どこまでも没入を誘う楽曲群と、無自覚な3つの輝く個性――sora tob sakanaインタビュー

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更新日:2020/4/30

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかII』 毎週金曜24時30分より、TOKYO MXほかにて放送中 (C)大森藤ノ・SBクリエイティブ/ダンまち2製作委員会

 2018年5月にメジャーデビューを果たした3人組、sora tob sakana。音楽プロデューサーの照井順政が手掛ける楽曲群は極めて中毒性が高く、メンバー3人=神﨑風花、寺口夏花、山崎愛による歌声は、聴く者を強烈に惹きつける。昨年7月に発表したTVアニメ『ハイスコアガール』のオープニング主題歌“New Stranger”を機に、着実に支持を広げており、今後注目すべき存在である。ダ・ヴィンチニュースに初登場となる今回は、現在放送中の『ダンジョンに出会いを求めるのが間違っているだろうかⅡ』のエンディングテーマである最新シングル『ささやかな祝祭』(発売中)について、そして「sora tob sakanaとはどのような音楽集団であるのか?」というテーマで、メンバー3人に話を聞いた。

(“ささやかな祝祭”は)楽しい宴をする感じの曲なので、みんなで楽しめたら(寺口)

――ニューシングルの“ささやかな祝祭”、3人とも完成した曲を聴いてると思うんですけど、どんな楽曲になったと感じてますか。

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寺口夏花山崎愛:楽しい(笑)。

――楽しい。他にはどうですか。

神﨑風花:なんだろう?

山崎:今までのsakanaにはあまりない曲かなって思いました。

――これまでのsora tob sakanaの楽曲と比較すると、音全体に対して歌が占める比重が高いというか、より歌がしっかり聞こえてくる曲だな、と思うんですけど。となると、歌う側にとってチャレンジになる、問われる楽曲であって、難しさもあったのかな、と想像していて。

神﨑:個人的には、今までの曲に難しい曲が多かったので、“ささやかな祝祭”は比較的歌いやすかったです。楽しく歌えてる感じで――いつもは、歌うときにいろいろ考えているんですけど。サビもけっこう明るい雰囲気なので、いつものsora tob sakanaの曲よりは歌いやすいなあって思いました。

山崎:わたしは、サビが難しいと思いました。

寺口:今までの曲のように、リズムが難しいというよりは、サビの音が高いところがあったりして、踊りながら歌うのがちょっと大変だなって思います。

――「普段歌ってる曲が難しい」「いろいろ考える」という話が出たけど、具体的に何が難しくて、どんなことを考えながら歌ってるんですか。

神﨑:わたしとしては、基本的に全部の曲のリズムが難しくて。たとえば、“ribbon”っていう曲があって、Aメロが6拍子なんです。わたしが最初に歌うんですけど、始まる前に「1、2、3、1、2、3」って数えてから歌ってます。今までは心の中で唱えてたんですけど、それでも上手くいかないことがあるので、もう声に出してます(笑)。

山崎:考えるというよりも、必死です(笑)。

――(笑)“ささやかな祝祭”は、比較的楽曲の世界をとらえやすかったのでは?

神﨑:宴のイメージで(笑)。アニメ盤のジャケット写真のような祝祭というか、乾杯してる感じ。冒険のあとで、みんなで「お疲れさま~」みたいな感じのときに流れてる曲のイメージです。

――宴というのは『ダンまちⅡ』から出てきたテーマだと思うんですけど、今回タイアップですることになった『ダンまち』という作品には、どんな印象を持ってたんですか。

山崎:すべてがかわいい(笑)。テンポよくポンポン進んでいく感じが、観ていて気持ちいいです。

寺口:パーティー(ファミリア)を組むところがあって、パーティーによってキャラの個性がそれぞれ違うのが面白いです。

神﨑:確かに。冒険系のアニメをわたしはちゃんと観たことがなくて。『ダンまち』が決まる前は、そういう作品ってちょっと堅いイメージがあったんです。「自分はついていけないんじゃないかな」と思ってたんですけど、『ダンまち』は観ていて面白いなあって思います。

――推しのキャラは?

神﨑:ヴァレンなにがし(笑)。めちゃくちゃかわいい。

寺口:名前が――CVが斉藤壮馬さんのキャラです(笑)。

――ヘルメス?

寺口:あっ、そうです。CVも好き(笑)。

山崎:(笑)大阪弁でしゃべる、ロキが大好きです。ずっと、神様としゃべっててほしい。

――全員、メインのベルくんやヘスティアじゃないところを挙げてきた(笑)。

全員:(笑)。

山崎:ヘスティアも好きです。

――今回、アニメのタイアップは2回目で、1年前の“New Stranger”(TVアニメ『ハイスコアガール』OP曲)が初だったじゃないですか。sora tob sakanaはわりと長く活動をしているけれども、“New Stranger”をきっかけに、sora tob sakanaの音楽が届く範囲が広がったと思うんですよ。そのことを実感するのは、どんな体験でしたか。

神﨑:やっぱり、テレビを観てイベントに来てくださる方がすごく増えて、目に見えて変わったのが嬉しかったです。あとは、アニメのイベントにも出させてもらえるようになったので、1年前と比べると全然違うなあ、と思います。

寺口:曲を聴くだけだったらいくらでもできるけど、実際に来てくれるから、ビックリしました。

――『ダンまち』は広く人気のある作品なので、“ささやかな祝祭”をリリースした後はよりたくさんの人がsora tob sakanaを認識する、好きになる可能性があるんじゃないかな、と。その意味で、代表曲として自信が持てる曲になった手応えは感じていますか。

神﨑:最近、初めてライブでやったんですけど、すっごい盛り上がってくださって。sora tob sakanaは「世界観を見せる」感じの曲が多いので、一緒に手振りをやったりする曲がなかったから、ファンの方との一体感が生まれたというか。そういう意味では、代表曲になってほしいな、と思います。

――ふたりはどうですか。

山崎寺口:これから!(笑)。

寺口:楽しい宴をする感じの曲なので、みんなで楽しめたらいいなって思います。

神﨑:今回『ダンまち』のエンディングテーマなので、アニメで知ってくれた方がライブにも来てくれて、「この曲だけ知ってる」とかでも全然嬉しいです。一緒に盛り上がれたらなって思います。

肯定してくれる方がいるのが嬉しい(神﨑)

――ここからは、「sora tob sakanaとは?」というテーマで話を聞きたいんですけども。3人は、sora tob sakanaらしさってなんだと思いますか。

寺口:なんだろう? sora tob sakanaらしさ……。

山崎:こういうところじゃない? 全然出ない(笑)。

寺口:(笑)人見知り?

神﨑:ほんっとに人見知り。こういうふうにしゃべるとなると、全然しゃべれない(笑)。ある意味、ライブとMCとのギャップがいいと思ってもらえるのかもしれないです。あとは、みんな飾ろうとしないというか。

――人見知りで、飾らない。その他に、「sora tob sakanaらしさ」といえば?

寺口:あっ、食べ物を与えられるだけでテンションが上がるから、チョロいです(笑)。

神﨑:単純なんです(笑)。

寺口:いつも定期公演でVJをしてくださる方がいるんですけど、sora tob sakanaの世界観を一緒に作ってる感じがあって、チームワークがいいです――よしっ(笑)。

――(笑)じゃあ、sora tob sakanaの武器は?

山崎:曲!

――うん、それは間違いない。曲は本当にすごい。

神﨑:曲や照明とかVJが全部合わさって、sora tob sakanaの世界観ができること。他のアイドルさんにはあまりないと思うので、それがありがたいなあって、いつも思います。

寺口:バンドセットでのライブは自分たちもテンション上がるし、ファンの方もいつも楽しみにしてくださっていて。

――sora tob sakanaをやりたいと思い続けられる理由ってなんですか。

神﨑:なんだろう、メンバーでいるときが楽しいし、他にはできない経験だし、みんなでこうやってワイワイ話せてることも楽しくて。だから、無意識に頑張ろう、という気持ちになってるんだと思います。

山崎:うん。仲がいいから楽しく過ごせてるし、こうやってアニメのお仕事をいただいたり、すぐに嬉しいことが来るので。

――さっき、他のアイドルにはあまりないライブ、という話が出たけど、3人は自分たちのことをアイドルだと思ってるんですか。

山崎:ええ~~っ?(笑)。

――アイドルのフェスに出てるでしょ?

神﨑:確かに。そっちのほうが多いから、そういう意識もあるのかな?

寺口:でも、ちゃんとしたアイドルみたいにはあまり思ってないです。

山崎:うん、あまり思えない。

神﨑:でも、アーティストだとも思っていなくて。

山崎寺口:うんうん。

神﨑:アイドルって、すごいですよね。キラキラしていて。

寺口:確かに。

――アイドルみたいにキラキラしたいと思うのでもなく、アーティスト然と振る舞うわけでもなく、今の状態が心地いい、ということ?

神﨑:はい(笑)。

寺口:キラキラできるキャラじゃない(笑)。

神﨑:どちらかというと、キラキラしている人を見ていたいです。それは、自分たちがすることじゃないというか。

――じゃあ、何をしたくてこの世界に入ったんですか。

神﨑:もともと歌うことは好きだったんですけど、地方に住んでいて。東京に出てきたときに、「東京に行ったら、みんなが芸能活動をする」みたいなイメージがあって(笑)、お母さんに受けてみようって言われて受けたのがきっかけです。

――とんでもなく偏ってる感じがするけど(笑)、地方というのは?

神﨑:岡山から来ました(笑)。

――(笑)sora tob sakanaとして、3人だけではなくて、プロデューサーの照井さんやスタッフさん、VJをやってくれる人も含めて、ひとつのチームとして「ここを目指していきたい」っていう夢やビジョンはあるんですか。

山崎:みんなが楽しく過ごしていけたら、それが一番いいです。

神﨑:この3人だけだったら、絶対今まで続けてこられてないと思います。それこそ、ライブにVJとかがあったからここまで来られたと思うので、ずっとこのチームで頑張っていきたいです。

――頑張った結果、どういうところまで行きたいですか。

神﨑:新しいジャンルというか、sora tob sakanaっていうスタイルがあるねって思ってもらえる方が増えたらいいなって思います。でも正直、今のままのレベルではダメだと思っていて。

寺口:うんうん。

神﨑:お客さんに見せるものなので、もっと満足してもらえる歌を歌いたいし、上手くなりたいです。

――「この人たちのために上手くなりたい」と思うお客さんは、sora tob sakanaにとってどういう存在ですか。

神﨑:「こんなわたしたちを受け入れてくれてありがとう」って思います。わたしたちはほんとに自由にやってるし、何も考えてなかったりもするけど(笑)、それでも楽しんでくれているから、「これでいいんだ」って思えたりします。肯定してくれる方がいるのが嬉しいなって思います。

取材・文=清水大輔