『ダンまち インフィニト・コンバーテ』プレイ体験記&インタビュー③:大西沙織(アイズ・ヴァレンシュタイン役)編

マンガ

更新日:2020/4/30

『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか インフィニト・コンバーテ』 
11月28日発売
PlayStation®4/PlayStation®Vita/Nintendo Switch™/ Windows(DMMにてダウンロード版のみ発売)
(C)大森藤ノ・SB クリエイティブ/ソード・オラトリア製作委員会 (C)MAGES.

 11月28日に発売されるゲーム、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか インフィニト・ コンバーテ』(以下、『ダンまちIC』)。原作・TVアニメの物語を序盤から追体験できるメインストーリー、ダンジョン探索と緊張感を伴ったバトル、そして『ダンまち』最大の魅力でもあるキャラクターたちとのたくさんの会話劇――『ダンまち』のファンはもちろん、さまざまなプレイヤーにとって楽しめる要素が詰まった1本になっている。今回の特集では、本作に出演しているメインキャスト、ベル役・松岡禎丞、ヘスティア役・水瀬いのり、アイズ役・大西沙織の3名にインタビュー。実際に『ダンまちIC』を体験してもらいつつ、2020年7月からTVアニメ3期の放送が発表された『ダンまち』への想いを、たっぷりと語ってもらった。第3弾は、アイズ役の大西沙織が登場。先週お届けした2本のインタビューとあわせて読んでみてほしい。

フィンくんとのデートイベントがあるのは、大西個人としては嬉しい(笑)

――『ダンまちIC』をプレイしてみて、いかがでしたか?

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大西:純粋に楽しいなって思いました。でき上がったらこんなに楽しいゲームになってるんだなあって、プレイしてみてすごく実感してます。個人的に楽しかったのは、自分で操作するバトルですね。エフェクトとか、SDキャラがかわいらしくて。『ダンまち』の世界観をちゃんと体感できるんだけど、そこまで怖くない、みたいな。原作やアニメを観てくださってる方にはお馴染みのモンスターが出てくるんですけど、それがミニマムなSDになったときに、ちょっとかわいいなあって思いました。

――収録を振り返ってみて、印象的だったセリフやシーンはありますか。

大西:原作やアニメを忠実にやってる部分と、このゲームでしか見られないオリジナルの部分があると思うんですけど――アニメでは、ヘスティアとアイズって意外と会話してないんですよ。でもこのゲームではデートイベントがそれぞれのキャラクターとの間であって、じゃがまるくんをめぐってヘスティアとの親睦が深まっていくストーリーが印象的でした。新しい味のじゃがまるくんを作ろう、みたいな。そういえば、この作品の台本をいただいたときに、ヘスティア役の水瀬いのりから「ヘスティアとアイズが大変なことになってる。仲よくなってるよ」みたいな連絡が来た気がします(笑)。アイズとヘスティアの関係って、ヘスティアが一方的に牙を剥いて、アイズはポケーッとしてるんですけど、このゲームのイベントでは、アイズからもヘスティアに矢印が向いている感じがしました。

――TVアニメや劇場版では直接関与していないキャラクターとの会話のシーンを録る機会もあったのかな、と思うんですけど、絡めて嬉しかったキャラは誰ですか?

大西:個人的に、フィンくんが大好きなんですけど、フィンくんは同じファミリアにいるので、アニメでも絡んではいるんですよね。そういう意味では、やっぱりヘスティアかなって思います。でも、フィンくんとのデートイベントがあるのは、大西個人としては嬉しいです(笑)。ゲームの収録って、ひたすらひとりで収録するんですけど、『ダンまち』はけっこう長くやってるので、自然と「こういう感じのお芝居がくるかな?」って思ったりすることがありますね。

――ひとりで収録する状況ならではの難しさと楽しさって、それぞれどんなときに感じますか。

大西:アイズはわりと感情の起伏が小さい子なので、だんだんゲシュタルト崩壊してくる、というか(笑)。感情の振れ幅がヘスティアのように大きかったら、このシーンは悲しい、このシーンは楽しいとか、演じていても感情を動かせて楽しいんですけど、アイズの場合はひたすら淡々と進むんです。長い時間ひとりで淡々と収録していると、たまに「私は今何をやってるんだろう?」ってなりがちで。そういうときに、自分の中で気持ちをリセットしたり、途中でヘスティアの音声を聞かせてもらったりすることで、「なるほど。ヘスティアはこういう感じだから、私はフラットなままでいいんだ」って思ったりします。アニメの収録では起伏が激しいキャラクターがいて、あまり感情の動かないアイズが受け止める立ち位置があるんですけど。

――張るセリフが多い作品ではあるので、フィジカルが問われるという話はよく聞きます。

大西:ヘスティアは、ひいひい言ってますね。私は、のどにはこないですけど――。

――メンタルにくる。

大西:そう、メンタルにくるんです(笑)。でも不思議なことに、誰かの声を聞けると安心します。

――感情の起伏がわりと緩やかなアイズですけど、『ダンまちIC』にはメインストーリー以外にも添い寝やデートイベントがありますよね。このあたりの収録では、いつものアイズとはちょっと違う感じを出せたりしたんでしょうか。

大西:アイズは、ベルくんに恋してるわけではないんですけど、ベルくんが自分から逃げていっちゃったりすると、「えっ、なんで。ぷう~」みたいな感じで(笑)、アイズなりに女の子らしい面が『ソード・オラトリア』で描かれていて、「アイズでもちょっと気になってる人に対しては、こういう心の動き方をするんだな」って思うシーンを先に演じることができていたので、それを基盤に応用する感じはありました。でも、やり過ぎないほうがアイズらしいので、そこはちゃんとセーブしつつ、ですね。

 アイズって、フラットなところと、わりと心が動いてるところとで、しゃべるスピードが変わってくるんです。フラットなときは語尾がパツッパツッて切れてるし、ゆっくりめなんですけど、心が動き始めるとテンポがよくなったり、語尾がやわらかくなったりするので、ちょっとしたニュアンスで心が開いてる感じ、距離が近くなった感じが表現できるかなあ、と思ってます。

たぶん、私の中には元から「ちっちゃいアイズ」がいた

――『ダンまち』のTVアニメ3期が発表されましたね。大西さんにとっても長く向き合い続けている作品だと思うんですけど、『ダンまち』とはどんな存在なんでしょうか。

大西:オーディションを受けたときは、こんなに長くやらせてもらえるとは思っていなかったので、本当に恵まれているなあって思います。やっぱり、原作の大森(藤ノ)先生からはすごく熱量を感じるし、それがあるから『ダンまち』がこれだけ動いていけるんだなあって思いますね。

――アイズって、パーソナリティがある程度わかりやすいキャラクターじゃないですか。ビジュアルや発する言葉に象徴されるように。とりあえず超ハイテンションな人ではない。一方で、こうして会話していると、大西さん自身はアイズっぽい感じではないのかな、と思ったりするんですけども。

大西:ははは。よく言われます。

――役者さんであるから、自分とはまったく違う人を演じることにやり甲斐を感じられるのかな、とも思うんですけど、大西さんとアイズの間にもともと精神的な距離感があったのだとしたら、それはどうやって縮めていったんでしょうか。

大西:アイズっぽくないっていうのは、ファンの方からも言われますし、キャストとかスタッフさんとか、みんなに言われるんですよ。でも、私、意外と「陰」の人なんです。わりと人見知りしますし、家に帰ると静かにしていたいタイプだし、頑固なところもあります。たぶん外にはあまり見えてない、私が見る自分はそういう感じなんですけど、それってわりとアイズと通ずるものがあるのかなあ、と思っていて。アイズが普通に会話しているところと、戦いになったときとで、私の中ではスイッチがあるんです。戦いになると急にキリッとするというか、何か目的があって戦っていることがはっきりわかるように演じています。

 そういう、アイズのひとつ筋が通ってたり、芯の強さみたいな部分は――自分が芯のある人だと言ってるように聞こえちゃいますけど(笑)、私の頑固さと似てるのかなって思います。日常で、コンビニの店員さんとしゃべるときの私はアイズっぽい感じなんですけど(笑)、まったく対極にいるふたりが頑張って歩み寄って、私から「う~っ、アイズになるぞ!」というよりは、私の中のアイズに近い部分を集めてアイズを完成させた、みたいな感じかもしれないです。ゼロじゃなかった、というか。

――彼方の存在ではなくて、意外と近くにいたんですね。

大西:そうですね。だから、アイズが陽キャの皮をかぶったら大西になる、みたいな(笑)。わかりやすく言うと、たぶん私の中には元から「ちっちゃいアイズ」がいたんですね。

――「私の中にはちっちゃいアイズがいた」。いい言葉ですね。

大西:なんか、そういう感じじゃないかなあって思います。たぶん、いのりは私の中のちっちゃいアイズに気づいてます(笑)。

――(笑)演じている大西さんだからこそ気づいたアイズの魅力があるとすれば、それは何だと思いますか。

大西:難しいですね。いや、いっぱいありますよ? でもみんなは、まず見た目がかわいいっていうところから入るのかなあ――逆に、アイズのどこがいいって思います?(笑)。

――(笑)大西さんが話してくれたように、パッと明るい感じではないけれども、内に秘めたものが伝わってくるキャラクターであること、ですかね。戦いに向かうときはちゃんと目的があって、という話は、まさにそうだなあ、と思います。

大西:それです!――とか言って(笑)。アイズって、根っからのいい人なんですよね。まっすぐすぎるが故の、「邪」がないというか。私と似てません? 私も、いい人ってめっちゃ言われるんですよ――そこもアイズと似てる、と書いておいてください(笑)。

――自称(笑)。

大西:自称、いい人(笑)。でもやっぱり、意外と女の子なところが、私は好きですね。アイズには目的があって、早く強くなりたいんですけど、そんな中でも顔を赤らめたり、「どうやったらベルに恩返しできるんだろう」って考えて、バカ正直に膝枕しちゃったりするし(笑)。たぶん、真っ白なんでしょうね。真っ白の中に、「強くなりたい」っていう黒点みたいなものがある感じがします。真っ白だから、なんでも素直に受け入れちゃったり、ヘスティアがわざと意地悪してやってることにも真摯に向き合っちゃうけど、そういうところが素敵だなって思いますね――自分で言ってて、「真っ白な中の黒点」がだいぶ腑に落ちました(笑)。アイズの目標には、憎しみや復讐といった真っ黒な気持ちがあったりもすると思うんですけど。それ以外はすごく心がきれいな子だなって思います。

――大西さんにとって、アイズはどういう存在ですか?

大西:なんだろう、力を抜いていていい場所、そのままでいい場所という感じがしますね。わりと、ひとりでいるときの私に近いので(笑)。かぶっていたものを全部取っ払って、脱いでいって、「ただいま~」って帰ってきたらアイズになってる、みたいな。キャラクター自身が素直なので、何も飾らず、そのままでいていいんだなって思えるキャラクターかもしれないです。

――そんなアイズを演じる『ダンまち』の収録は、ほんとにいい雰囲気だし熱い現場だなって皆さんの話を聞くたびに思うんですけど、この作品の収録に参加することで、大西さん自身はどういう部分が成長したと思いますか。

大西:最初は、すごく緊張してました。私、セリフを音で追ってしまうことがあって、はじめの頃は「ちゃんとセリフ言わなきゃ」みたいな感じでやっていたと思うんですけど、4年経って、現場もみんな顔見知りで家族みたいな感じになってきたので、すんなり素直にアイズになれるようになったな、と思います。あと、私、劇伴が好きなんです、音楽を作ってる方とお話させていただいたり、音楽のレコーディングに参加させていただいたりしたんですけど、スタッフさんの熱量にも感動しましたし、「みんなでいいものを作っていかなきゃなあ」って、常に意識させてくれる現場だと思います。

松岡さん、あなたはベルくんを演じているのです。松岡さんの個人的な気持ちは関係ありません。なので、アイズを追いかけてください(笑)

――先に取材させてもらった松岡さんと水瀬さんから、大西さんへのメッセージがありまして。ヘスティア役の水瀬さんからは、メッセージではなく謝罪でした。1期の頃の彼女はすごく人見知りで、当時大西さんがグイグイ来たから「仲よくなれない」と思って冷たくしてしまった、傷つけてしまったと思っているので、謝罪をしたい、と(笑)。

大西:なるほど(笑)。許すよ? 気にしてないよ。これからも仲よくしようね――小学生みたい(笑)

――(笑)。

大西:TVアニメ1期の収録が始まる前に、私と松岡さんといのりの3人で、『ダンまち』の発表ニコ生みたいな番組があったんです。そのメイクルームで、私といのりは初めましてだったんですけど、そのときは完全に人見知りだったのか(笑)、かなり扉を閉じられて。その後、この作品のラジオのパーソナリティをふたりでやらせていただいて、それがきっかけでだんだん仲よくなったんですけど、そんなに冷たくされた印象はないですよ(笑)。まあ、ファーストコンタクトのときだけは、「なんだあ?」って思いましたけど。

――そのことを謝罪してたんですよ。とてもドライな対応をしてしまった、と。

大西:あっ、じゃあ今のなしで。とっても傷ついたよ(笑)。でも、仲よくなれたからいいよ。

――(笑)松岡さんからのメッセージは――「なんでアイズ?」って繰り返し言ってました。

大西:出た! ほんとに、ずっと言ってるんですよ。それへの回答は――「松岡さん、あなたはベルくんを演じているのです。松岡さんの個人的な気持ちは関係ありません。なので、アイズを追いかけてください」と(笑)。

――個人的な気持ちは関係ない(笑)。

大西:関係ないです! 役者ですから。アニメ1期のオーディオコメンタリーを松岡さんとふたりでやらせていただいたときから、ずっと言ってるんですよ。「なんでヘスティアじゃなくてアイズなんだ! なんでだ!」って(笑)。こっちからしたら、「ベルくんの心がそれだけ惹かれるくらいの魅力がアイズにあったということなんですから、つべこべ言わずに受け入れてください」と、書いてください(笑)。

――(笑)しかし受け入れないまま、今に至ってるわけですね。

大西:そうです。だから、松岡禎丞さん個人として、ヘスティアが好きな気持ちは持っていていただいて構いませんけども、大西がいる現場では決してそれを口になさらぬよう、お気をつけあそばせ、と言いたいです(笑)――まったく、もう~。

――では最後に、このゲームをプレイする方、TVアニメ3期を楽しみに待っている『ダンまち』ファンの方に、メッセージをいただけますか。

大西:原作小説が好きな方も、アニメが好きな方も、劇場版から入った方も、みんなが楽しめるゲームだと思います。むしろ、原作は知らないけど『ダンまち』が気になっている人にとっても、ストーリーモードで原作をしっかり追ってくれているので、この『インフィニト・コンバーテ』から入っても『ダンまち』を楽しめる、そんなゲームになっているので、ぜひ楽しんでいただければと思います。あと、めちゃくちゃかわいらしいシューティングゲームが――「ダンまちでシューティングは間違っているだろうか」(初回特典のダウンロードコンテンツ)という、アイズがひたすら右に進むシューティングゲームがついてるんですけど、すごくキャッチーでかわいらしいドット絵のゲームで、私はハマりました。

――ありがとうございました。ちなみに、大西さん自身がプレイするとき、サポートキャラには誰を連れていきますか。

大西:ひとりは、フィンくんですね。ミアハはいないんですか?

スタッフ:ミアハはいません。基本、神様はダンジョンに潜れないから。あと、残念ながらフィンも連れていけません。

大西:えっ、ウソ!? 真っ先に連れていきたかったのに。じゃあ、ヴェルフと、ベートですかね。イケメンふたりを従えていこうかな。

――ベルくんでは、ない。

大西:あっ、ベルくんではないです(笑)。

取材・文=清水大輔

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