ブクガ、覚醒。3rdアルバムリリース直前、それぞれの想い――Maison book girl個別インタビュー③(和田輪編)

エンタメ

2019/12/16

 12月18日、Maison book girl(以下ブクガ)のメジャー3rdアルバム、『海と宇宙の子供たち』がリリースされる。「夢」をコンセプトにした2018年11月リリースの前作『yume』は、ブクガのすべての楽曲を担う音楽家・サクライケンタの才気が全編を包む素晴らしいアルバムだったが、新作『海と宇宙の子供たち』には、今年の春から夏にかけて発表された2枚のシングル『SOUP』『umbla』でも方向性が示されていたように、「歌」を前面に打ち出した楽曲が揃った。メンバー4人のパフォーマンス面の成長に伴い、楽曲の中で表現できる幅を飛躍的に広げてきたブクガは今、「覚醒」の時を迎えている。『海と宇宙の子供たち』は、今後ブクガの音楽が広く届き、多くの聴き手を巻き込んでいくことを予感させてくれる1枚である。

 今回は、メジャー3rdアルバムのリリースに向けて、メンバー4人とサクライケンタ、それぞれ個別に話を聞くことで、『海と宇宙の子供たち』が完成するまでの背景に迫っていきたい。第3弾は、和田輪のインタビューをお届けする。音源を発表するたび、ステージを重ねるたびに、歌い手として磨き上げられていく、和田輪の「歌」へのこだわりとは?

自分が出せる声の幅が広がったことで、その中での取捨選択ができるようになった

──メジャー3枚目のアルバム、『海と宇宙の子供たち』。すごくいいアルバムになりましたね。

和田:ありがとうございます。

──まずは、このアルバムについて感じている手応えから話してもらえますか。

和田:やっぱり、歌が前に来る曲が以前よりも増えたじゃないですか。それは、歌う側としては嬉しいことで。『yume』のときは、けっこういろんな曲を歌ったけど、実験的な感じがありました。歌ったことない感じの曲を与えられて、その場で初めて出た声を録る、みたいな感じだったんですけど。今回はボイトレの先生もついたし、ちゃんと計画して、考えて歌えたなっていう手応えが、たぶん4人ともあって。「やっと歌をやる人たちになってきたな」っていう感じです(笑)。

──(笑)歌が前面に来ている曲が揃いつつ、サクライさんのクリエイティブならではの感触もしっかり入っているところが、このアルバムの素晴らしいところで。メンバー的には今、「ブクガらしさ」をどういうものとして考えているんでしょう。

和田:そうだなあ……どんな曲でも、この4人の声が乗ったらブクガらしくなるんじゃないかと、とわたしは思います。声質が4人違っていて、ユニゾンの相性がすごくいいことを、最近特に感じますね。でも、「ブクガらしくやろう」という気持ちは、わたしにはなくて。「結果、ブクガらしい」なので。ブクガらしさが先行しているわけじゃなく、これまで積み重なってきたやつをすべて聴いてもらわないと伝わらないものもあるので。この4人がいること自体がブクガらしさ、だと思います。

──ブクガは今年リリースも立て続けにしているし、ツアーも2本あったので、精力的に活動している印象があるけれども、その中でこのアルバムは何を見せるべきものだと考えてましたか。

和田:ブクガが本当にやりたいこと、まわりの目を気にせずにやりたいことというのは、インディーズ時代からずっとやってきていて。最近ブクガに触れた人たちにも、それを聴いてほしいと思う作品たちが今、溜まっている状態です。今は、それをより広くの人に聴いてもらうためにはどうしたらいいのかっていう段階で、誰が聴いてもいい曲だと思えるような曲たちをリリースすることで、ブクガが今までやってきたことへの間口を広くするアルバムなのかなって思います。

──間口を広げるという意味で、このアルバムの中では特に“ランドリー”が象徴的な楽曲なのかな、と。サクライさんは、この曲を作るときにめちゃくちゃに悩んでいたと聞いたんだけど(笑)。

和田:(笑)めちゃくちゃに悩んでいました。たぶんサクライさんは今まで、「自分が本当に作りたいもので売れないと意味ない」っていう考えだったと思うんですよ。わたしもそうだし。だけど、人に届けることに意義を見出したというか、聴く人のことも意識するようになったからこその悩みなのかな、と感じます。

──サクライさんの創作がより間口の広い方向に向かっていくのと同時に、曲を受け取って歌う側も同じように考えて、アウトプットしていった?

和田:はい。最初の頃は、ブクガを認識してる方たちの層がアイドル現場だったので。対バンライブでも、他の子たちに求めているものと、わたしたちが提供できるものの乖離がすごくて(笑)。でも、そういう場所でライブをやるからには、そこにいる人たちに刺さるものをやらないといけない。そういう葛藤がありました。ブクガでやりたいことがなかったわけではなくて、そのバランスをどうしようか、という感じだったんですけど、最近はいろんな人のおかげで、届くところに届くようになったし、歌で悩んだりしても、先生がいて、的確な答えをもらえるので、やりやすさは当時とは比べものにならないですね。

──アルバムにしても、ライブにしても、歌がすごく進歩している。というのは今のブクガの強みのひとつだと思うんだけど、特に和田輪の歌は進歩、というか覚醒してるなあ、と思っていて。

和田:やったあ! ふふふ。

──なぜ覚醒できたのか、ということを聞きたいのですよ。過去に話していた内容から想像すると、たとえば「自分はこういうことがいいと思う。それに対して理由を持っていたい」という話をしていたと思うんだけど。自分の歌について、何かを理想に設定して、そこに到達するためにセルフコントロールをした結果が今なのかな、と。

和田:なるほど。たぶん、今はそうではなくて。自分が出せる声の幅が広がったことで、その中での取捨選択ができるようになったんです。今までは、声の種類もあまりなくて、少ない選択肢の中でひとつしかいいものがなかったから、それをずっとやってた、というイメージでした。でも最近は、選択肢が増えて、いいと思える声の種類が複数あります。いいと思える声の種類が増えたことで、表現の幅が広がったり、目指す場所が複数になったりした。それが、覚醒したと思ってもらえるのかなと(笑)。

──シンプルに、技術の話である、と。

和田:そうですね。今までは、「自分がこの声を出せる」ということにだけ、価値を見出していたというか。でも今は、「こういう声をよいと思う感性が、わたしの強さなんだ」っていう考えを持つようになりました。なので、視野が広がったんじゃないかなって思います。

──技術の向上とともに、曲に対して自分が選択するジャッジの基準も、進化している。

和田:基準も進化したし、純粋に歌唱力が上がることによって、たとえば裏声でしか出なかったところに、ミックスボイスと地声という選択肢が増えたら、表現の幅も広くなるじゃないですか。そこに息をどのくらい乗せるのか、とか。選べる幅ができたことで、今までやりたいと思っていたけどできなかったことが表に出ていってる、という感じです。

──では今、自分の歌にはすごく自信がある?

和田:そうですね。今できないことでも、「大丈夫、それも今練習してるから」って言える強さ、自信を持てるようになりました。これまでもひとつひとつクリアしてきたから、これからもできるようになる、という確信が持てています。

──ブクガのこれまでを見ていて、「戦いの歴史」があったんじゃないかな、と思うんですよ。「このままでいいんだ」「これでやっていくんだ」となったことはなくて、もともと持ってた課題はクリアしていきつつ、新しい課題とどんどん向き合っているところがあるのかな、と。その戦いの歴史の中で、ブクガは何を得てきたと思いますか。

和田:戦いというのもまた、広義ですよね。外との戦いであったり、自己との戦いであったり。その結果、得られたものは……その時点でできないことでも、「これからなんとかしたらできるようになる」という自信、ですかね。歌はうまくなっていると思うし、いろんな人の協力も得られているけど、ライブの動員だけは、今の悩みです。

自分がいいと思えないものは絶対リリースしたくないし、いいと思えないライブは絶対したくない

──以前話を聞かせてもらって、「表現者・和田輪」の資質として、「自分の中での正義を強く持っている」というところがあるのかな、と感じたんだけど、ブクガが成長しながら歩みを続けている中で、その資質に変化を感じてたりするんでしょうか。

和田:正義を持っていること自体は変わらないです。ただ、何か目標とする地点を目指しているのではなく、自分の正義があって、そこに何かが来たときに、「こっちです」「いや、こっちです」って自分で選んでいくことは絶対なんですね。それが、なんていうかなあ……その結果の地点がひとつではなく、無限になった、というか。

──無限!

和田:そう。自分の正義に反していなければ、その結果たどり着く場所が今見えてるところじゃなくて、もっと先でもいいし、まっすぐだと思ったら上だったとしてもいいし。これから、もっと好きなものが増えたり、嫌いなものが増えたりするのかもしれないけど、それでもいいかなって今は思ってます。

──ブクガは、『海と宇宙の子供たち』というアルバムを作ったことで、その存在を広くアピールできる場所に立とうとしていると思うんですよ。その中で、ブクガはどういう存在でいられたらいいと思いますか。

和田:わたし個人は、ほんとにやりたいことしかやりたくない人なので(笑)。たぶん、これからも技術面を高めて、わたしが好きな歌が歌えるように鍛えていくのみ、です。同時に、まわりの方々が、「もっと人を呼びたい、広げたい」という気持ちが強いので、その中に入れてもらうことで、今のわたしがこうしていられてるのかな、と思っていて。なので、わたしがやりたいことをやりつつ、それがブクガ全体としての力になれたらいいなって思います。自分がいいと思えないものは絶対リリースしたくないし、いいと思えないライブは絶対したくないので。

──さらにシンプルに言葉にしてもらうと、和田輪個人として、ブクガでこれからやりたいこととは?

和田:いい歌を歌うことです。

──それだけ「いい歌を歌うこと」へのこだわりを貫くルーツの部分についても、言葉にしてみてもらえますか。

和田:歌うことは昔から好きで、それによって誰かに何かを伝えたい、ということではなく、自分からいい音が発せられるのが気持ちいいからやりたい、って欲求に近いです。これは理屈ではなく――理屈って、何かがあったときに言葉で噛み砕いて説明したり、6拍子のグルーブ感を「6」と数えて誰かに言葉で伝える、ということじゃないですか。だから結果というか、最終到達地点は、わたしの感覚から生まれた何かであって、それについて自分の頭で考えて、「こういう理由があって、こういう経験をしてきたから、今これをいいと思っている」ということを、自分は常に考えているんだと思います。

──1月5日に開催するLINE CUBE SHIBUYAでのワンマンライブは、歌の部分でも成果を見せられる、この上ない舞台でしょうね。

和田:まだライブの方針はわからないですけど、楽曲の方向性としても人に伝わりやすいようになっているし、仮に音楽的に難しいことをしたとしても、パフォーマンスがよかったら、好きな曲のジャンルじゃなくても「すげえっ!」って思ってもらえると思うんです。そういうライブを、できるようになりたいですね。なんというか、表現で伝えたいことがないわけではなくて、広くわかりやすく伝えるために、技術面も必要と感じている、みたいな。今の4人のパフォーマンスは、以前よりすごくいいと思っているので、純粋にそれを見せられたらいいなって思います。

──では最後に、次のメンバーにメッセージをお願いします。コショージメグミに一言。

和田:ちょうど今、ワンマンライブのセトリや演出を会議してるみたいです。わたしたちは関わってないんですけど、コショージがメンバーの関わる窓口になってくれているので……頑張ってください!

次回(コショージメグミ編)は12月17日配信予定です。
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取材・文=清水大輔