いつか『革命』を——。4年前から、私たちの合言葉でした。

新刊著者インタビュー

2012/6/6

「図書館戦争」シリーズはみんなの愛情でできています

 映画『図書館戦争 革命のつばさ』は、観どころ満載だ。オリジナルキャラクターも登場するが、ストーリーはあくまで原作に忠実。

 福井県の原子力発電所を武装テロリストが占拠、その手口は人気作家・当麻蔵人の小説の内容に酷似していた。合法的に検閲を行うメディア良化委員会は、比喩ではない「作家狩り」を宣言。笠原郁&堂上篤らが所属する図書特殊部隊は、「表現の自由」を守るため、当麻蔵人の身辺警護の任務にあたる。逃亡劇の舞台は東京から、西へ。ラブコメ度も全開、凸凹コンビの恋はついに決着を迎える──。

「例の泥臭い告白シーンは、やっぱり観どころです(笑)。それから、最後の活劇シーン。まだ完成した映像は観ていないんですが、映像的にもすごいものになると思います。そのシーンのアフレコに関する、素敵なエピソードがあるんですよ。今回、〈当麻〉役のイッセー尾形さんは、声優初挑戦だったんですね。みんなでアフレコをした後、イッセーさんがひとりで声を別録りする機会があったんです。その時に、〈郁〉を演じた井上麻里奈ちゃんがブースに残って、“私も一緒に声を出していいですか?”って。相手とナマで気持ちを交換させたほうが、芝居は絶対良くなる。麻里奈ちゃんは自分の録りは終わってるのに、〈当麻〉に寄り添うため、イッセーさんに寄り添うためだけに、声を一緒に出してくれたんですよ」

 語る言葉の一つ一つが、熱い。4年ぶりのアフレコ現場を体験した今、原作者として改めて感じていることがある。

「本当にみんな、この作品を大事にしてくれているんだなあって。深い愛情をもってスタッフさんもキャストさんも取り組んでくれたんだっていうことが、フィルムを観てもらえたらすぐわかると思うんです。原作のほうも同じでしたね。読者さんの声援がなかったら、いくら作家が望んでもシリーズを書き続けることはできませんから。『図書館戦争』は、みなさんの愛情が支えてくれた作品なんです」

 声援がさらに高まれば、『別冊』のアニメ化もあるかもしれない!? 劇場版を鑑賞し、原作を未読だという人は文庫を手に取って。愛で未来を、切り開こう。

取材・文=吉田大助 写真=下林彩子

劇場版映画公開記念パッケージが6月8日(金)に発売!

TV版『図書館戦争 Blu-ray BOX』

原作を大切にした高いクオリティーで話題を呼んだTVアニメ版ブルーレイが装いも新たに登場! 郁と鬼教官・堂上の出会いに始まり、『図書館危機』までを中心に描く。未放送話やキャストインタビューなど特典も満載!
2万6250円 仕様:Blu-rayディスク3枚組(全12話+TV未放送話「恋ノ障害」収録)、ブックレット(DVD初回版1巻同梱版再編集)、図書隊シール封入  特典:キャストインタビュー、関東図書隊緊急フォーラムほか 発売/アスミック・フジテレビ 販売/角川書店

『図書館戦争』をもっと楽しむためのサブテキスト

「図書館戦争」シリーズの作中には、現実に存在する本や作家をイメージさせるものが多く登場する。そこで、有川さんに『図書館戦争』創作裏話とともに、さらに物語世界を楽しむためのサブテキストを教えていただいたのでご紹介しよう。

紙『日米開戦』(上・下)

トム・クランシー/著 田村源二/訳 新潮文庫 ※絶版

日米間の貿易摩擦によって、米国が日本に対して強い不信感を抱いていた、1994年に出版。日本のジャンボ機がカミカゼ攻撃を決行し、米国の国会議事堂が崩壊、政府首脳は全滅する。その後、続編『合衆国崩壊』も刊行された。「9.11の同時多発テロとの関連性が当時、さかんに指摘されていたんです。そういうことがもし『図書館戦争』の世界で起きたら、当の小説家はどうなるだろう?と。〈当麻蔵人〉は、トム・クランシーのもじりです」(有川)

紙『コロボックル物語① だれも知らない小さな国』

佐藤さとる/作 村上 勉/絵 講談社文庫 580円

ぼくは小学校3年生の夏休み、峠の向こうの三角平地で、小人たちと出会った──。戦後日本文学初の、本格的ファンタジーシリーズ。「郁が子どもの頃、検閲で没収された本は、私の中では『だれも知らない小さな国』なんです。作者の佐藤さとるさんは、コロボックルの存在を知っていて書いたとしか思えない(笑)。ファンタジーを成立させるために必要なのは“ディテールのリアルさ”だっていうことを、この作品から学びましたね」(有川)

紙『星へ行く船』

新井素子/著 竹宮惠子/絵 集英社文庫コバルトシリーズ ※品切れ重版未定

人類が宇宙で暮らし始めた未来世界。19歳のあゆみは家出ついでに地球を捨てて、憧れの宇宙へ飛び出す。火星の事務所で一緒に働く、太一郎さんが気になって……。「SFでありながら、お仕事小説であり、あゆみちゃんの成長物語であり恋物語でもある。大好きな作品ですね。『図書館戦争』の〈郁と堂上〉は、〈あゆみちゃんと太一郎さん〉の影響がどうしても拭えませんね。ヒロインの口が悪くなって、行動も過激になってますけど(笑)」(有川)

紙『キノの旅』

時雨沢恵一/著 黒星紅白/イラスト アスキー・メディアワークス電撃文庫 557円

人間キノと、二輪車エルメスの旅を連作短編形式で綴る、ゼロ年代ラノベ最初の大ヒットシリーズ。世界の美しさが知りたいキノは、一つの国に3日間しか滞在しないルールの下、独自の価値観を持った国々を旅していく。「『図書館戦争』(1巻)にちらっと出てくる『荒野のカナ』は、この小説がイメージです。“あなたが読んでいる大好きな本が、検閲されたらどうする?”という可能性を、読者にリアルに感じてもらいたくて」(有川)

紙『レインツリーの国』

有川 浩 新潮文庫 420円

一冊の本をきっかけにメールを交わすようになった、書評ブログの書き手と本好きサラリーマン。自分に自信が持てない、本好きの彼女には、秘密があった。二人の恋愛の行方は──。「『図書館戦争』の中に出てきた架空の小説を、自分の手で現実にしてしまいました。しかも、『図書館戦争』を出しているのとは違う出版社で(笑)。我ながら、なかなか大胆な企画だったと思います。アニメでも登場させていただきました」(有川)