《GA文庫大賞》大賞作『処刑少女の生きる道 ―そして、彼女は甦る―』佐藤真登インタビュー

小説・エッセイ

2019/7/5

 ライトノベルファン待望の本格異世界ファンタジー!〈処刑人〉の少女と〈迷い人〉の少女。殺す側と殺される側の必然の出会いは予期せぬ友情へと展開する――。殺伐とした世界を生き抜く少女メノウと、彼女を取り巻く個性豊かな女性たちが織りなす生と死のドラマ。《GA文庫大賞》7年ぶりの大賞作が満を持してここに登場!

『処刑少女の生きる道 ―そして、彼女は甦る―』イラスト

佐藤真登
さとう・まと●東京都在住。2018年、第11回GA文庫大賞にて『処刑少女の生きる道』が《大賞》を受賞。他作品に『ヒロインな妹、悪役令嬢な私』(主婦と生活社)やヒーロー文庫『嘘つき戦姫、迷宮をゆく』(主婦の友社)のシリーズがある。

 

 数々のヒットシリーズを輩出するライトノベルレーベルの最高峰、GA文庫が主催する新人賞《GA文庫大賞》。全世界累計1200万部超えの大ベストセラーとなった『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』以来、応募総数1359本の中から、7年ぶり2作目となる大賞作品が現れた。

 なによりも冒頭のインパクトが強烈だ。

 異世界に召喚された男の子が出会った、自称・神官の美少女。彼女の導きで 〈迷い人〉がその身に宿すという能力“純粋概念”を発動させ、いざこの世界の冒険者となって活躍しよう!と決意したところで、その美少女に無惨にも殺されてしまう。そう、主人公は召喚された男子ではなく美少女のほうだったのだ。

 彼女――メノウの正体は、異世界である日本からやってくる〈迷い人〉を処分する〈処刑人〉だ。その新たな標的であるアカリに接触し、冷徹に任務を遂行したのだが、殺したはずのアカリは彼女の能力により蘇ってしまう。不死身のアカリを完全に殺すため、なぜか自分を信頼しきっている彼女と共に旅に出るのだが……。

「殺伐とした容赦のない話を書きたい」という思いから本作を構想したと佐藤真登さんは語る。

「言ってしまえば中二病チックな(笑)、スパイファンタジーのような世界です。〈迷い人〉を日本人限定としている点をはじめ、これまで多くの異世界ものの作品が積み上げてきたこのジャンルのいいところを踏まえつつ、そこに自分のオリジナルなものをプラスした世界を作ろうと考えました」

強いけれど脆い。それは変わる余地があるということ

 3つの身分が存在するこの世界は、はるか昔に〈迷い人〉の能力によって壊滅的な厄災を受けた歴史がある。再びその悲劇が起こるのを防ぐため、〈迷い人〉は見つけ次第、殺す必要があるとされている。しかし汚れ仕事を引き受ける〈処刑人〉は、人々から忌み嫌われている。メノウはそんな職に就いているのだ。

「殺伐とした世界にふさわしい主人公として〈処刑人〉としました。また、これはメノウを追い詰める設定でもあります。彼女は任務に忠実で、使命を完璧にこなす反面、自分のしていることをちょっと辛いとも思っている。強いけれど脆いんです。でも、脆いということは変わる余地があるということでもあるのです」

 これまでに〈処刑人〉として多くの〈迷い人〉を葬ってきたメノウ。そんな彼女のペースを崩すのがアカリだ。

「天真爛漫でちょっと天然なアカリは、ライトノベルの記号的なキャラクターとして作ろうと考えました。ライトノベルというのはキャラクターの記号性がとても重要で、外せない要素だと思うのです。なのでアカリは敢えて記号的な人物として形作り、なぜこんなに天真爛漫なのか? どうしてメノウに絶対的な信頼を寄せているのか?といった読者の方が読んでいて感じるであろう疑問に答えるようなアカリの内面エピソードを、物語の進行と結びつけて書き加えていきました」

女性同士の友情や関係性を突き詰めていきたい

 一見記号的、しかして複雑な奥ゆきをもつキャラクターはまだまだいる。メノウを先輩と慕う〈処刑人〉補佐のモモ。悪党を成敗する旅を続ける姫騎士アーシュナ。メノウを自らの後継者として教育した導師・陽炎。主に仕える第一身分のトップである大司教・オーウェル。

 主要人物は全て女性であり、本作は女たちの闘いや各自の生きざま、そして死にざまを追体験する物語ともなっている。なぜ女性で固めたのか。その意図を作者は「女性同士の間に流れる感情や友情を描きたかった」と明かす。

「かわいい女の子を書きたい!という欲求ももちろんあります(笑)。それと、女性を主人公にした話の中に男性キャラを出すと、どうしても恋愛展開が期待されてしまいますよね。だけどこの作品にはそうした異性間の恋愛関係よりも、女性同士の関係性を突き詰めていく方が合っているのではないかと思って」

 関係性はふれあううちに変化する。旅を通してメノウは次第にアカリに心を許していき、〈処刑人〉としての自分自身にゆらぎを感じる。そんなメノウを案じるモモはアカリへの憎悪を深め、不可思議な三角関係(?)の様相までも呈してゆく。

「やはりメノウの変化を一番に考えて書きました。殺す相手であるアカリからいろいろなことを気づかされて、それは彼女にとってとても辛いことなのだけど、その辛さをしっかりと受け入れることで成長していくはずだと信じています」

 自分も本作を書くことで成長していきたいと語る佐藤さんは、6年にすでに作家デビューを果たし、2つのシリーズ作品を上梓している。なぜ今回、公募の賞に挑戦したのかと問うと、

「一歩踏み出したかったからです。戦闘描写や世界観のリアリティなど、今までの自作にはなかったものを組み込んで、さらにいい小説を書きたい。新しくはじめたい。そんな思いで完成させた作品がこうして受賞して大きな励みとなりました」

 9月には早くも続巻が発売される。彼女が彼女を殺す旅はどんな道となってゆくか。どこか不穏な期待感が読者の胸をざわめかすだろう。

取材・文:皆川ちか イラスト:ニリツ

 

『処刑少女の生きる道―そして、彼女は甦る―』

『処刑少女の生きる道―そして、彼女は甦る―』
佐藤真登:著 ニリツ:イラスト GA文庫 620円(税別) 7月13日発売予定
異世界から召喚された〈迷い人〉を殺す任務を背負う〈処刑人〉メノウは、〈迷い人〉の少女アカリを殺す。しかしアカリは無傷で蘇ってしまう。共に旅をしながら彼女を殺す方法を模索するメノウだが、やがてアカリを召喚した黒幕の存在とその真意に気づく――。

<登場人物>

メノウ

メノウ
沈着冷静、天涯孤独の美しき〈処刑人〉。伝説の〈処刑人〉である陽炎の後継者として育成される。アカリを殺すため共に旅をする。

アカリ

アカリ
日本から召喚された女子高生。無邪気で巨乳。【時】の“純粋概念”を持っているが本人は無自覚。メノウに絶対的な信頼を寄せる。

モモ

モモ
メノウの後輩であり補佐を務める少女。アカリを殺す旅のサポートにつき、陰から支える。メノウを慕うあまりアカリを敵視する。

アーシュナ

アーシュナ
旅の途中で遭遇する美貌の王女。王家由来の剣を武器に圧倒的な強さで悪を成敗する世直し姫として、民衆から絶大に支持される。

GA文庫大賞とは?
2006年に創刊し、今年で13周年を迎えたライトノベルレーベル、GA文庫。読んで楽しめるエンターテインメント性の高い作品を数多く放ち、『這いよれ!ニャル子さん』『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』『りゅうおうのおしごと!』など大ベストセラーも多数輩出している。スクウェア・エニックス社とのコラボレーベル『ガンガンGA』でのコミカライズをはじめ、メディアミックス展開も旺盛。前期と後期の2回に分けて募集される新人賞《GA文庫大賞》は、募集中の第12回から大賞&金賞作品のコミカライズを確約。コミックやTV・劇場アニメ化など、多方面へと広がりをみせていく総合エンターテインメントレーベルだ。


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