キボウカンパニーへようこそ! アニメ『シャチバト!』を語る④――八代拓(ライバー役)×上坂すみれ(ヴァル美役)インタビュー

マンガ・アニメ

2020/4/27

『社長、バトルの時間です!』 AT-X、TOKYO MXほかにて毎週日曜放送中 (C)KADOKAWA・でらゲー・PREAPP PARTNERS/「シャチバト!」製作委員会

 現在放送中のTVアニメ『社長、バトルの時間です!』(以下、『シャチバト!』)。荒廃が続いていた世界に、巨大な「門」が出現。その「門」の中に、世界を維持する奇跡のエネルギー「キラクリ」を発見した人々の中から、「キラクリ」を採取するトレジャーハンターが登場し、それぞれの組織が「会社」として「門」のダンジョンに挑んでいく――これが、『シャチバト!』の世界のあらまし。物語は、先代が行方をくらましてしまったことで、突如主人公のミナトが「キボウカンパニー」の次期社長に指名されるところから始まる。「異世界もの」でありつつ、冒険者が「会社」に所属するというツイストを加えた『シャチバト!』は、キャラクター同士が織り成す会話劇がとにかく楽しいアニメーションだ。その面白さを、キャスト・スタッフへのインタビューを通して、紹介していきたい。

 第4弾は、主人公・ミナトたちのキボウカンパニーとはライバル関係にある会社「サイエッジ」のメンバー、ライバー役・八代拓と、ヴァル美役・上坂すみれに話を聞いた。ふたりが語る、『シャチバト!』の知られざる見どころとは――?

2話の台本を見たときに、自分が思ってたライバーがいなかった(笑)(八代)

――アニメの収録は後半に入っていますが、おふたりはこの作品ならではの魅力をどんなところに感じていますか。

八代:最初は、ある意味「けっこうゆったり進むなあ」と思っていて。ミナトを中心にストーリーが描かれていて、キボウカンパニーがミッションを1話ごとにクリアしていって、成長したり絆が深まったりしていく。逆に、その中で――これは想像ですけど、作り手の自虐にも感じられるような会社ネタも出てきて(笑)。そういう意味では、冒険ファンタジーの印象から、日常もののような印象もあります。

上坂:ちょっと感想が似てしまうんですけれども、ほんとにごく平和というか、誰かが倒れたり重症を負ったりもせず、マジューや野草を見つけて「ああ、珍しいね」みたいな感じで(笑)。バトルも、「このままじゃやられる」みたいなときもあるんですけど、いい意味で「負ける気はしない」というか、どことなく安心感があって。穏やかな世界で、腹黒いのはヴァル美さんくらいなんじゃないかなって(笑)。絵柄がとにかくかわいくて、ほのぼのとした魅力があるので、みんなの心の安らぎになる感じだと思います。

――キボウカンパニーはわりとほのぼのしている一方で、ライバル会社であるサイエッジのふたり、おふたりが演じるライバーとヴァル美はだいぶキャラが立ってるじゃないですか。彼らを演じる上でやりやすいと感じる部分、あるいは自身とのギャップをこうやって埋めている、みたいなお話を聞きたいです。

八代:ライバーをゲームで演じて、ちょっと鼻につく部分はありつつ、ちゃんと腕もあって、ビジュアルもスタイリッシュで、クールな印象があったんですけど、アニメでは鼻につく感じをよりピックアップしていただいて。そこで、だいぶ想像が膨らみました。

――そういうディレクションだったということですか?

八代:2話の台本を見たときに、自分が思ってたライバーがいなかったんですよ(笑)。で、「あれ? おかしいな」と思っていろいろ考えて。キボウカンパニーの方たちのシーンを客観的に見たときに、自分とライバーに与えられてる役割を悟りました(笑)。ほのぼのとした世界の中で、いい意味で不協和音というか、アクセントみたいなものが必要とされているのかな、と感じて、ちょっと鼻につく感じを強調して演じていけば、作品もキャラクターも魅力的になるのかな、と。1回それをやってみたらすごく楽しくて、それ以来ギャグシーンが一番やりやすく感じるようになりました。たとえば、怪我をして起きるときに、「わ~~っ」て目が覚めて、「あっ、夢か」みたいな、悪夢を見るシーンがあるんですけど。

上坂:「ママ~~!」って言って起きる、みたいなやつ(笑)。「そんな修正入ってたかなあ」って、台本を見た覚えがあります。

八代:ライバーに修正は入らないです(笑)。

――(笑)キャラクターに余白があるんですね。

上坂:そうですね。ゲームのキャラを守ったほうがいい作品も多いんですけど、『シャチバト!』に関しては自由です。ヴァル美さんは、ゲームでやっていたテンションで普通にやると、ガイドさんのしゃべり方とかぶっちゃうので、よりイヤなヤツ成分を抽出して、低いトーンも使って、笑顔が怖い、とても食えないヤツ、という部分を増幅させています。「どのくらいライバーさんをいびるのかなあ?」っていうさじ加減が難しいキャラではありますけど、ヴァル美さんが80くらいで行くと、ライバーさんが500くらいで返してくれるので(笑)、本当にありがとうございますって思います。

――アニメのアフレコって、そんなにアドリブをたくさん入れるものではないじゃないですか。ライバーに関しては、そこが演じていて楽しい部分だったりしますか。

八代:まず、台本をもらったときに、ライバーだったらどうチョケるかな、どう突っかかるのかな、みたいなことを家で考えるところから楽しいですね。それを、実際に現場でやらせていただいて、それが音響監督や監督に採用していただけるのも楽しいですし。でも、特に収録が後半になってくると、「もっとくれよ」みたいなことを言われるようになって。すでに台本と違うことをやっているのに「もっとくれよ」って、もう意味がわからない(笑)。

上坂:(笑)ヴァル美さんについては、実はけっこう転職マニアなんじゃないかって思ってます。「この会社、やっぱりわたしには合わなかったわ、引っ越そう」みたいなことを繰り返しているのかも。全体的にモチベーションのすべてが、「楽しいからやってる」ように感じます。ちゃっかりしていて、計算高くて、ズルいけれども、どこかにやっぱり魅力がないとダメなので、楽しいことがあるとテンションが上がって口数が多くなったり、楽しんでるときは顔に出てしまうところを描けたらいいなあ、と思っています。

――気持ちが表にバンバン出ちゃってるライバーと、そんなに表に出てこないヴァル美さん。80と500っていう話もありましたけど、温度感が全然違う相手と掛け合うときに、どんなことを意識しますか。

八代:ある意味、掛け合っていかない掛け合い、というか。ヴァル美さんのほうが全然強いし、能力も高いし、いろんな意味で上なんですけど、たぶんライバーはヴァル美さんのことを上だと思っていないんですよね。部下だと思っているんですよ。で、おそらくヴァル美さんも、ライバーのことを上だとは思ってない。お互いちょっと上からっていう、ものすごく珍しい会話が行われていて。その噛み合わなさを、楽しむようにしてます。

上坂:ヴァル美さんは、ライバーが上から来てることには別にイラッともせず、ライバーの声のボリュームをす~ごい絞って聞いてるんだろうなって思います。八代さんの声はとても大きいので(笑)、スッと入ってくるんですけど、そこをなんとか聞かないで返事する、みたいな感じです。逆に、ミナトさんとの会話では、反応を引き出そうとするんですね。なので、人によって態度変えちゃうヴァル美さんなんですけれども、「聞いていなくはない」というギリギリのラインを、ライバーさんとは保っていますね。

自分の心の歪みに気づけるか。わたしは見どころとして、こちらの面を推させていただきます(笑)(上坂)

――同僚役として共演して、お互いに「この人、ここがすごいな」って思うのはどういうところですか。

八代:ヴァル美さんって、すごく難しいキャラクターだなって思うんです。上坂さんがおっしゃっていたように、ずっと含みがあるというか、他のことを考えた上でのセリフになっていそうな感じがしますし。そういうキャラって、込めなさすぎるとあっさりしちゃうし、込めすぎるとちょっとあざとくなるんですよね。でも、ヴァル美さんはその絶妙なラインを行っているので、客観的に見ていると、「ヴァル美さん、あんた、ほんとなんなん!?」って、すごく気になるんですよ。そこってたぶん、上坂さんご本人がお持ちのミステリアスさというか――あれ? ご本人がキョトンとされている(笑)。

上坂:ミステリアスで、わたくし……。

八代:どうですか? そう言われます?

上坂:友達少なめです(笑)。

八代:そんな悲しい話をしようと思ったわけではなく(笑)。役者として、手の内を全部見せない感じって大事だと思うんですよ。まだ余白がある、みたいな。ご本人が持っているパーソナルも相まって、ヴァル美さんがヴァル美さんらしさを醸し出しているのが、魅力的だな、すごいなあ、と思いますね。

上坂:ありがとうございます。

八代:間違ってたらすみません。

上坂:いや、わたくし、ミステリアスで(笑)。

八代:(笑)友達が少ないってイメージないですよ?

上坂:ミステリアスな人、友達少なめですから。

八代:謎が多いから、やっぱり。

上坂:ひとりでご飯食べるから(笑)。先ほど八代さんが、手の内を全部見せないのがすごいっておっしゃってたんですけど、八代さんは逆に、持ってるカードを全部出すんですね(笑)。「今日持ってきたカードは、これ」って、最初に発表するのがすごいなあって思います。しかも、「頑張ればもう1枚作れるかも」みたいな、毎回限界突破を目指していらっしゃる感じがして。全身でお芝居をされて、持ちカードは全部使って帰っていくところが、男気があるなあ、と。わたしは、オンエアを観て「もっとできたかもな」「ちょっともったいなかったな」って反省することがたまにあるんですけど、八代さんのお芝居を見ていると、全力全開で挑むところをとても尊敬します。体力があるなあって。

八代:そこ?(笑)。

上坂:だいたいテストと本番があって、テストで声を120パーセント出されて、「ここからどうなっちゃうの」って思ったら、本番は220パーセントくらいになっていたりするので、無限の力が湧き出てくる感じが、バイタリティがあって素敵だなあ、と思います。友達も多そうですし。

八代:実は、そんなことはないです(笑)。

上坂:そっかあ。

八代:そうですよね、友達少ない人に「友達が少ない」って言っても、「そっかあ」ですよ(笑)。

上坂:この雰囲気だと、どうしても多いのかなって思ってしまいますよね。なんか、20人くらいでご飯食べてそう(笑)。

八代:(笑)そんな人います?

上坂:八代軍団でご飯食べてそう(笑)。

八代:(笑)ないです。いっつもひとりで牛丼食べてます、僕は。

――ちなみに、おふたりの推しキャラは誰ですか。

八代:やっぱり、ヴァル美さんですね。

――ほんとですか?(笑)。

八代:(笑)なんか、自分の中で楽しんでる部分があって。自分をあしらってくれるキャラクターが、突っかかってくるアカリと、何事もなかったかのようにあしらうヴァル美なんですね。このふたりが、僕の中ではライバーを立たせてくれる大切な存在で。しかも収録が進むうちに、どんどんそれが楽しくなっていってます。なんでしょうね、週替わりで違うタイプのふたりにこう、あしらわれていきたいっていう――何を言ってるんだろう?(笑)。

上坂:(笑)わたしは――迷うなあ、でもユトリアかな。実は、ユトリアが一番ヤバい説がわたしの中にあるんです。

八代:闇センサーが出た(笑)。

上坂:ユトリア、わたしにはわかります(笑)。彼女が実はヤバいということは――。たとえばミナトさんを社長に勧誘する手口にしても、「おいしい話が見つかったんです」っていう感じで、信じ込みやすいタイプ、ともすれば狂気をはらみがちなタイプで、ちょっと危なげなんですね。キボウカンパニーの人がみんなしっかりしてるから、ユトリアも正気を保っていられる、というか。いつユトリアは爆発しちゃうんだろうって、ちょっとハラハラしつつ――ちょっと何目線かわからないですけど、ユトリアさんの波を、毎週密かに楽しみにしています。一生懸命なところが、すごくかわいいんですね。市ノ瀬(加那)さんのお声も、スーンってひとつのものに進んでいく印象があって、寄り道しない系女子というか、ひとつのことに夢中になって頑張ってるのがユトリアですね。キボウカンパニーにいてよかったねって見守ってます。

――話を聞いていると、確かにそういう感じあるなあ、と思いますね。

八代:ユトリアは、ちょっと押したら崩れそうな、危ないところがあって(笑)。

上坂:ほんとに、ヴァル美さんが上司じゃなくてよかったですね。

八代:確かに。うわ~、それヤバそ~。

――序盤の物語では全部は見えてこないけど、『シャチバト!』のキャラクターって、実は底知れない人物が多いんですよね。

上坂:そうなんです。ユトリアは、一番底知れないかもしれない、自覚がないですからね。ガイドさんやヴァル美は自覚がありそうなので。

八代:全然自分を保てそう。

上坂:会社が倒産しても「そうですよね。もう、自己破産しましょうか! ニコニコ」みたいな。

八代:ユトリアは「と、と、倒産……?」。

上坂:「倒産?……わからない!」って(笑)。

八代:(笑)でも『シャチバト!』って、けっこうそういうキャラが多いかも。

上坂:確かに。それが意外と、現代社会の本当の闇、ということなんでしょうね。

八代:深い!

上坂:表面上はみんなほのぼの見えているけど、その実、「自分でも気づいていないこの心の矛盾に、君は気づけるか!?」っていう(笑)。

八代:(笑)そんな重いキャッチコピーがあったんですね。

上坂:自分の心の歪みに気づけるか。わたしは見どころとして、こちらの面を推させていただこうと思います(笑)。キャラクター自身も気づいていない、この絵柄に隠された闇。実はこれ、リアルタッチで描いてたら、けっこう怖い話なんじゃないかなって思います。作画、大事ですね。

――いろんなキャストさんにお話を訊いていくうちに、キャラクターたちの底知れなさが浮き彫りになってきた感じがありますけど、今日それが極まった気がします(笑)。

上坂:(笑)見えない狂気。

八代:もう、ホラーにします?(笑)。なんか、そういうのありますよね。途中からおかしくなっていく、みたいな。

上坂:怖い怖い怖い! でも、入口はほのぼのしているけど、会社ってそういうものなんだよっていう。入社はよいよい、だけどだんだん目が死んでいく、みたいな――。

八代:よく見ると、誰もミナトと目を合わせてなくない?みたいな。

――観ている人も、ぜひ『シャチバト!』を考察してみてほしいですね。

上坂:確かに。今の時点で、考察しがいがありますからね。

八代:ありますね。

――「実はこいつもヤバい」みたいな、気づきがそこにある。

上坂:気づきが多いです。当初の取材の目的とだいぶ変わってしまって、どうしましょう?

――(笑)これが目的です。キャラクターの魅力をお伝えする対談なので。

上坂:よかったです。じゃあ、そういう感じの見出しをお願いします。「君は気づけたのか」(笑)。

『社長、バトルの時間です!』公式サイト

取材・文=清水大輔