織田裕二が頭取として銀行再生に挑む、経済エンターテインメント『連続ドラマW 頭取 野崎修平』チーフプロデューサー青木泰憲インタビュー

エンタメ

2020/1/12

 2018年、織田裕二が強い正義感と厚い人情で大手都市銀行の不正と戦う銀行員を演じ、大ヒットした『連続ドラマW 監査役 野崎修平』。その支持に応えるべく、続編『連続ドラマW 頭取 野崎修平』が、WOWOWにて1月19日より放送スタート! 国有化された銀行に頭取としてカムバックした野崎はどのように経営を再建し、理想とする銀行づくりを進めていくのか。本作のチーフプロデューサー・青木泰憲さんに、制作のエピソード、ドラマの見どころを聞いた。

青木泰憲さん

青木泰憲
あおき・やすのり●1969年、神奈川県生まれ。WOWOW制作局ドラマ制作部エグゼクティブ・プロデューサー。主な作品に、山崎豊子原作『沈まぬ太陽』、池井戸潤原作『空飛ぶタイヤ』『アキラとあきら』、井上由美子脚本「パンドラ」シリーズ、髙村薫原作『マークスの山』、大鐘稔彦原作『孤高のメス』など多数。

 

『連続ドラマW 頭取 野崎修平』

「織田裕二さんには、つい見てしまうような、唯一無二の存在感がある。そんな織田さんと、巨悪に向かっていく熱きヒーロー“野崎修平”のキャラクターが、観る方の中で気持ちよく重なった。その点に尽きるのではないのでしょうか」
『連続ドラマW 監査役 野崎修平』が、好評価を得た理由を青木泰憲さんはそう分析する。

「野崎修平は、タイトルに名前を冠するほど、その肩に作品のすべてがかかった人物。ゆえに、それを背負える方が演じないと、このドラマは成立しなかった。正義感を胸に突き進む野崎は、視聴者の方々が期待する織田裕二さんのイメージにもぴったりだったと思うんです」

 バブル経済が崩壊し、金融ビッグバンに銀行業界が直面した1990年代末。不良債権をひた隠しにする銀行、汚職に手を染める政治家と、日本が金と権力にまみれていた時代、小さな支店の支店長から、取締役の職務を監査する“監査役”へ突然の辞令を受ける男――原作となった『監査役 野崎修平』は、98年の連載開始直後から、ビジネスマンの間で熱烈な人気を博した経済コミックだ。

「数々の企業ドラマを手掛けてきたなか、2016年に山崎豊子さん原作の『沈まぬ太陽』を、〈連続ドラマW〉でプロデュースしたんです。それは自分の人生の中でとても大きな経験として残っていて。理由のひとつが、あれだけの長編をもとにドラマをつくりあげたことへの意義でした。そうしたものを再び手掛けてみたいと様々なストーリーを探すなか、〈連続ドラマW〉はマンガから原作をあまりとっていないことに気付いた。『監査役 野崎修平』は16巻(『銀行大合併編』も含む)にもおよぶ長編、それに続く『頭取編』もある。大人に向けた企業エンターテインメントストーリーは、〈連続ドラマW〉を観てくださる方々にきっと楽しんでいただけると確信したんです」

 池井戸潤原作『空飛ぶタイヤ』など、〈連続ドラマW〉は、リアリティを徹底的に追究し、本格的な社会派ドラマを次々と誕生させてきた。だが、「野崎修平」シリーズは、ドラマのつくり方に少し特徴があるのだという。

「原作マンガが持つエンターテインメント性と、これまでやってきたリアルな社会派ドラマとの中間に位置するような作品にするべく、両者の良さを見つめたつくりにしているんです。だから、エンターテインメントの濃度がいつもより高い。それは、登場人物各々のキャラクターの強さにもしっかりと表れていますね」

 織田裕二演じる野崎修平は言うまでもなく、松嶋菜々子演じる〈野心家の女性支店長・立川祥子〉、岸谷五朗演じる〈武闘派の剛腕専務・武田真吾〉、そして古谷一行演じる〈権力を意のままに操る頭取・京極雅彦〉と、観る人の脳裏に鮮やかに刻まれる登場人物たち。その面々は、1月19日よりスタートするシリーズ続編『頭取 野崎修平』で、さらなる存在感を携え、再び登場してくる。

『連続ドラマW 頭取 野崎修平』

立川祥子との対立を主軸に再構築したストーリー

前作では、監査役として、おおぞら銀行の闇を晒した野崎が、その闇の中核だった京極頭取を辞任へと追い込んだ後、頭取に就任。だが銀行国有化に伴い、その役を辞す場面までが描かれていた。『連続ドラマW 頭取 野崎修平』の舞台はその3年後、荒廃したおおぞら銀行を救うべく、野崎が頭取に再任し、社会に貢献できる理想的な銀行づくりを目指し、奮闘するストーリーが描かれる。

「10巻にわたる原作を全5話のドラマに構成するにあたり、松嶋菜々子さん演じる立川祥子(原作では橘祥子)を、銀行の中核にいる常務という設定にして、野崎との対立の構図をつくりだした。そこを主眼にしたうえで、原作のエピソードを厳選し、ストーリーを構築していったんです」

 これまでとは違うやり方で経営再建しようとする野崎を失脚させようと画策する役員たち。そこには他行との合併推進派も蠢く。そして取引先企業のある隠蔽から、おおぞら銀行にさらなる危機が――。監査役から頭取へと立場が一変した野崎の新たな面が一話ごとに表れていく展開も見逃せない。

「監査役のときは常に上に挑んでいくポジションだった野崎ですが、トップとして多くの部下を率いる身となったいま、正義感からくる怒りを表出させるだけでは、組織をまとめあげることはできないとわかっている。織田さんと話していたのは、監査役の時より、柔らかで余裕のある野崎を見せていこうということでした。彼はおおぞら銀行から離れていた3年間、産業再生機構で様々な企業の再建に従事してきた。その経験が野崎に自信とゆとりを与え、改革の本質は“人”の意識を変えることだと痛感した――。そうした方向性のもと、若手を登用し、彼らを育てながら、彼らとともに働くという“野崎らしさ”も、映し出していきました」

 そこで野崎をアシストする若手行員として本作から登場するのが、風間俊介演じる〈銀行融資部の石原俊之〉 だ。はじめは、頭取として戻ってきた野崎のことを良く思っていなかった石原だが、託されたミッションに取り組むうち、考えを変え、銀行再生の一役を担っていく。そしてもう一人、新たな重要人物として登場するのが、小澤征悦演じる〈京極元頭取の息子・京極春樹〉。財務省主計局のエリート官僚であった春樹は、みずから望んでおおぞら銀行に役員として入り、野崎から頭取の座を奪い返すため、画策を繰り返していく。

野崎は頭取になってどう変わっていくのか

「このドラマをエンターテインメントとして楽しんでいただきたいのはもちろんですが、野崎の立場をご自身に置き換えながら観ていただくと、より臨場感を味わえる作品なのかもしれません。たとえば、自分が企画を出す立場から企画を決める立場になったとき。ビジネスマンであれば、そういうこともよくあるでしょう。その役職になったときに初めて見える景色や思いが巡ってくる」

 トップに立つ者の孤独や重圧が、〈頭取・野崎〉の姿から滲み出る。シリーズを通して観ると、それはさらに鮮明に浮かびあがる。

「監査役から頭取に。野崎というキャラクターはどう変わっていくのか。それが『連続ドラマW 頭取 野崎修平』のいちばんの見どころといえるでしょうね。さきほど、余裕を見せたいと申しましたが、心の中では彼も数々の苦悩を抱えている。野崎にとって、監査役時代、京極頭取は敵であり、大きな壁だったわけですが、自分が彼と同じポジションに就いたとき、己の中にも京極と通じるものを見つけてしまったり、さらに、その京極の息子が自分を仇とみなして倒そうと立ち向かってくるわけです。野崎はそれをどう受け止めるのか。立場が変われば人は変わる。でもそこにはやっぱり“野崎らしさ”があるんです。それを織田さんがエンターテインメントとして見事に昇華している。シリーズを通じて、そんな野崎修平の活躍を見届けていただきたいですね」

取材・文:河村道子 写真:干川 修

『連続ドラマW 頭取 野崎修平』

『連続ドラマW 頭取 野崎修平』(全5話)
1月19日(日)より 毎週日曜 22:00~[第1話無料放送]
原作:周 良貨・能田 茂(『頭取 野崎修平』集英社刊)
脚本:前川洋一 監督:権野 元 出演:織田裕二、松嶋菜々子、小澤征悦、風間俊介、岸谷五朗、瀧本美織、駿河太郎、泉 里香、小林且弥、渡辺翔太(Snow Man)、三浦誠己、小市慢太郎、野間口 徹、西田尚美、相島一之、宮川一朗太、宇梶剛士、古谷一行 
おおぞら銀行国有化から3年。再生の兆しが見えないなか、かつて監査役として銀行の闇を晒した野崎修平が同行の頭取に再び就任した。社会に貢献できる理想的な銀行づくりを目指し、改革に乗り出した矢先、元エリート官僚で京極元頭取の息子・春樹が取締役として就任。父親が築き上げた頭取の座を奪い返そうと、常務の立川祥子とともに野崎を失脚させるための様々な策略を企てる――。

再放送決定 『連続ドラマW 監査役 野崎修平』
1月11日(土)17:00~ (第1話~第4話)
1月12日(日)19:00~(第5話~最終話)
原作:周 良貨・能田 茂(『監査役 野崎修平』集英社刊)
脚本:前川洋一 監督:権野 元 出演:織田裕二、岸谷五朗、松嶋菜々子(特別出演)、古谷一行ほか
出世コースから程遠い行員生活を送ってきた野崎のもとに下りた辞令は、役員昇進である監査役への就任。だが、そこで銀行内の不正を目の当たりにし、この銀行を変えると決意する。そして辿り着いた銀行の抱える“究極の闇”。そこには頭取の影が……。やがてストーリーは銀行内に留まらず、魑魅魍魎うごめく政界へも発展していく――。