるのですが、そうではない、と。

山極 全然。もちろん外敵に向かう時は、強大な力を発揮するわけですが、普段はすごくソフトです。そのメリハリが効いているから、美しく見えるんだね。

ムーギー ニホンザルは勝ち負けでリーダーを決めますが、ゴリラはメスたちにサポートされたオスがリーダーになると、先生の本にも書いてありました。なぜゴリラはそれほどフォロワーシップを大事にするのでしょうか?

山極 構えの美しさ。許容力だね。ゴリラは一夫多妻で、「来るもの拒まず、去るもの追わず」なんですよ。だから、メスは自由にオスの間を渡っていけるわけ。