現役の酪農従業員が描いたリアルな牛マンガが一冊に!–作品に込められた思いとは

マンガ

公開日:2019/7/3

『毎日、牛まみれ 牛が好きすぎて酪農してます!』(牛川いぬお/KADOKAWA)

 ふだんの食卓に何気なく並んでいる牛乳。健康に欠かせない食品のひとつですが、お乳を出す牛や、生産者の人たちの存在を考えてみたことはあるでしょうか?

 現役の酪農従業員である牛川いぬおさんが描いた『毎日、牛まみれ 牛が好きすぎて酪農してます!』(KADOKAWA、6/20発売)では、牛の習性や仕草、「牛飼い」の奮闘のようすをマンガで知ることができます。作品に込めた思いを、インタビューを通して聞きました。

 実は牛川さん、もともとは非農家の家で育ち。旅行先で闘牛を見て、そのたくましい姿や優しい瞳にとりこになったそう。

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「実際に目の前で見て、一目惚れで好きになりましたね。『私の人生の中に牛がいてほしい』と、家族の大反対を押し切り、研修を受けて転職しました。家族からは転職後もしばらく、別の仕事に就くよう言われました。農業に関わっている人は他に誰もいなかったので」

旅行先の徳之島で牛を間近に見て、とりこに

この後、直感的に酪農業への転職を決めたそう

 小さい頃から絵を描くのが趣味だった牛川さん。転職して数年たち、大好きな牛のことを知ってもらったり、同業者と交流がしたいと、ツイッターで牛のペン画のイラストやマンガを投稿するように。マンガがバズってWEBニュースに取り上げられるほどになり、今回の書籍化につながりました。

「牛をどう魅力的に描くか試行錯誤しました。マスコットやキャラクターのように、省略して描くことはせず、リアルに描きたいというのがありました。リアルでありつつも、かわいくて親しみを持ってもらえる感じを出すにはどうすればいいか苦労しましたね」

作中のリアルな牛たち

 ほかには、「これまではしめ切りに追われて絵を描いたことがなかったので、スケジュールのプレッシャーがかなり苦しかったです。マンガ家さんの『しめ切りが辛い』という気持ちが『なるほどこういう感じか』とちょっと分かった気がして、嬉しくもありました」

 牧場での業務は朝6時半から。出勤前に早く起きて描いたり、休憩時間や勤務後に時間を割いて、ネームやペン入れに勤しんだ牛川さん。全部のページを描き終わったときは「達成感はありましたが、読んだ人に喜んでもらえるかという不安があった」といいいます。

 特に思い入れが深いのは、エピローグ。自分の育てた牛が肉になり、地元の小学校の給食に使われたエピソードを描かれています。「畜産という仕事の根っこの部分に気づかせてくれた経験でした。自分の仕事が、誰かの成長や生きていくことにつながっているんだと」

エピローグの一場面

 最後に、今後やりたいことを伺うと、「描きたいものはたくさんあるので、マンガは引き続き描き続けたいです。それと、いつか自分の牧場を持つのが夢です」

 牛川さんの「ウシ愛」がたくさん詰まったこの作品。ペットではない経済動物を育てる葛藤に、胸が締め付けられる話も盛り込まれており、ぜひじっくり読んでほしい一作です。