「自分が何をしたら楽しいのかを、日々考えています」『ひとりぐらしこそ我が人生』カマタミワさんインタビュー!

マンガ

更新日:2019/12/23

 忘れられない人や、出来事を漫画にしたブログ「一人暮らしカマタミワの 半径3メートルのカオス」(http://kamatamiwa.blog.jp/)が大人気のカマタミワさん。カマタさんのように楽しく暮らしたいという女性から男性まで、圧倒的な支持を得ています。

 先日、KADOKAWAで行われた読書会で、カマタさんの著書『ひとりぐらしこそ我が人生』(KADOKAWA)が課題図書に選ばれると、会場には、全国各地から多くのカマタさんファンが集まりました。

『ひとりぐらしこそ我が人生』(カマタミワ/KADOKAWA)

 ダ・ヴィンチニュースは、読書会直後のカマタさんにインタビューを敢行! カマタさんが今気になっていること、そして今後描いてみたい作品についても聞いてみました。

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――読書会、お疲れ様でした。終始、大盛り上がりのイベントでしたね。

カマタミワさん(以下、カマタ):読者の方とお会いする機会はなかなかないので、私もすごく楽しかったです。

――参加者の方々にお話を聞くと、「カマタさんの本を見て、◯◯をやってみた」という方がたくさんいらっしゃいました。「安居酒屋メニューのレシピとも言えないレシピ集」を見ながら、実際に作ってみたとか。

カマタ:はい。「大人のひとり遠足」を見て、高尾山に登ってみたという方も何人かいらっしゃいました。「やってみました!」というお声を直接聞くことができて、すごくうれしかったです。

――カマタさんがすごく楽しそうなので、読んでいるほうも自然とやってみたいという気持ちになります。

カマタ:私自身、本を読んで真似してやってみるということが、すごく好きなんです。普通にやるよりも、テンションが上がるんですよね。物事を楽しむコツのひとつだと思います。

 なので、自分が本を書くときは、読者さんが「やってみたい!」と思えるような内容を入れたいと常々思っていました。それも、お金をかけずにすぐにできるようなものを盛り込みたかったんです。

『ひとりぐらしこそ我が人生』より

――カマタさんはいつも、日常に潜むおもしろいことを読者にシェアしてくれますよね。誰に見せるわけでもなく、いかに自分が楽しめるかを重視していると感じます。そういう点でいうと「誰かに見せること」が目的である昨今のインスタ映えブームとは、対極にあるのかなと思います。

カマタ:インスタに好きな写真をアップして、自分のテンションが上がるのなら、素敵なことですよね。自分をより楽しくするためのツールがあるって、すごくいいことだと思います。

 私の場合は、それよりも安い居酒屋のほうがテンションが上がるから、そっちを選んでいるだけなんです。

――カマタさんも、“映える”ものを考えたりするんですか?

カマタ:映えるとはちょっと違うかもしれませんが、すごい変な形の大根とかたまにあるじゃないですか。そういった、インパクトのあるモノはつい撮影したくなっちゃいますよね。「ドリルみたいな形の大根があったよ!」って、みんなに見せたくなります。

これが「ドリルみたいな大根」!

人見知りを直すためのデータを収集中

――カマタさんはご自身を「記録魔」だとおっしゃっていますよね。『ひとりぐらしこそ我が人生』の中でも、玉ねぎを切るときに泣かない方法が表でまとめられていて、すごく参考になりました。

カマタ:玉ねぎが目にしみて辛いと書いたら、読者さんたちから解決方法をたくさん教えていただいたんです。それを実践してみました。

 私、同じ問題にずっと引っかかっているという状態が、あまり好きじゃないんです。

 なので問題にぶつかったときは、クリアする方法を考えて試してみて、その結果を精査してまた問題分析に戻るということをしています。

――毎日何かしら研究されているんですね。現在も、記録を取られているんですか?

カマタ:並行して、いっぱい記録しています。

 たとえば、自分の健康管理についての記録です。体調を崩したことをきっかけに、つけ始めました。毎日ちょっとずつ健康に関する何かを試しては、どんな結果が出たのかを記録しています。似たような感じで、美容方法もいろんなことを試しながら、自分に何が合っているかを分析しています。

 あとは、人見知りを直すためのデータも取ってますね。

――人見知りを直すデータについて、詳しく聞きたいです。

カマタ:これもほかのデータと同じで、まず、自分がどうして人見知りなのか、原因を洗い出していきます。そして、それをクリアできる方法を考えます。実際に人と会ったときにその方法を試して、結果をリストアップしていくんです。結果を精査したら、また次の方法を試す…ということの繰り返しです。こういうことが好きで、楽しいんですよね。

――研究の成果は出ているでしょうか?

カマタ:少しずつですが、人見知りが直ってきました。

“はじめて日本に来た外国人ごっこ”をやってみたい

『ひとりぐらしこそ我が人生』より

――『ひとりぐらしこそ我が人生』の中の「大人のひとり遠足」では、はじめて高尾山に行ったときの様子が描かれていました。今後、東京都内で行ってみたいと思う観光スポットはありますか?

カマタ:いっぱいあります。今一番散策したいのは新宿・歌舞伎町です。ソフィア・コッポラ監督の『ロスト・イン・トランスレーション』という映画があるのですが、それに歌舞伎町が登場するんです。でも、すごく不思議な街に映ってるんですよ。日本人から見た歌舞伎町と、外国人から見た歌舞伎町って、全然違うイメージということがよくわかります。それは歌舞伎町だけではありません。外国人向けの日本ガイドブックを見ると、下北沢が赤提灯の街みたいに紹介されてたりしますから。

――日本人からしたら下北沢は、若者やカルチャーの街ですよね。赤提灯のイメージはないです。

カマタ:そうなんです。なので、今度やってみたいのは「はじめて日本に来た外国人ごっこ」ですね。歌舞伎町に観光に来た外国人は、やっぱりロボットレストランとか行くのかなとか、コースを考えるだけでも楽しいですよ。

――カマタさんが、外国人向けのガイドブックを見て、東京散策するのをぜひ見てみたいですね。今みたいなお話を聞いて思うのが、カマタさんは新しいコンテンツを考えるのがすごくお上手ですよね。

カマタ:コンテンツを作っているというよりも、自分が何をしたら楽しいかを探ることがすごく重要だと思っています。旅行にいくと、必ず定番の観光スポットってひとつはありますよね。でもそこにあえて行く必要はなくて、たとえ地味でも、自分が観たいと思うところに行くほうが意味があると思うんです。自分の好みや嗜好を、常に考えるようにしています。

『ひとりぐらしこそ我が人生』より

――自分が何に反応するかをちゃんと捉えることも、ひとつの能力だと思います。どうすればカマタさんのように、自分の好みに敏感になれるのでしょうか?

カマタ:実は私も今、そのやり方を考えている真っ最中なんです。居酒屋ごっこをしたら楽しいとか、そういう細かいことなら思いつくんですが、もっと夢中になれるものがきっとあると思うんですよね。特に今は趣味が仕事になっているので、完全に趣味と言い切れるものがほしいんです。新たに大きく反応するものを見つけるにはどうしたらいいか、「これだ!」と思う方法が見つかったら、真っ先に読者の皆さんにお知らせしたいと思います。

いつか無責任に衝動のままに、「萌え」を描いてみたい

――今後、やりたいことのひとつに、「完全にフィクションの話を描いてみたい」という夢があるとお聞きしました。何か描きたいテーマはありますか?

カマタ:最近気になるのは、“萌え”にまかせて描いている作品。すごくおもしろいんですよね。

――萌えにまかせて…というのは、どういうことでしょうか?

カマタ:ツンデレ男子とか、イケメンだけどド天然とか、腐男子とか、「こういうキャラクターが好き!」という強い思いが伝わってくる作品ですね。作者自身が反応するものを描いているからこそ、読んでいるほうも楽しいんだと思います。

――カマタさんは、どんなジャンルに萌えを感じるんですか?

カマタ:私は多分、関係性に萌えるタイプなんです。年の差とか、下剋上とか。男女の物語だと、簡単に結ばれないものが好きです。根底にあるのは、子供の頃に読んだ高橋留美子先生の『らんま1/2』ですね。

――乱馬とあかねがくっつくまで、何十巻もかかりましたよね。

カマタ:そうです。それにめちゃくちゃ萌えたのが、原体験です。すごく壮大な物語を描いてみたいという夢もあるのですが、その前に、自分の萌えに忠実に描いてみたいという気持ちもあります。無責任に衝動のままに。

――カマタさんが衝動のままに描いた作品を読むのが、楽しみです!

文=中村未来(清談社)