キボウカンパニーへようこそ! アニメ『シャチバト!』を語る①――堀江瞬(ミナト役)インタビュー

マンガ・アニメ

2020/4/6

『社長、バトルの時間です!』 AT-X、TOKYO MXほかにて毎週日曜放送中 (C)KADOKAWA・でらゲー・PREAPP PARTNERS/「シャチバト!」製作委員会

 4月5日に放送がスタートした、TVアニメ『社長、バトルの時間です!』(以下、『シャチバト!』)。荒廃が続いていた世界に、巨大な「門」が出現。その「門」の中に、世界を維持する奇跡のエネルギー「キラクリ」を発見した人々の中から、「キラクリ」を採取するトレジャーハンターが登場し、それぞれの組織が「会社」として「門」のダンジョンに挑んでいく――これが、『シャチバト!』の世界のあらまし。物語は、先代が行方をくらましてしまったことで、主人公のミナトが「キボウカンパニー」の次期社長に突如指名されるところから始まる。「異世界もの」でありつつ、冒険者が「会社」に所属するというツイストを加えた『シャチバト!』は、キャラクター同士が織り成す会話劇がとにかく楽しいアニメーションだ。その面白さを、キャスト・スタッフへのインタビューを通して、紹介していきたい。

 第1弾に登場してもらったのは、主人公・ミナトを演じる堀江瞬。自らの意志とは裏腹に、うっかり社長に就任してしまったミナトを「たぐり寄せやすい範囲内にいるキャラクター」と語る彼は、主演として参加する『シャチバト!』に、どのような思いをもって臨んでいるのだろうか。

ミナトって流されやすい性格じゃないですか。そういうところが、僕の性格と似ている

――主人公のミナト役としてTVアニメ『シャチバト』に参加することになったとき、どんなことを感じましたか。

堀江:この作品に限らず、まずは「受かった!」という喜びがありました。『シャチバト!』に関して言うと、座組を見させていただいたときに、すごく温かそうな方々のお名前が連なっていたので、そういった意味では安心感があって、「収録、早く始まらないかな」って思ったし、前向きな楽しい気持ちがありました。僕、アフレコの1話の直前とか、オーディションに合格してからアフレコに挑むまでの期間って、どちらかというと緊張だったり、「どうしよう、この役をまっとうできるのか」って思ったり、本来そこまで感じすぎてはいけないことにとらわれてしまうことがあるんですけど、『シャチバト!』の場合は、作品のテイストもあって、フラットな気持ちで1話のアフレコを迎えることができました。

――何年も声優の仕事をしていても、新しい作品に臨むときは不安がある。

堀江:あります。もちろんお芝居の上で、そのときの自分が出せる限界のものを出してはいますけど、自信がないので、どうしてもそうなっちゃいます。それぞれの現場で、引き出しも着実に得ているはずだし、少しずつ「実力がついてきたかも?」っていう感覚はあるんですけど、それが自信に結びつているかというと、ちょっと違う感じがして。ただ、少しずつ力がついてきたとは思います。

――お芝居を始めた頃と比べて、どういう部分がよくなったと感じてるんですか。

堀江:当初からお世話になっている音響監督さんに、「お芝居はそれっぽくしていても、会話ができていない」と言われていて、ずっとその問題に直面していました。こう、雰囲気でお芝居をしていたところから、なかなか抜け出せなくて。ただ、それが明確なきっかけなのかはわからないですけど、僕はユニット活動をしていて、そこでドラマ撮影をやったときに、マイク前から離れて、カメラの前で全身を使ってお芝居をする経験をしたことが、距離感というか、人と会話するときの間(ま)を考えるきっかけになったのかな、と思っています。それ以降の作品では、わりと距離感を意識しながらアフレコに臨むことができて――自分で胸を張って言えるかはわからないですけれども、血の通ったお芝居というか、ちゃんとそこにキャラクターがいる、僕が理想とするお芝居に少しずつ近づけているのかなって思います。

――『シャチバト!』は、主人公のミナトがどういう人物として観ている人に伝わるかが大事だと思うんですけど、1話でキボウカンパニーの社長に就任する前からの人物像を、堀江さんはどのように想像していましたか。

堀江:彼は髪も長いし、もしかしたらそういったところには無頓着なのかなって思っています。わりと、生真面目ではないと思うんです。「社長になってください」ってユトリアに言われて、しばらくはイヤがってたりもするので。けっこう、悠々自適に、読書とかをしながら、自分の生活スタイルを貫いてたんじゃないかなって思います。

――そんな彼を演じていて「わかるな」って思う部分、演じていくうちに「ミナトのこんな一面がいいところなんだな」って気づいた部分はどこですか。

堀江:偉いなあって思ったのは、最初はイヤがっていたとはいえ、なんだかんだでちゃんと社長に就任して、業務をこなそうとする、その姿勢です。僕がミナトの立場だったら、たぶん断ってると思うので(笑)。あと、ミナトって流されやすい性格じゃないですか。そういうところが、僕の性格と似ていて。誰かを引っ張っていくというよりは、引っ張られることに甘んじる、というか(笑)。そのポジションにいることに落ち着いてるところに共感してます。だから、この作品では「このセリフ、どういう言い回しにしたらいいんだろう」って思うことがあまりないし、僕の中でミナトは近い性格をしているキャラクターだなって思っています。

――彼は、まわりに流されているほうが自然体でいられる人なんでしょうね。

堀江:たぶん(笑)。そうなんじゃないかなって、僕自身も思います。

――その中で、社長になる決心をする。

堀江:そこが、僕とミナトの違いです(笑)。

――(笑)逆に、ミナトを演じていて難しく感じる部分はありますか?

堀江:これは音響監督の伊藤(巧)さんとも話し合ったんですけど。普段ミナトはキボウカンパニーのメンバーに押されつつあるけれども、たとえばバトルのシーンで指示を飛ばしたりするときに、どれくらいミナトが冷静でいるのか、そこのさじ加減はかなり難しいな、と思います。

――バトルがイレギュラーなシーンだとすると、日常の会話、キボウカンパニーの中で行なわれるコミュニケーションのお芝居は、堀江さんにとって馴染みやすい、ということでもありますよね。

堀江:圧倒的に、やっていてしっくりきます。もちろん、ミナトが人間として成長していく部分もあるとは思うんですけど、基本は流されポジションであるところは変わらなくて。社員との関係性もずっとそういう感じなので、すごくやりやすいですし、たぶん視聴者の方が観ていても、そこがこの作品の面白いポイントになるのかなあ、と思います。

――そこまで自分にしっくりくるキャラクターに出会えるのも、なかなか貴重な体験ですよね。

堀江:普段は、演じるキャラクターに自分とのギャップを感じながら、そのギャップありきで面白さも感じながら演じています。そんな中で、確かにミナトのように押されがちな性格のキャラクターを演じるのはなかなか珍しくて、けっこうシンクロしてるんじゃないかなって思います。僕自身がたぐり寄せやすい範囲内にいるキャラクターです。

――ミナトをはじめ、キャラクターの魅力がこの作品のキモなのかなって思います。キボウカンパニーの面々はみんなポジティブだし、彼らの姿を見続けていることでこの作品を好きになっていく感じがあるんですけど、堀江さんから見て、キボウカンパニーのよさってなんだと思いますか。

堀江:自分がミナトを演じてることから離れて考えてみると、自分がこの会社に入っても受け入れてもらえそうって思えるような温かさが、キボウカンパニーのよさなんじゃないかなって思います。月並みな言葉ですけど、家族みたいな雰囲気じゃないですか。そういうところが、視聴者の方も観ていてホッとできるような雰囲気になってると思いますし、ひとりひとりがちゃんと心でつながってる感じが、キボウカンパニーのよさなんじゃないかなって思います。サイエッジに行ったら、ヴァル美さんとかに何されるかわからないですし(笑)。僕個人だったら、サイエッジには絶対行かないほうがいいです、向いてないから(笑)。僕も、キボウカンパニーに入社したいです。

心が軽くなったり、明日に向かって希望を持てるような作品になるといいなあって思います

――堀江さんはアニメ『シャチバト!』における主役なわけですけど、現場にはどのような気持ちで入ってるんですか。

堀江:僕、普段はアフレコ現場でほとんどコミュニケーションを取らないんです。あえてそうしようと思っているわけじゃなくて、人との関係性を築くのが下手なんです。でも、そんな僕でも、やっぱり座長として現場にいさせていただくときは、自分なりに頑張って、それぞれの役者さんが現場にいやすい雰囲気にしなきゃいけないなっていう気持ちは持っています。それこそ、みんなでひとつの話題で盛り上がるように持っていったり。他の作品で、座長の皆さんがやろうとしているようなことは、きっと今の僕にはまだできていないので、難しいですけど、座長として「この現場をどうしていこう」というのは、考えています。

――堀江さんの中で、この作品で役をまっとうすることで、「『シャチバト!』をこういうものにできたらいいな」って考えているゴールは、どこにありますか?

堀江:観ている人が、たとえば自分の働いてる会社であったり――労働はしていなくてもいいんですけど、自分が置かれてる今の状況の中で、ふっと自分の近くを見たときに、もしかしたら実は『シャチバト!』のキボウカンパニーみたいな雰囲気が転がっているのかもしれないって、考えてもらうきっかけになるとすごくいいなあって思います。今後、働いている方の苦しみが具現化したモンスターが出てきたり(笑)、現代の日本を象徴するような言葉やシチュエーションが出てくるんですけど、そういった中で、今は逆境の中で戦ってる人たちにとって、もしかしたらその逆境も意外となんとかなるかも?みたいなー―キボウカンパニーの面々がひとつひとつ試練をこなしていくように、意外と自分の人生なんとかなるんじゃない?みたいな、心が軽くなったり、明日に向かって希望を持てるような作品になるといいなあって思います。

――アニメって、本来的にそういう側面を持ったものだったりしますよね。作品を楽しく観た後で、明日が楽しみになる、みたいな。

堀江:うんうん。やっぱり、そう思ってもらえるのが一番です。「ああ、面白かった」って。「明日、なんとかなりそう」みたいな気持ちになってもらえるといいんじゃないかなって思います。

――堀江さん自身は、『シャチバト!』の主人公役をやり切った後に、どんな自分・どんな役者になっていたいと思いますか。

堀江:難しいですね。この作品だけに限らず、やっぱり終わると絶対に寂しいんですけど、終わった直後って、その現場を通して自分の中で確固たるものを得ました、みたいな感覚はないんです。もちろん、この先もずっと演じていく中で、「このシーンのここって、あのときに感じたことが生かせそう」とか、ふとしたときに今までの経験が生きたりするんですけど。でも、現場で得たものに今後どこかで気づけるといいなあって思いますし、それは『シャチバト!』もそうなるんじゃないかなって思います。

――堀江さん自身が、役者としてこの仕事を続けたいと思う一番の原動力って何ですか?

堀江:そこが、たまにわからなくなるんです(笑)。ほんとに苦しかったり、毎日プレッシャーに押し潰されそうになったりもするし、なんでそこまで自分を苦しめながらこの仕事をやってるのかなってわからなくなる瞬間はあります。それでもやっぱり、たとえば『シャチバト!』の現場でも感じることがあるんですけど、「今、このシーンはすごくいい感じにできたぞ」「このセリフは今ちゃんとキャッチボールができたんじゃないか」とか――いい芝居ができた、と言うと偉そうな言い方になっちゃいますけど、自分の中で納得したり、達成感みたいなものを感じたときに、「あっ、そうそう」っていう感覚になります。9割が産みの苦しみだとしても、たまに現れるその1割の感覚のためにやってるんだなって思います。僕は、その1割にすがりながら生きてます(笑)。

第2回は4月12日に配信予定です

『社長、バトルの時間です!』公式サイト

取材・文=清水大輔