ついに最終章へ! 7月放送開始、『ソードアート・オンライン』特集――川原礫(原作)×松岡禎丞(キリト役)対談【後編】

マンガ・アニメ

2020/6/19

 TVアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』最終章が、いよいよ7月11日(土)にスタートする。《アリシゼーション》編 最終章となる本作で、待ち受けている物語とは――? 期待が高まる放送に先立ち、ダ・ヴィンチニュースでは、3本のインタビューを通して『SAO』の真髄に迫っていきたいと思う。第2弾は、『SAO』シリーズの原作者・川原礫とキリト役を演じる松岡禎丞の対談。原作が電撃文庫で展開して10年、アニメがオンエアされて8年。長い間を戦い続けてきたふたりが語る『SAO』にかける想いとは?

『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』 TOKYO MXほかにて7月11日(土)より放送開始 (C)2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project

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さまざまな姿のキリトを、ひとりで演じきれて、よかった(松岡)

――第2期『ソードアート・オンラインⅡ』では《ガンゲイル・オンライン》や《アルヴヘイム・オンライン》の冒険が繰り広げられました。印象に残っているエピソードをお聞かせください。

川原 《ガンゲイル・オンライン》ではキリトが女性と間違えられるという展開があるんですが、これは脚本会議の段階から「どうする?」と課題のひとつになっていました。シノンが女の子に間違う以上、女の子の声に聞こえなくちゃいけない。「吹き替えするか?」という話もあったんですけど、「いや、松岡さんなら(女性の声も)できるやろ」と。ゲーム内のアバターとはいえ、松岡さん以外の方の声でしゃべってしまうと混乱するだろうと。同じ議論は《アリシゼーション》編の冒頭でもありましたね。「10歳のキリトをどうする?」と。最終的には「松岡さんならやれるやろ」という決断でした。

松岡 《アリシゼーション》編のキリト10歳には本当にびっくりしたんです。映像を観たら、6~7歳ぐらいのように見えて。V(収録前にキャストに渡されるリハーサル用の映像)をいただいたときに、すぐに信長(島﨑信長・ユージオ役)に連絡しましたからね。信長はすごい不安がってましたよ。「10歳役って、お前と茅野さんはできるかもしれないけど、俺は大変なんだよ!」って。

川原 でも、テスト収録のときに松岡さんや島﨑さんの芝居をみんなで聞いて確認しましたが、「これなら大丈夫」と誰も異論は出ませんでしたよ。

――第2期の女性型アバターのキリト(通称キリ子)のときはどうでしたか?

松岡 収録のときは4パターンぐらいの女性の声を用意して、現場の方向性にあわせていこうと思ったんです。でも、今思うとキリ子を自分でやれてよかったと思いますね。《アリシゼーション編》のときに信長が言っていたことが印象的で。信長は「幼少期をほかの方が担当すると、その方の演技を(青年期役の)自分が引き継がないといけない。できるんだったら、自分たちでやりたいね」と言っていたんです。第2期のキリ子にしても、《アリシゼーション編》の10歳であっても、自分たちでやれてよかったと思います。

――第2期のあとに公開された劇場版『ソードアート・オンライン ‐オーディナル・スケール‐』はオリジナル作品でした。川原さんも脚本に参加されていますが、原作の時系列に沿いながら新作を書くというのはかなりの挑戦だったのでは?

川原 かなりの綱渡りでしたね。私はプロットや脚本がめちゃくちゃ苦手で。基本的に小説じゃないと書けないんです。小説は枝葉末節がたくさんあるので、そこを書くことで私は話をイメージできるタイプで、プロットや脚本のような物語のエッセンスだけで構成するものは苦手なんです。だから、難航しました。どこかで、ふとこれは「VRMMO」ではなくても良いと思い切った瞬間があって。そこからはバーッと全体の流れができました。もし「VRMMO」にこだわっていたら、物語としては苦しいものになっていたでしょうね。

――「AR」を題材に川原さんが選ばれたことで、時代とのシンクロ感が生まれましたね。

川原 そうですね。シンクロしましたね。

松岡 みんな川原先生のアイディアがすごかったと言ってましたよ。

川原 いや、まったくの偶然です。本当に。

松岡 ライバルキャラクターのエイジって、最初は考えていなかったキャラクターなんですよね?

川原 そうですね。僕が書いた初稿では、最終的に重村教授が敵キャラだとわかるという内容だったんです。なんなら、剣で重村教授と戦えばいい、とまで思っていたんです。そうしたら伊藤監督が「このシナリオではアンチヒーローが必要だ」とおっしゃって。キリトの同年代のライバルキャラを出そうということになったんです。でも、僕はライバルキャラを書くのが苦手で。《アインクラッド》編でも《ファントム・バレット》編でもライバルにあたるキャラクターは出ていないんですよね。でも、きっと《アインクラッド》にはキリトになれなかったプレイヤーがたくさんいるんだろうなと。そういうプレイヤーにとって《ソードアート・オンライン》というゲームは忘れたい記憶でしかないだろうなと。そういうことを考えながらエイジを書きました。結果として存在感が出て良かったです。

松岡 これまでの『SAO』はVR空間で戦っているので、身体の重さをそれほど表現していなかったんです。でも、劇場版では現実の《オーディナル・スケール》で戦う。その身体の重さは意識していましたね。第1期でも直葉と剣道をするシーンがありましたよね。あのときも、いままで死線を潜り抜けてきたからこその反応速度みたいなものがあって。でも、病み上がり(《ソードアート・オンライン》から帰還したばかり)なので身体がついてこないという描写もありましたけど。

川原 松岡さんの演技も含めて、この作品は重力が強いんです。画面の印象も、アクションシーンも重く描かれているんですよね。でも、それが最後にVR空間へフルダイブしたときに、解き放たれたように軽やかに動く。あの爽快感がすごかったですね。

松岡 ははは。本当にそうでしたね。

川原 やはりキリトは「VRの人」だと思いました。

『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』 TOKYO MXほかにて7月11日(土)より放送開始 (C)2017 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project

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まさか実現すると思わなかった《アリシゼーション》編のアニメ化(川原)

――そして『SAO』は原作で最長の物語《アリシゼーション》編のアニメ化に挑みます。《アリシゼーション》編のアニメ化をどのように受け止めていましたか。

川原 《アリシゼーション》編をアニメ化すると聞いたのはたぶん3年前くらいだと思うんですけど、そのときは「やれるのかな?」と思っていました。そもそも深夜アニメで4クールを制作するってあまり前例がなかったので、絶対にどこかで頓挫するでしょうと思っていたんです(笑)。最近になってようやく、どうやら最後までいきそうな感じになってきたなと。もちろん、いま現場は一生懸命作っている最中なので、私だけが終わった感じを出しちゃいけないんですけど。こうやってゴールが見えてくるのは、本当に感慨深いですね。私が《アリシゼーション》編を書いたのは、プロデビューすらしていない時期で。アマチュアのウェブ小説作家でしたから、本当になんの制約もなく、なんのしがらみもなく好き放題書いていたんです。まさかそれがアニメ化するとは……。

松岡 ウェブ小説から文庫化したときは、編集者さんとかなりやりあったと聞いてますけど。

川原 そうですね。でも、商業デビューする前に《アリシゼーション》編までは書き上げていましたけど、文庫化の際も編集者さんから細部の修正指示こそたくさんあったものの、ストーリーの大筋は変わっていないんです。それはありがたいなと思っています。

――《アリシゼーション》編までは10年前にすでに一度書き終わっている。そこが『SAO』という作品の特殊性でもありますよね。

川原 今でこそウェブ小説のアニメ化、書籍化は珍しくないですけど、私が文庫化されたころは、ウェブ小説が文庫化されたケースはほんの数例しかなくて。先ほど(対談前編)でも松岡さんがおっしゃっていましたけど、私も、いま《アインクラッド》編をプロットからいちから書いたら、全然違うものになると思うんです。

松岡 あのときの良さとは違うものになると思うんですよね。やっぱり、当時は全力だったからできたことがあると思うんです。

川原 《アインクラッド》編も《アリシゼーション》編もそのときだから書けた作品ですね。

――この8年のアニメの中で、第2期や劇場版などいくつもの転換点を迎えたと思います。これまでで川原さんにとって一番嬉しかったことは何でしたか。

川原 うーん、これからですね。《アリシゼーション》編『War of Underworld』最終クールの絵コンテをチェックしているんですけど、ものすごい絵コンテが上がってきて。アフレコの時ですら泣いちゃうだろう、と。その話の収録がいまから楽しみで、楽しみで。

松岡 僕はそのこと全然知らないです(笑)。まだキリトは心神喪失状態ですから。

川原 小説はクライマックスになると、執筆中に自分でも意図しないセリフが出てくるんです。たとえば《アインクラッド》編で聖騎士ヒースクリフを倒したあと、《アインクラッド》が消える直前にキリトとアスナが初めて自己紹介をするんですよね。あそこで私は最初、リアル(現実社会)の自分の名前を明かすつもりはなかったんです。でも、執筆しているときに、いやもうここは最後だから、本名を名乗るだろうと。瞬間的にそう思って、書いたセリフだったんです。あれを松岡さんと戸松さんが演技してくださった瞬間に感動してしまって。各章にひとつぐらいそういうシーンがあって。《アリシゼーション》編の前半だとユージオが消えていくときに《夜空の剣》と命名するシーンは、あれも書いていた瞬間に決めたことだったんです。ユージオが剣に名前を付けるなら、どういう名前を付けるだろうと考えた瞬間に出てきた名前だったんです。ここも島﨑さんと松岡さんが演じてくれて感無量でした。そして、《アリシゼーション》編のクライマックスも……。ここもトランス状態で出てきたセリフとシーンだったんですよね。考えても出てこないセリフなんです。そこがこれからもう、アニメになると思うと……。

――そのシーンがオンエアされる時が楽しみですね。

川原 アニメ《アリシゼーション》編『War of Underworld』がここまで続いてきて、まだ松岡さんが、《ダークテリトリー》側の大ボスと掛け合いをしていることが一度もないんですよね。そのときが楽しみです。めっちゃ見たい。

松岡 そのときは、全開でぶつかりに行きますよ。

――最後におふたりにお聞きしたいのですが、「キリトを書く面白さ、演じる面白さ」をどんなところに感じていますか。

川原 僕はキリトに関してはあまり考えていないんです。やはり主人公は勝手に動いてくれないと、話が転がらない。予想外の行動をするときも多々ありますし、著者の制御が利かないですから、最新章を書いていても、本当に面白いです。そういう予想外を含めてキリトだと思っています。

松岡 いやー、川原先生と意見は同じです。僕の声優人生の中で、ここまで一緒にやってきたキャラクターはいないんです。だから、変な話になってしまうんですけど、僕はもうキリトの演技をしようと思っていないんです。身体の中にいるキリトが「禎丞、これで行こうよ」「こんなふうに言いたい」と主張してくるんです。だから、演じている感覚はないです。たまに「俺はこれでいきたいんだけど」と言ってきてもいや、今回はそうじゃないだろって、自分の中で衝突するときもあるんですけどね。

――TVアニメ《アリシゼーション》編の最終章、クライマックスを迎えてのお気持ちをお聞かせください。

松岡 PVの最後にキリトが目を開けるカットが入っていますが、原作を知っている方はわかると思うんですが、アニメーションで『SAO』を追ってきている方は先がすごく気になると思います。そのみなさんの想いに応えることができればと思っています。

川原 主人公がこんなに長い間、心神を喪っている作品は、そうそうないと思うんです。

松岡 《アリシゼーション》編が始まるまで、僕は『SAO』に全話出てましたからね。

川原 それが松岡さんも戸松さんもいない回がだいぶあって。

松岡 茅野さんも大変だったと思います。新しいキャストの方がいらしたときに、作品の説明するのが大変だったそうです。「はるちゃん(戸松遥)か、松岡くんがいてくれればいいのに」とずっと言われていました。

――《アリシゼーション》編のクライマックスも含めて、これからの『SAO』の展開を楽しみにしています。

松岡 キリトには、「僕の声帯を自由に使っていいから」と言っているんです。これからのキリトの声が僕も楽しみです。

川原 このラスト1クールのためにこれまで積み上げてきたようなものですから。そこを1話1話噛みしめていただきたいなと思います。

前編はこちら


『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』公式サイト

取材・文=志田英邦 写真=GENKI(IIZUMI OFFICE)
スタイリスト:久芳俊夫(株式会社ビームス) ヘアメイク:高橋 優(fringe)