古墳サークルで繰り広げられる三角関係!?『やまとは恋のまほろば』浜谷みおインタビュー

マンガ

更新日:2019/9/12

 たとえ容姿に自信がなくたって、コンプレックスだらけだって、恋する心は誰にも止められない。LINEマンガ オリジナルで連載中の人気作『やまとは恋のまほろば』が描くのは、そんな自己肯定感の低い女の子の青春。とある大学の古墳研究会を舞台に、不器用な恋心はどこへと着地するのか。

『やまとは恋のまほろば』
(c) Mio Hamatani / LINE

三和穂乃香(左)
おたけやま古墳の麓にある大学に通う、心やさしき女の子。大学デビューを果たした友人に引け目を感じつつも、心のオアシスである古墳研究会での日々を謳歌している。
飯田くん(中央)
大学1年生。物静かで無表情、なにを考えているのかまったく読めない男子。古墳を愛し、穂乃香にも分け隔てなく接してくれるが、その言動が穂乃香の心をかき乱していく。
可児江先輩(右)
大学3年生。穂乃香と飯田くんの先輩であり、ちょっとお調子者。しかし、穂乃香を見た目で差別せず、居心地の悪い飲み会の場から彼女を連れ出してくれるような一面も。

 

自分を「デブス」と自嘲する主人公

 まほろば――。これは“素晴らしい場所”“住みやすい場所”を意味する古語であり、和歌にはしばしば登場する表現だ。とかく生きづらいこの世のなかで、そんな自分だけの“まほろば”を見つけられたら、きっと毎日が一変するに違いない……。

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 電子コミックサービス「LINEマンガ」のオリジナル作品として連載中の『やまとは恋のまほろば』は、見た目にコンプレックスを抱えるひとりの女の子が“まほろば”を見つけ、徐々に前向きになっていくという物語。そのリアルな描写と温かいキャラクター造形、淡い関係性のなかで浮き彫りになる居心地のよさが話題を集めている。

 主人公を務めるのは、関西にある中河内大学の1年生・三和穂乃香。彼女は自分自身を「デブス」と称するように、とても自己肯定感の低い女子だ。人数合わせで参加した合コンでも、自分のことを「“前方後円墳”呼ばわりされるくらいが、自分の通常なんで」と口にしては、男子たちを恐縮させてしまう始末。そんな彼女の拠りどころになっているのが、大学の地味なサークル「古墳研究会」だ。本作を生み出したきっかけについて、作者・浜谷みおさんはこう語る。

「私の住んでいる大阪の八尾市には、心合寺山古墳という古墳があるんです。敷地内を散策することもできて、実際に歩いてみると、“前方後円墳”の形を体感することができて。それで古墳というものが私のなかで身近な存在になって、いつかマンガのネタにできたらいいな、と思うようになりました。少女マンガと古墳の組み合わせなんて意外な感じがしますけど、不思議とイケる気がしたんです」

 古墳研究会に所属する男子たちの目には、“古墳型”に映ってしまう穂乃香の体形。しかし、どんなにいじられても、彼女は卑屈になったりしない。むしろ、自分の立ち位置を理解しており、あっけらかんと笑ってみせる。その姿はとても可愛らしい。

「穂乃香には“見た目のコンプレックス”という誰もが共感できるような悩みを持たせつつも、ウジウジした性格にならないように描いています。私自身、ちょっとしたことで悩んでしまうタイプなんですけど、そういう人物が主人公になってしまったら、読者もしんどいじゃないですか(笑)。だから、似ている部分はあるけれど、彼女のほうがだいぶ前向きだと思います」

また、穂乃香については、生みの親である浜谷さんのこんな想いも反映されているそうだ。

『やまとは恋のまほろば』コマ
自分の体形を揶揄する男子たちを前に、毅然とした態度をとる穂乃香。バカにされることに慣れていることがうかがえる。

「自己肯定感の低い女の子が増えているように感じるんですけど、自分のことをそんなに卑下しなくてもいいと思っていて。例えば自分の娘と向き合っていると、できないことがあったとしても、とにかく可愛いんです。それと同じで、穂乃香みたいな子を見ると、つい親目線になってしまう。自分のことをそんなに否定せずに、幸せになってねって」

 そんな穂乃香の“まほろば”である古墳研究会には、ふたりの男子がいる。ひとりは同級生の飯田くん、そしてもうひとりが3年生の可児江先輩。なにを考えているのか読めない天然系男子の飯田くんと、飄々としたお調子者である可児江先輩は対照的でありながらも、穂乃香にとってとても大切な存在だ。

「少女マンガを描きたいという想いが強かったので、ストーリーにどうしても恋愛を絡めたかったんです。そこで最初に思いついたのが飯田くんでした。ただ、彼は自分の考えを表に出さない子だから、いかんせん話が進まなくって(笑)。私自身、描いていてもわからなくなるくらいなんです。そこで、物語を展開させる意味も込めて、可児江先輩というキャラクターを生み出しました。彼のおかげで、穂乃香と飯田くんは連絡先を交換することができたりと、うまく話が動き出しました」

 口にこそ出さないものの、彼らが穂乃香のことを思っているのは些細な言動からも伝わってくる。キラキラした青春とは無縁だと思っていた穂乃香にとって、その存在が救いとなっているのは事実だろう。

 一方で、穂乃香の“まほろば”を脅かすような存在も描かれる。それが同級生であるイマドキの女子たちだ。特に古墳研究会の男子ふたりに興味津々な丹菜ちゃんは、事あるごとに穂乃香を牽制する。

「古墳研究会で過ごす日々は、『私もこんな青春を過ごしたかったな』という願望も込めて描いているんです。でも、そのまほろば感を際立たせるためには、現実の厳しさを見せることも必要だと思っていて。女の子同士のピリッとした感じは、そのためにもエッセンスとして加えています」

『やまとは恋のまほろば』コマ
穂乃香に古墳グッズをプレゼントする飯田くん。下心や意地悪な気持ちのない彼に、穂乃香は少しずつ惹かれていく。

8年越しに手にしたマンガ家という夢

 本作は、浜谷さんにとって初の連載作。しかし、マンガ家としてデビューするきっかけとなったのは、2007年に銅賞を受賞した少女・女性まんが新人グランプリ「金のティアラ大賞」(集英社主催)だった。

「小学生の頃から『りぼん』などの少女マンガ誌を読んでいて、ずっとマンガ家に憧れていたんです。本格的に描き始めたのは、22歳くらいの頃かな。でも、いざ描いてみるととにかく下手くそで。『こんなに下手なマンガを、最後の作品にはしたくない!』という想いで描き続けて、4年くらい経ったときに、金のティアラ大賞で銅賞を受賞できたんです。ただ、読み切り作品ばかりを描いていたら、自分のなかがすっからかんになってしまったんですよね。それで、マンガを描くことが嫌になってしまって、ペンを持つことから遠ざかってしまいました」

 最後の読み切り作品を発表したのは11年。そこから8年のブランクを経て、浜谷さんはマンガ家としての再デビューを掴んだ。

「子育てをしながら働きに出てみると、自然と描きたい欲が高まっていったんです。そのタイミングで今の担当さんからご連絡をいただいて、とりあえず描いてみたのが『やまとは恋のまほろば』の読み切り版。それがまさかの連載になって……。決まったときは、信じられないような気持ちでいっぱいでした。でも、無事に配信されて、読んでくださった方たちの声を聞くと本当に嬉しくて、あらためてマンガ家になれてよかったなと思います」

「読み手を癒やすような作品」を目指して作り上げた浜谷さん。せっかく掴んだチャンスは、もう離さないという。

「今はマンガを描くことが生活の一部になっています。だからこそ無理はせず、長く続けていきたい。まずは、本作を丁寧に描いていくことが目標ですね。穂乃香たちの気持ちを大切にしながら、それぞれがどんなふうに成長していくのか、どんな選択をするのかを描き切りたいと思います」

取材・文=五十嵐 大

浜谷みお
はまたに・みお●大阪府在住。2007年、集英社が主催する金のティアラ大賞で銅賞を受賞しマンガ家デビューするも、11年に一度断筆。マンガ家への夢を捨てきれず、『やまとは恋のまほろば』にて再デビューを果たす。

 

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