板倉俊之「誰もが騙されるトリックを、自分も仕掛けてみたいと思ったんです」

あの人と本の話 and more

更新日:2013/12/19

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、400ページ超えの本格エンターテインメント『蟻地獄』を上梓した板倉俊之さん。2年半をかけて執筆した同作は、出版社から依頼のあった前作とは違い、自発的に書き始めたもの。その出発地点には板倉さんの執筆欲を覚醒させる本があった。

「2009年に出した1作目の『トリガー』
浮かんだ映像をそのまま文章にしていく、
脚本っぽい書き方をしていたのですが、
他の小説はどういう書き方をしているんだろう
って興味が湧いて、
それで本格的に読書を始めたんです」

まず薦められて手にしたのは、道尾秀介『シャドウ』

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「“うわっ!”と圧倒されて、
そこから道尾さんの作品を読みあさりました。
『ラットマン』では、限りなく騙され続けて(笑)。
その後は、ハードボイルド小説の傑作、
レイモンド・チャンドラーの
『ロング・グッドバイ』に感動して。
そんな素晴らしい作品に触れるうちに、
猛烈にミステリーを書きたくなったんです」

『蟻地獄』は出版を念頭におかず、ただひたすら書き続けた。そのうちに“これはいける”という確かな手応えがあったという。

「主人公をバカにしたくなかった。
このハメられ方なら、誰でもハメられるでしょ?
っていうトリックを仕掛けたかった。
本作はそれが実現できたと思っています」

(取材・文=河村道子 撮影=首藤幹夫)
 

板倉俊之

いたくら・としゆき●1978年、埼玉県出身。東京NSC4期生。98年、堤下敦とお笑いコンビ「インパルス」を結成。以降すべてのコントの作・演出を手掛ける。CX『はねるのトびら』など数多くのバラエティ番組に出演。映画『ニセ札』『激情版エリートヤンキー三郎』などで俳優としても活躍。

 

紙『ジェノサイド』

高野和明 / 角川書店 / 1890円

急死したはずの父からメールを受け取った大学院生・研人と、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、不可解な依頼を引き受けた傭兵・イエーガー。交わるはずのない2人の人生が交錯した時、米国の情報機関が極秘に察知した“人類絶滅の危機”が明らかに! 圧倒的な読みごたえの、まさに“読むハリウッド映画”。

※板倉俊之さんの本にまつわる詳しいエピソードは
ダ・ヴィンチ7月号の巻頭記事『あの人と本の話』を要チェック!

 

『蟻地獄』

板倉俊之 / リトルモア / 1785円
悪友・修平とともに、裏カジノでの大儲けを計画した孝次郎。だがイカサマは見破られ、ペナルティは300万円! 5日後の期限までに用意できなければ、人質の修平は臓器売買のブローカーへと引き渡される……。金をつくるため、ある方法に気付いた孝次郎はひとり青木ヶ原樹海へと入っていく。スピーディーな展開から目が離せない、ノンストップ・エンターテインメント。