映画『酔うと化け物になる父がつらい』主演・渋川清彦「アルコールに溺れる父を演じるのに、現場でウィスキーのお湯わりを呑んだ」

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更新日:2020/3/19

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、映画『酔うと化け物になる父がつらい』で主演を務める渋川清彦さん。『半分、生きた』の著者・豊田利晃監督との深い関わり、そして新作映画への思いを聞いた。

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渋川清彦さん
渋川清彦
しぶかわ・きよひこ●1974年、群馬県渋川市生まれ。98年、豊田利晃監督の『ポルノスター』で映画デビュー。2016年に、『お盆の弟』で第37回ヨコハマ映画祭主演男優賞を受賞。近年の出演作は『アレノ』『榎田貿易堂』『ルームロンダリング』『柴公園』『閉鎖病棟 -それぞれの朝-』『37 Seconds』などがある。

『半分、生きた』は、映画監督・豊田利晃さんが自身の半生を綴った著書だ。豊田さんの初監督作品『ポルノスター』は、渋川さんの俳優デビュー作でもある。以来、渋川さんは現在まで豊田さんのドキュメンタリーを除く全作品に出演している。

「『半分、生きた』には、僕の知らない『ポルノスター』以前の豊田さんも描かれていて、興味深かったですね。『ポルノスター』以降はずっと知っているから。普段も一緒にいることが多いんですよね。この本にも出ているけど、一緒に旅して温泉にも入って」

 豊田さんが監督として特別なところとは?

「そうですね、いろいろな監督さんがいるけど、豊田さんは人生のすべてを映画に取り入れますよね。好きになった音楽も出会った面白い人も。そうやって人も物も巻き込んでいく力がすごい。豊田さんを厳しくて怖いっていう役者さんもいますけど、僕はそう思ったことは全然ないなあ。豊田さんには、いつも映画への愛があるから」

 豊田さんにとっても渋川さんは特別な人だ。『半分、生きた』の中には、2019年に公開された『狼煙が呼ぶ』は渋川さんなしには作れなかったという言葉がある。

「これからも豊田さんの映画には出続けたいですね。一人の監督の一生の全作品に出た役者って、多分世界にもほとんどいないでしょう。それやってみたい。豊田さんが好きだから、そういう役者でありたいと思います」

 渋川さんが松本穂香さんとダブル主演を務めている最新映画『酔うと化け物になる父がつらい』。この作品の監督・片桐健滋さんも、渋川さんの“映画の同志”だ。片桐さんはかつて、豊田さんのもとで助監督だったのだ。

「片桐さんとはいろいろ話せる関係なんです。だから、今回アルコールに溺れるお父さんを演じるにあたって、現場で実際に呑みながらやってみようかと。ウィスキーのお湯わりを。これ、片桐さんだから相談できました。どんな演技になるのかなと挑戦したかったんですね。でも、結局ほとんど酔えなかった。緊張してるし、周りの方は当然呑んでないですし、だから普段とあまり変わりませんでした」

 物語は、マンガ家・菊池真理子さんの実体験に基づいたコミックエッセイが原作となっている。

「重いテーマではあるんですが、ポップに仕上がっている。でもただの心温まる家族愛の話では決して終わっていない。家族の難しさ、わからなさ、みたいなものがこの映画で伝えられればいいなと思います。片桐さんと菊池さんの世界観は、とてもよくマッチしていますよね。僕自身、素直に面白いと思える映画です」

(取材・文:松井美緒 写真:干川 修)

 

映画『酔うと化け物になる父がつらい』

映画『酔うと化け物になる父がつらい』

原作:菊池真理子(『酔うと化け物になる父がつらい』秋田書店) 監督:片桐健滋 出演:松本穂香、渋川清彦、今泉佑唯、浜野謙太、恒松祐里、ともさかりえ、濱 正悟ほか 配給:ファントム・フィルム 3月6日(金)全国公開
●田所サキは両親と妹との4人暮らし。一見ごく普通の家族、しかし父はアルコールに溺れ、母は新興宗教にハマっていた。サキはそんな家族に悩まされ、徐々に自分の気持ちに蓋をして過ごすようになる。
(C)菊池真理子/秋田書店 ©2019 映画「酔うと化け物になる父がつらい」製作委員会