劇場版 『ONE PIECE STAMPEDE』公開! ルフィ役の声優・田中真弓が『ONE PIECE』と歩んだ20年とは?

マンガ・アニメ

2019/8/7

 アニメ20周年にふさわしい超大作、劇場版『ONE PIECE STAMPEDE』が、8月9日(金)に公開される。主人公モンキー・D・ルフィとして20年戦い続けてきたのが、声優・田中真弓さんだ。オーディションの裏話やルフィを演じるときの意外な心構え、尾田栄一郎氏と親しいからこそ言える“予想”など、その言葉には大作を背負ってきたからこその“軽やかさ”があった。新作映画のタイミングで20年をふりかえっていただいた。

映画『ONE PIECE STAMPEDE』ポスタービジュアル
(c)尾田栄一郎/2019「ワンピース」製作委員会

田中真弓さん

田中真弓
たなか・まゆみ●東京都出身。『ONE PIECE』のほか、主な出演作品に『ドラゴンボール』(クリリン役)、『忍たま乱太郎』(摂津のきり丸役)、『ダッシュ勝平』(坂本勝平役)、『天空の城ラピュタ』(パズー役)など多数。

 

決して正義の味方じゃない、自由さがルフィの魅力

「俺は海賊王になる!」海で拾われた樽の中から飛び出した麦わら帽子の少年が、田中真弓さんの声で宣言したアニメ第1話(原作はシャンクスとの出会いから始まる)。「できるかどうかじゃない。なりたいからなるんだ。海賊王になるって俺が決めたんだから、そのために戦って死ぬなら別にいい」。その言葉どおり戦い続け、今年でなんと20年。

「ここまで続くと思っていなかったんで、嬉しい反面、あと何年続くだろう、最後までまっとうできるだろうかと心配ですよ(笑)。なにせ、40歳を過ぎてからいただいたお仕事ですから」

と田中さんは、ルフィと同じように飄々と笑う。

「アニメが始まって7〜8年が過ぎた頃から、尾田っち(尾田栄一郎氏)と頻繁に会うようになってね。お互いの家を行き来したり、他のキャストとみんなで花見をしたり、まさに海賊のような宴が年に何度も催される。これ、かなり珍しいことなんです。鳥山(明)先生と初めてお会いしたのは『ドラゴンボール』が全部終わったあとの打ち上げだったし。聞いたら、尾田っちは長期連載もアニメ化も初めてだったから、スタッフと交流しながら原作も描くもんだと思ってたんですって。こんなの初めてだよって言ったら驚いてました(笑)。でもだからこそ、スタッフやキャストみんなに一体感が生まれて、現実でも作品の中でも唯一無二の仲間になっていける。立ち位置が一緒なんですよ。中井(和哉)くんはゾロと同じようにちっとも喋らないんだけど、ときどきすべてをかっさらう一言を言う。私がしゃべった他愛ないことに(山口)勝平がウソップみたいに突っ込んでくれるから、場が盛り上がる。私を含め、みんな演じてるキャラに魂が近づいてきてるし、作品に描かれるのと変わらない深い愛がある。20年も続いたからこそ培われた絆ですね」

 田中さん以外がルフィを演じるなんて今では想像もつかないが、当時はオファーではなくオーディションで決まったという。

「最初に中井くんが満場一致でゾロに決まり、ナミ役にも岡村明美ちゃんと(当時の)新人が固まったから、中心のルフィを決めるにあたっては、スタッフは検討をかさねたんじゃないかな。オーディションには何度か通ったんで。でも私は不安とか全然なくて、ただただ楽しかった。私ね、オーディションを受けるのが好きなんですよ。落ちて当然だと思っているし、試されている、見られている感じがどこかわくわくするんです。審査員の一人でも“こいつ変な奴”って記憶に残してくれたら勝ちだ、ってつもりで挑んでます。だからルフィのときは余裕があって、それがよかったのかもしれない。逆に“これは私しかやれないでしょ!”って思いこんだ役は軒並み落ちてるから(笑)」

 肩の力の抜けた明るさが、ルフィに通じるものがあったのだろう。20年のなかで仲間が増え、さまざまな人の痛みや悲しみを背負い、船長の風格も増してきたルフィは、けれど、今に至ってもずっと軽やかでい続ける。とぼけた愛嬌と裏表のない率直な優しさ。それが、決して失われることのないルフィの魅力だ。

「物語の中では2年しか経過してないんですけどね(笑)。できるだけ軽やかでいたいなっていうのは私も意識しています。大事なことほど、できるだけさらっとやったほうがいいんじゃないかと思っているから。ほら、ルフィも言ってるじゃないですか。『この海で一番自由な奴が海賊王だ!!!』って。彼は決して正義の味方ではない。助けるのは、自分が助けたいと思った人だけ。誰になんと言われようと、自分が決めたことには揺るがない。そこがこれまで演じてきたどの役とも違うおもしろさですね」

泣くところで笑わせ、笑うところで泣かせてくる

 もう一つ、田中さんが大事にしていることがある。それは自分の理想の男性像を想像しながら演じること。

「それはもう絶対(笑)。たとえば別の作品だけど『天空の城ラピュタ』でパズーがシータをポンチョに入れるところ、あれは少年から男になる大事な場面だから特に気合を入れて、自分がシータだったらどんな言われ方をしたら嬉しいかを探ったのね。『ONE PIECE』の場合は、女性に心を奪われるルフィなんて尾田っちが絶対に描かないんだけど、特に大事な言葉は、こんなふうに言われたら惚れてしまう、っていう目線を意識しています。特にアラバスタ編はそうだったな。万が一、ルフィが惚れることがあるとしたら相手はビビだって私は思ってるんだけど、尾田っちは『違います!』って断固否定するし、何より岡村明美ちゃんが怒ります。『そんなことがあるとしたら、相手はナミでなくちゃいけません! なぜならヒロインは私だから!』って(笑)」

 ちなみに、ルフィ以外で好きなキャラを挙げるとしたら。

「みんな好きだけど……ガープかな。『おれは生まれてきてよかったのかな』って言うエースに返した『そりゃおめェ……生きてみりゃわかる』って言葉とか、すごくいい。生きろ、って言ってるわけじゃないですか。生き抜いてきた人だからこその優しさと重みがありますよね。そういう言葉を受けて芝居するのはこちらにもかなりの気合と覚悟がいる。ジンベエの『失った物ばかり数えるな!!! お前にまだ……』のところも印象に残ってます。ただおもしろいのは、尾田っちってけっこう、泣いているときに読者を笑わせようとしてくるんですよね。今あげた2つは完全に泣きのシーンだけど、たとえばサボと再会したとき、死んでたと思っていたのに生きてた!って感動するところなのにルフィは1ページ使ってエネル顔(笑)[*]。逆に、めちゃくちゃ笑っていたのに泣かされる、ってこともあるし、芝居のしがいがあるなあと思います。日常で本当に悲しいことがあったとき『私は悲しんでます!』って顔をする人はほとんどいないし、大抵は気づかれないようひっそりやりすごしているものだから。10人が観て10人が同じことを感じられるよう演出するのがアニメの仕事だけど、尾田っちはそこを少しはみだしてくれるからありがたいし、そこにみんな胸を打たれるんでしょうね」

[*]エネル顔:空島編でエネルの見せた驚愕の表情。他のキャラが同様の表情を浮かべたときに使われる言葉。

映画『ONE PIECE STAMPEDE』場面

 その積み重ねでたどりついた20年を象徴する映画最新作。ラフ映像を見た尾田栄一郎が「面白いときしか面白いという言葉は使いません」と言いながら太鼓判を押す“宴”の豪華さに期待がつのる。

「好きなセリフとか場面とか、言うと全部ネタバレになるから何も言えなくて申し訳ないんだけど(笑)、会いたいと思っている人たちに会える、っていうのが個人的にはすごく嬉しかったな。こんなことやっちゃっていいの!?って驚くくらい次々とキャラクターたちが登場して賑やかで派手な作品になっているし、ふだんはアニメを敬遠している原作ファンの皆さんも絶対楽しめると思う。それと、これまで『ワンピース? 知ってるよ、腕が伸びるんでしょ』くらいの知識だった人にもおすすめ。私の友人にも多くて、そういう人にはこれまでマンガを全巻買ってプレゼントしてたんだけど、さすがに90巻を超えると読むほうも贈るほうも気合がいる。でもこの映画なら『ONE PIECE』らしさが全部詰まっているうえに、気になるキャラが絶対に一人は見つかるはず。だから、この映画をきっかけに原作を読む人が増えてくれるといいなと思っています。これは私の予想だけど、『ONE PIECE』はいま起承転結の“結”に向けて転がり始めてる。だってこれまで毎年『真弓さん、あと10年ですから』って言ってた尾田っちが、言わなくなったんだもの。その日に向かって、みんなで冒険を続けましょう!」

取材・文=立花もも

 

映画『ONE PIECE STAMPEDE』
原作・監修:尾田栄一郎 
監督:大塚隆史 配給:東映 声の出演:田中真弓、中井和哉、岡村明美、山口勝平、平田広明、大谷育江、山口由里子、矢尾一樹、チョーほか 
ゲスト出演:ユースケ・サンタマリア、指原莉乃、山里亮太(南海キャンディーズ)
8月9日(金)より公開
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世界中の海賊たちが大集結する海賊万博で、「海賊王(ロジャー)の遺した宝探し」に参戦するルフィたち。だが裏では“最悪の戦争仕掛け人”と呼ばれる主催者フェスタの凶行が張り巡らされ……。