倉知玲鳳「RASのキーボードが“私でいい”という存在意義がほしかった」声優図鑑

アニメ

公開日:2020/5/22

倉知玲鳳

 キャラクターの裏に隠された自分自身をありのままに語る、ダ・ヴィンチニュースの恒例企画『声優図鑑』。第240回目に登場するのは、吹き替えやゲームなど声優として幅広く活躍しながら、「BanG Dream!(バンドリ!)」のオリジナルバンド・RAISE A SUILENのキーボーディストとして圧倒的な存在感を放つ倉知玲鳳さん。

学生時代から親しんだアニメに対する純粋な情熱や、キーボーディストとして大胆なパフォーマンスを見せるその理由など、心の中にある素直な気持ちを、言葉を選びながら理知的に穏やかにお話していた姿が印象に残ります。

――RAISE A SUILENのキーボーディストなどで活躍する倉知さんのルーツを探るべく、子どもの頃の思い出についてぜひ教えてください。

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倉知:小学生くらいまでは、めちゃくちゃ引っ込み思案でした。幼稚園の頃にプリキュアが好きで、ヒーローショーもよく見に行っていたのですが、そこで「助けてくれる人ー!」って参加者を募る場面があって。お母さんから「行ってきたら?」って言われても、前に出たくても出られない子だったんですよね。小学校でも、ダンスを習っていたので、催し物があると「もっと前に出ればいいのに」って先生から言われるんだけど、積極的になれず…

――それが、中学生になる頃から変わってきた?

倉知:はい。ちょっと吹っ切れてきたというか。アニメを見るようになったことが関係しているのかなあと思います。体験したことの無い世界に行けて、いろんな発見があって視野が広がるじゃないですか。キャラクターを見て「こういう人もいるんだな」と思えたりして。アニメを見ているうちに、自分自身を前に出せるようになったんですよね。

――人はそれぞれ違っていいんだと感じて、自分のことも認められるようになった、ということでしょうか。

倉知:そうかもしれないです。「私なんかが人前に出るなんて…」というコンプレックスがあったと思うんですよね。それがアニメだったり、中学生になって出会う人が多くなったことが関係して、いろんな人たちの中で自分も堂々としていいのかなと思えたのかもしれません。ピアノを習っていたから「ピアノの伴奏やります!」とか、自分から言い出せるようになりました。アニメと一緒に生活を始めるその頃から(笑)。

――アニメと一緒に生活を(笑)。相当はまっていたんですね。

倉知:そうですね(笑)。中学1年の誕生日に『けいおん!』のCDを買ってもらったところから始まったんですよ。何がほしいのか聞かれて、特に何もなかったので地元のCDショップに行って、「めっちゃ可愛い!」ってジャケ買いしたんです。作品は全然知らなかったけど、聴いてみたら、えらい可愛くて! すみません、「可愛い」しか言ってませんけど(笑)。こんな歌、聴いたことない!と思って、深夜帯のアニメも観るようになりました。

――その中でも特に影響を受けたアニメは?

倉知:『鋼の錬金術師』です! 『けいおん!』とはまた違った意味で衝撃を受けました。主人公のエドワード・エルリックと弟のアルフォンス・エルリックが、お互いがお互いのことを想いながら旅をしていくんですけど、こんなに深い愛があるのかと。常に他人を大切にしていて、信念を持ってズバッと発言できるところも「かっこいい!」と思いました。中学2年の未熟な私でも本当に感銘を受けて、人としてこんなに尊敬できる人にアニメで出会ったのは初めてだったんじゃないかな。1話も外せないストーリー性の高さというか、すべてが最終話の伏線としてつながっていく物語にも感動しました。

――そうやってアニメに触れているうちに、声優への憧れも膨らんでいったのでしょうか。

倉知:はい。面白いなあってアニメを見ているうちに、好きな声優さんができまして。それが小倉唯さんです。同年代なのに第一線で活躍されているのを見て、声優というお仕事がより身近に、現実的に感じられて、自分もやってみたいと思い始めました。

――夢が現実にどんどん近づいていったのですね。それから「株式会社S 第三回新人オーディション」を経て声優デビューを。2018年に『BanG Dream!(バンドリ!)』のオリジナルバンド・RAISE A SUILENのキーボーディストになられてから約2年が経ちます。最初に関わった頃から作品やバンド、キャラクターに対する想いは変わってきましたか?

倉知:バンドリ!は私にとって、新しい出会いや新しい場所に連れていってくれる作品です。バンドで誰かと音を合わせることも初めてでしたし、想像し得ないほど大きな会場でライブをさせていただいて。演じさせていただいているパレオちゃんってすごく周りを見て行動できる子で尊敬しているんですけど、そんなパレオちゃんの立ち振る舞いや物事の捉え方を通して、演じる身としてもパレオちゃんのいいところを吸収し、伝えられるように頑張ろうと、最近特に強く思うようになりました。役やバンドへの向き合い方が変わってきたと思います。

――最近になって、RAISE A SUILENやパレオという存在がより密接に感じられてきたと。

倉知:はい。今思えば、バンドリ!との最初のコンタクトって、事務所に所属する前のことだったんですよ。高校を卒業するくらいのタイミングで、友だちとPoppin’Party(ポピパ)さんのライブビューイングに行ったんですね。ファンの立場からプロジェクトの一員になれるなんて、当時は思ってなかった。その頃から変わらないのは、バンドリ!が好きっていう気持ちと、ポピパさんがかっこいいところ! ステージを拝見する度にかっこいいなあと思うし、いつまでも憧れる気持ちがあります。

――キーボードを弾く時の激しい動きや背面弾きなどは、どういった気持ちから生まれているのでしょうか。倉知さんの演奏だけでなく、パフォーマンスに注目するファンも多いと思うのですが。

倉知:バンドを組むとなった時に、すでにプロミュージシャンとして活躍されているメンバーもいると聞いて。自分はピアノはやっていましたけど、プロとして弾けるかと聞かれたらそうじゃないなと。それがコンプレックスになっていて跳ね返したかったし、RAISE A SUILENのキーボーディストが私でいいという存在意義のようなものがほしかったのかもしれません。

演奏が上手な人なら他にもたくさんいると思うんですよ。じゃあ自分がバンドに返せるものは何かと考えた時に、私なりの動きをつけることを頑張ってみようと思ったんです。それこそポピパさんの伊藤彩沙さんが可愛い振り付けをされていて、目で見ても楽しいコンテンツだと思っていたので、そこから学んだことも大きくて。スタッフさんやメンバーと「このステップ入れたらいいんじゃない?」とか相談しながら、パフォーマンスを組み立てていっています。

――同じくブシロードによるプロジェクト『D4DJ Groovy Mix』では、清水絵空役を演じられています。根っからのエンターティナーという役柄ですが、演じながらどんな面白さを感じていますか?

倉知:絵空ちゃんって、自分で「ラブリー担当」と言っちゃうような子なんですよ(笑)。少し変わっているところもあるけど、柔らかいオーラに溢れていて、バランサーとしてメンバーとしっかりコミュケーションを取りつつどんなことにも前向きに取り組んで行ける子だと思うんです。だから、演じていると自分まで前向きな気持ちになれます! キャラクター性がわかりやすいので、ステージでも「絵空ちゃんならこうするだろうな」と考えやすくて、助けられているなって感じます。

――キャラクターになりきると、動きやすくなる感じはありますか?

倉知:そうですね。どのキャラクターもそうですけど、倉知として人前に立つより緊張しないし、パフォーマンスもしやすいです。自分自身でと言われると迷いが出ることがありますけど、キャラクターがいてくれると迷いがなくなるので、確信をもって動けるというか。だから、声優っていうお仕事は本当に楽しいなって思います。

――他にも、声優になって良かったと実感することは?

倉知:私が演じた役が可愛かったとか、好きになったとか、キャラクターのことを褒められると自分のことよりうれしいです! やっぱり、そのキャラクターの魅力を伝えることが声優の役割だと思うので、少しでもそれができていたんだなと実感できて。Twitterのコメントなどにもいつも感謝しています。

――では、これから挑戦してみたい役柄やジャンルは?

倉知:キャピキャピと元気な役を演じるのも楽しいですし、もう少し落ち着いたタイプというか、ちょっと自分の素に近い役も演じてみたいなと思います。でも、役柄もジャンルも含めて、なんでもできるのが声優の良さだし楽しいところだと思うので、できるだけいろんなことに挑戦しきたいなという思いはあります。

――プライベートについても伺いますが、お休みの日には何をしていますか?

倉知:まずは目覚ましをかけないで寝て…。それからコンディションを整えるために出かけることが多いですね。美容院とか整体とか、耳鼻科とか。メンテナンスに力を注ぎがちです(笑)。ディズニーランドやディズニーシーの世界観も好きで。なんだかモヤモヤするな、気持ちが乗らないなっていう時に出かけて、気分転換をしたり、モチベーションを上げたりすることもけっこうあります。

――外見や内面の美しさはもちろん、ファッションがいつも素敵だなと。今日の服はご自分で選んだのですか?

倉知:そうですね。私服衣装の時はだいたい自分で選んでいます。今着ているピンクのトップスはLily Brown。他には、REDYAZELとか、jouetieあたりが多いかな。

――お出かけした時に、つい食べちゃうものはありますか?

倉知:季節に関係なく、あったかい飲み物が好きで。最近だとスタバのオーツミルク。穀物系のミルクで、ちょっと甘味があっておいしいんです。オーダーする時は「スチームミルクをオーツミルクに変更してください」って大袈裟な感じで伝えるんですけど、つまりは、あったかいオーツミルクで!っていう(笑)。

――なんだか響きがかっこいいですね(笑)。声優でよく遊ぶのはどんな方ですか?

倉知:最近は、舞台で共演したことをきっかけに、根本流風ちゃんとよくご飯に行きます。流風ちゃんは同い年だけど、もう長く声優をやられていて仕事のお話をしても勉強になるし、それ以外でも気兼ねなく話せる関係だなと思っていて。「今どこにいる?近くにいたら会おうよ」みたいに気軽な感じで、ダメならダメで「じゃあ今度ね!」ってなるし、おうちに行ったこともあります。

――気を使いすぎない、いい関係なのですね。いろいろ伺ってきましたが、最後に倉知さんから記事を読んでくれた読者へメッセージをお願いします。

倉知:ここまで読んでいただいてありがとうございます。普段なかなかお伝えする機会がないこともお話できたと思います。お仕事のことはもちろん、パーソナルな部分もこれからもっともっと知っていただけるように頑張っていきますので、今後ともよろしくお願いします!

――倉知さん、ありがとうございました!

【声優図鑑】倉知玲鳳さんのコメント動画【ダ・ヴィンチニュース】

次回の「声優図鑑」をお楽しみに!

倉知玲鳳

倉知玲鳳(くらち・れお) 株式会社S所属

倉知玲鳳(くらち・れお) Twitter

◆撮影協力

撮影=山本哲也、取材・文=麻布たぬ、制作・キャスティング=吉村尚紀「オブジェクト