美味しくて泣ける!日本最大級の新人賞・電撃小説大賞『ふしぎ荘で夕食を~幽霊、ときどき、カレーライス~』村谷由香里インタビュー

小説・エッセイ

2019/5/10

『君は月夜に光り輝く』『ちょっと今から仕事やめてくる』など映像化も相次ぐ日本最大級の新人賞・電撃小説大賞。本年度、応募総数4843作品の中で頂点に輝いたのは、美味しくて泣ける幽霊ごはん物語だ。ひなびたシェアハウスを舞台に次々と起きる怪異現象、やがてそれらの〈不思議〉は、切なくも温かい感動へと着地する――。

村谷由香里さん

村谷由香里
むらたに・ゆかり●山口県出身、福岡県在住。学生時代より執筆活動を開始して、2018年、『ドミトリーで夕食を』で第25回電撃小説大賞〈メディアワークス文庫賞〉を受賞。受賞作を改題・改稿した本作で小説家デビューを飾る。

 

書きながら、テーマは〈家族〉なのだと気づいていった

 第25回目を迎える日本最大級の新人賞・電撃小説大賞。応募総数4843作品の中から頂点となる〈メディアワークス文庫賞〉を受賞した『ふしぎ荘で夕食を~幽霊、ときどき、カレーライス~』が、現在大好評発売中だ。

 家賃4万5千円のシェアハウス深山荘では、怪異現象が日常的に発生。だけど大家さんの孫娘・夏乃子の作る美味しい料理が、あらゆる事件や出来事を円満に導いていく。キャンパスライフとファンタジー要素、そしてシズル感に充ち満ちたごはん小説だ。なんでも村谷さんの学生時代の経験が基になっているという。

「大学時代に一人暮らしを始めたんですが、毎日のように友だちが遊びに来ていたんです。みんなでわいわい料理したり、食卓を囲んだりして、まるでシェアハウスみたいな感じでした。そのときの思い出を物語にしたいな……という思いから本作が生まれました」

 料理面で心がけたのは「冷蔵庫の中にあるもので作るイメージ」だったそう。

「各章の話に映える料理を考えていきました。特に第三章に出てくる餃子とカレーは、みんなで作って楽しい料理は何だろう? という発想から思いついたものです。作中で浩太も語っていますが、私自身、家で作って食べる餃子はとても美味しいと思うんです」

 大学八年生の残念イケメンな先輩、児玉さん。瞑想を嗜む新入生の沙羅ちゃん。美人で料理上手だけど、実は〈バカ舌〉の夏乃子さん。語り手である浩太の周囲には個性的な人物が集まっている。

「この子たちにはどんな背景があるんだろう、一箇所に集めたらどんな化学反応を起こすんだろうと考えながら各キャラに肉づけをしていきました。たとえば夏乃子は味覚が分からないという設定ですが、それは子どもの頃に母親がいなくなったので……という具合に」

 母に捨てられた彼女が、深山荘の面々(幽霊含む!)に美味しいごはんを作るうち、母親的存在になっていくのが微笑ましくも切ない。

「見方によっては皮肉めいているかもしれませんが、それによって夏乃子の心も癒えていくのではないだろうかと思ったのです」

 夏乃子の変化に象徴されるように、読み進めるうちに〈家族〉というテーマが浮かび上がってくる。

「最初はそれを主題にしようという意識はなかったんです。書き進めるうちにキャラクターたちが自然と導いてくれました。一緒に生活をして、美味しいごはんを食べられる場所が〈家庭〉であり、そこに集まる人たちが〈家族〉なのだと。書きながら私自身がそういうことに気づいていきました」

取材・文=皆川ちか 写真=川しまゆう子

 

『ふしぎ荘で夕食を~幽霊、ときどき、カレーライス~』

『ふしぎ荘で夕食を~幽霊、ときどき、カレーライス~』
村谷由香里 メディアワークス文庫 630円(税別)
大学二年生の浩太が暮らすシェアハウス「深山荘」は、オンボロな外観のせいか心霊スポットとして噂されている。暗闇に浮かぶ人影や怪しい視線、謎の紙人形……様々な怪異現象に加えて住人たちも個性派ぞろい。ある日、浩太は新入生の沙羅の秘密を知ってしまい――。

『ふしぎ荘で夕食を ~幽霊、ときどき、カレーライス~』特設サイト
メディアワークス文庫公式サイト