TVアニメ『ダンまちⅡ』キャストインタビュー②:水瀬いのり(ヘスティア役)編

マンガ・アニメ

2019/7/20

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかII』 毎週金曜24時30分より、TOKYO MXほかにて放送中 (C)大森藤ノ・SBクリエイティブ/ダンまち2製作委員会

 好評放送中のTVアニメ『ダンまちⅡ』特集、キャストインタビューの第2弾は、ヘスティア役の水瀬いのりに登場してもらった。TVアニメ1期、劇場版、ゲームを通して、4年以上もの間役と向き合ってきた彼女にとって、ヘスティアは自身の大きな成長を促した存在であり、『ダンまち』は尊敬する仲間と出会えた大切な居場所である。だから、水瀬いのりがヘスティアに注ぐ想いは、とても深くて熱い。ベルくんとの関係性について、「ベルくんを支えたいし、背中を押したいし、寄りかかってほしいし、帰ってくる場所であってほしい。今のベルくんが好き」と、明確に言語化してくれたときに、そう強く感じた。4年前のTVアニメ1期のエピソードから、その間に自身に訪れた変化まで、幅広く話を聞いた。

「ヘスティアのよさを、この数秒で叩き込んでやる」っていう気持ちで演じている

――ゲームや劇場版の収録を挟んで、4年ぶりにTVアニメシリーズでヘスティアを演じられることについて、どんな感情がありましたか。

水瀬:まずは4年経ってることも驚きでしたし、当時はまだ10代だったんですけど、その間にも毎年ヘスティアで何かを収録していた気がしていて。4年ぶりではあるんですけど、ちゃんとヘスティアというキャラクターを演じ続けられていることに感動を覚えましたし、4年の時を経てTVシリーズに帰ってこられるのも嬉しかったです。仕事として声優を続けてこられて、その側にキャラクターたちも一緒についてきてくれていたことを、『ダンまち』の2期をやることで、より一層強く感じました。

――4年前と変わった点、変わらない点は、それぞれどんな部分ですか?

水瀬:大きく変わったのは、現場のとらえ方が4年前のわたしとは違うと思っていて。当時は、ヘスティアを演じる自分しか見えていなかったので、どうしても台本や芝居に集中して、なかなかまわりと打ち解けるところまで余裕を持てなかったんです。でも、この4年間で、みんなとの関わりが強くなっていって。他の現場でお会いする機会も多かったので、いつの間にか『ダンまち』の空間が、友達に会える場所、仲間たちに会える場所に変わっていきました。そこは、1期のアフレコをしていた頃にはまだ芽生えてなかった感情かなあ、と思います。「時間をかけていくと、人と通じ合うことができるんだ」って感じられた現場だし、自分の声優としてのあり方もこの4年で大きく変わったと思います。

――「1期の頃の水瀬さんは現場でおとなしかった」という松岡さんの証言もありました。

水瀬:そうですね。アフレコ現場はあくまで仕事をする場所、与えられたものをまっとうする場所、みたいなイメージがありました。だから、合間合間のわずかな個人の時間を誰かと共有する勇気もなくて。心の中では、「楽しそうにしゃべってるところに入っていきたいなあ」と思っていたんですけど、どんな話題で入っていけばいいのかわからなかったので、唯一の拠りどころである大西沙織という巨大な柱に、ずっとくっついてました(笑)。

――(笑)その関係性は、今も『ダンまち』の現場で継続中ですか。

水瀬:そうですね。今はもう、魂で結ばれたかのような、ちょっとソウルメイト的な感じです。芝居以外の立ち回りとか、お互いの些細な変化に気づける部分は、人一倍大きいと思います。欲しい言葉をくれる存在だし、立派な熟年夫婦感が出てきてしまったので、初々しさはないです(笑)。こういう話をすると、ある一定の層の方にはめちゃくちゃ需要のある大西・水瀬なので、ちょっと読んでる人が歓喜してしまうかもしれないですけど(笑)。

――ニーズを自覚してるんだ(笑)。

水瀬:(笑)「やっと気づかれたんだあ」と思いました。ヘスティアとアイズって絡みはそんなにないキャラクターだったけど、ジワジワとふたりの仲がいいことは知られるようになって。『(水瀬いのりと大西沙織の)Pick Up Girls!』という番組があるんですけど、それを機に、「いのりと沙織」という感じで皆さんに知ってもらえるふたりになれたのは、数少ない共演作である『ダンまち』のおかげなので、感謝してもしきれないです。

――ヘスティアについて、水瀬さんだけが知っていると思う愛すべき部分って何だと思いますか。

水瀬:彼女はロリ神って呼ばれてるけど、どうしても拭えない神様感がひとつの武器かなあ、と思っていて。2期になってさらに、彼女の強さやベルくんへの想いが抽出されたシーンが多く出てきます。やっぱり、彼女にとってベルくんは必要不可欠な存在で。常に「ベルくん、ベルくん、ベルくん!」っていう気持ちがありながら行動しているところがあるんですけど、決してそれが空回りしていなくて、そこが神の威厳なのかなあ、と思います。小さな背丈で華奢な身体なのに、なんでこんなに大きく見えるのかなって思えるシーンがたくさんあるんですね。それはきっと、彼女の器の大きさや内側にある強さなんだろうなあって感じていて。だから2期のヘスティアは、「かわいい」よりも「カッコいい」って言われたいなあって思いながら演じているところがあります。

――なるほど。1話では、宴のシーンでいろんな人に超ハイテンションで噛みついたり、一方ではボコボコにされたベルくんを優しく癒していたり、へスティアはいきなり全開でしたね。

水瀬:彼女を演じる上ですごく助かるのは、振り幅の大きさがあるからなんですね。キャラクターを演じるにあたって振り幅が大きいと、演じる側としてもキャパが広がります。「ここからここまでがヘスティア、でもここを超えてもギリヘスティアなのかな」って思えるラインが、どんどん広がっていて。それは、大森先生がヘスティアというキャラクターのいろんな側面を余すことなく書いてくれてるからだなあ、と思います。ベルくんを包む聖母のような優しさや、弱音を吐かない強い感じがヘスティアの見え方をさらに広げているので、2期の第1話は、「ヘスティアはこういう子です」って皆さんに見てもらえるお話なのかな、と思います。

――1話のヘスティアを見て、何よりも演じ手がものすごくいきいきしているなあ、と思いました。

水瀬:ヘスティアは本当に演じ甲斐があるし、わたしも表情がどんどん変わっていくヘスティアに負けないように、「彼女のよさを、この数秒で叩き込んでやる」っていう気持ちで演じています。あと個人的には、4年の時を経て、もうひとりすごく仲良くなったキャストが、ヘスティアと深くつながるキャラクターを演じていることも大きいです。ロキ役の久保ユリカとはこの4年ですごく仲良くなって、それはロキとヘスティアのキャラクターにも通じる部分があって、普段のわたしたちのトークのバランスとすごく似てるんです。なので、改めてロキとヘスティアとしてマイク前に立つと、ちょっとむずがゆくて(笑)。でも、ふたりで言い合うシーンはめちゃくちゃ楽しくて、台本や画面ではなく顔を見る勢いで、隣のマイクに立ってガミガミ言い争いをさせていただきました。

10代のうちにヘスティアというキャラクターに出会えたのは、自分にとって成長につながった

――ヘスティアは、ベルくんに一途じゃないですか。でもベルくんは「いや、神様なので」っていう一線を引いてる感じがありますよね。ヘスティア側から見て、この関係性はどう映ってるんですか。

水瀬:それでも、ヘスティアはやっぱり幸せなので。「最終的にベルくんとどういう関係にありたいか」って訊かれたら、たぶんヘスティアは「ずっとこのままでいい」って言う気がします。ベルくんを支えたいし、背中を押したいし、寄りかかってほしいし、帰ってくる場所であってほしいっていう。今のベルくんが好きだし、ベルくんもたぶん今の神様が好きだって思ってくれているので、一線の向こう側にいるというよりは、いつも隣にいる感じがします。意外と心の中では一線は飛び越えてるんじゃないかなあ、とわたしは勝手に思ってます(笑)。

――ヘスティアを演じ続けてきた中で、水瀬さんが自身の成長を実感できたシーンはありますか。

水瀬:なんだろう、成長できたと思う反面、「あのときのあれはできないのかな」って思うシーンもあったりします。1期の第3話で、怪物が町に出てきて――ヘファイストスに土下座して作ってもらった借金しまくりのヘスティア・ナイフをベルくんに託して、「行っておいで」って背中を押すシーンがあるんですけど、わたしはそこが大好きで。でも、当時アフレコをしているときは、全然納得がいかないまま終わってしまったんです。その周辺は張りゼリフ(声を張るセリフ)が多くて、家で練習しながら「一本調子になりがちなシーンだなあ」って思ってたんですけど、本番でやってみても、やっぱり一本調子だなって自分で思ってしまって。でも、今観直してみると、それが逆に必死で、巧みじゃないよさ、粗削りなよさがあるのかなって、やっと思えるようになりました。

 松岡さんも、いろいろな場所であのシーンをお気に入りに挙げてくれていて、嬉しい反面、ちょっと悔いもあるシーンだったので、自分の中では煮え切らない思いもあったんですけど、2期が始まっていろいろなシーンをやっていく中で、「あの泥臭さは今はもう出せないのかな」みたいな気持ちになることがあって。「ここでピークに上げるから、ここは抑えよう」みたいなことを考えられなかったわたしだからこそ出た、まっすぐな芝居が1期の第3話では出たのかなあ、と思います。

――今だったら、緩急のつけ方がわかっちゃう部分がある?

水瀬:そうなんですよ。当時はそれができなかったからこその芝居がフィルムに残ってるので、そう考えると、10代のうちにヘスティアというキャラクターに出会えたのは、自分にとって成長につながっていたんだなあって改めて思います。

――ヘスティアを演じるごとに、役者としての自分の状態がわかるというか。

水瀬:そうですね。ギャグの芝居もシリアスの芝居も、たくさんヘスティアに学んだので。当時は、インタビューやラジオでもかなりおとなしいわたしだったので、ヘスティアと一緒に明るくなれた、というか。それはアフレコ現場の雰囲気だったり、スタッフさんの優しさが大きいと思います。どのキャラクターにもひた向きに愛を注いでいる中で、彼女が自分の声で動く喜びは、アフレコをしながら感じています。

――逆に、ヘスティアを演じていて「ここが大変!」と思うのはどんなところですか。

水瀬:ヘスティアは、「畳みかけて大きくなるギャグシーン」が多くて。一発で終わるギャグではなく、1回キレよく叫んだあとで、それを超えるキレのよさでもう一度言うとか、セルフエコーする、とか(笑)。緩急という意味では、10・20・30で上がっていくのではなくて、0・50・100みたいな感じで出していくので、自分のテンションが露骨に出るところが、ヘスティアを演じていて大変なところです。疲労やちょっとした迷いが、ヘスティアを演じているとすぐにバレてしまうので、わたしもアフレコのときに全力でヘスティアを演じられる状態に持っていかないといけなくて。「ベルく~~ん!」って言うには、相応の自分もいなくちゃいけないので、常にヘスティアと戦っている気分です。

――確かにヘスティアは、最初に100出して、次は110を出さないといけない感じはありますね。

水瀬:あります、あります。「顔は見えないからいいだろう」と思って、顔の筋肉をめちゃくちゃ使いながらヘスティアを演じてます。なので、イベントとかの朗読では張りゼリフがないといいなって、切に願ってます(笑)。

――(笑)水瀬さん自身が『ダンまち』の世界で過ごすとしたら、どんな冒険者になりたいですか。

水瀬: RPGやサバイバル系のゲームをやるときは、わたしはわりと特攻タイプです。待つのが苦手なので、作戦を忠実に練って敵が来るのを待つよりは、見えないものを待つのが怖いから、「とりあえず頭(かしら)を狙おう」みたいな(笑)。実際、自分が『ダンまち』の世界に行ったら、魔法を唱えたりするのはたぶん向かなくて――覚えられないので(笑)。ヘスティアみたいに、「神威解放~」って言ったらブーストする、みたいな単純明快な戦い方がしたいので、わりとファイタータイプなのかな、と思います。

わたしもヘスティアのように、誰かを支える存在になりたい

――2年前のインタビューで、水瀬さんは「自分で何かを足す作業を普段からやるタイプではなく、もっと『こうしていいよ』って言ってもらえるとグンっていける、跳ねられる」って自己分析をしてたんですけど、今はどうですか。

水瀬:わりと変わっていないと思います。2年前よりは、自己表現やアピールもできているかなあ、とは思いますけど、自分で自分にスポットライトを当てることはあまりしないタイプですね。ずっと「自分にはできないのかな」って思ってたんですけど、「自分はそうしないんだな」っていう認識に変わりました。全世界の皆さんへのメッセージ、ではなくて、自分から見えるものに常に応えていきたいと思っています。自分から見えるものって、どんどん吸収すれば視野は広がっていくと思うし、そのときどきに見えている景色にまんべんなく届けたい、みたいな思いはあります。

――「こうしていいよって言われたらさらに加速できる資質」って、まさにヘスティアを演じたことで得られたものだったりするんじゃないですか。

水瀬:間違いなく、それはあると思います。自分が思ってる以上に自分の幅を広げてくれましたし、彼女を演じる上で、「ギャグってもっと振り切っていいんだ」とか「シリアスってもっと感情を吐露していいんだ」って教えてもらいました。あとは、やっぱりベルくんが松岡さんだったのもすごく大きいなあ、と思っていて。4年前からずっと尊敬していますし、「なんでこの人はこんなに全力で立ち向かっていくんだろう、すごい!」って思います。常に最高を叩き出していく背中を見ていて、食らいつくのが必死だったのが4年前だったので、そのガムシャラさに憧れて、今のヘスティアができたと思います。全力でぶつかっていく姿を見ると、みんな「全力でいかなきゃ!」って思うじゃないですか。その背中についていきたくなるのが、この『ダンまち』の色であり、松岡さんの持ってる色だと思います――これを松岡さんが読んだら、泣いちゃうんじゃないかなあ(笑)。

――(笑)2年前には、「これといったらわたし、という強みを探していきたい」という話もしてましたけど、その後何か見つかりましたか?

水瀬:芝居の面では全然なくて(笑)。個人としては、それこそちょっと達観してる部分だったり、10代の頃は早熟だと言われていたので、「どうやったらきらきらしたテンション、きらきらした性格になれるかな」っていうことは、ひとつの悩みでもあったんですけど――。

――若者の悩みじゃない(笑)。

水瀬:(笑)そうなんですよ。「輝くためにはどうしたらいいんだろう」って。いろいろなイベントに出たり、人と話したりしている中で、気づいたらまわりから「それがいいよね」って言われるようになって。なので、自分が思ってる強みではないんですけど、「わたしのそういうところがいいらしい」って、ちょっと気づき始めた自分がいます(笑)。「変わらなさを見ていて安心する」とか「そのテンション感でいてくれて意外と助かってる」って言われる機会が増えました。ひとつのコンプレックスだった落ち着いてる感じが、1周回ってよさに変わったのかもって、ちょっと思えるようになりました。明るくなろうって思っていた時期もありましたけど、「う~ん、やっぱり無理かな」と思ったのが今の状態です(笑)。

――(笑)『ダンまち』とヘスティアは水瀬さんに多くのものを与えてくれたと思うんですけど、これからも一緒に歩んでいくヘスティアに伝えたいことって何ですか。

水瀬:10代の頃や20歳になりたての頃って、一目でわかる大人っぽさに憧れてたんですよね。ハイヒールを履くとか、前髪を分けているとか、スキニーパンツとかライダースとか――まあ、峰不二子なんですけど(笑)。そういうものに大人っぽさを感じていたけど、ヘスティアを演じていて、大人っぽさは見た目から出るものだけじゃないって気づいて。彼女は見た目が子どもっぽかったり、チャーミングな印象だと思うんですけど、それが一転してカッコよく見える瞬間って、言ってるセリフや眼差しの強さにあるんだって思ったときに、真の大人でカッコいい女性って彼女だなって思ったんです。

 なのでわたしは、ヘスティアにすごく憧れています。わたしも、見た目が大人っぽいタイプではないけど、彼女を見ることで、内側の大人っぽさを磨くこともひとつの女性らしさなんだなって気づきました。普段はじゃじゃ馬感があって、破天荒で天真爛漫なんですけど、決めるところを決める強さがあるので、わたしは一生ヘスティアを憧れの対象として見ていくんだろうなあって思います。わたしもヘスティアのように、誰かを支える存在になりたいですね。

――今、目の前にヘスティアがいるとしたら、何を伝えますか。

水瀬:なんだろう? でも、今言ったようなことは照れくさくて、面と向かっては言えないと思うので、ここへ来て改めて、青い紐の用途ですかね(笑)。「汗をかかなかったら次の日も使っちゃうのかな?」とか「ネットに入れて洗うのかな? 手洗いかな?」とか、そういう質問をしたいです(笑)。

取材・文=清水大輔

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