恋人ができない理由は⁉ 東海オンエア・虫眼鏡×ぶんけいの2人が、おたがいのこと、世界のこれからを真剣に語った!

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更新日:2020/8/26

 新型コロナウイルスの影響でインターネットを介したコミュニケーションがますます注目される現在、存在感を増しているのがYouTubeなどで動画を配信するクリエイターだ。なかでも人気のふたり、6人組クリエイター「東海オンエア」のメンバーで、投稿動画の「概要欄エッセイ」に熱烈なファンを持つ虫眼鏡さんと、ユニット「パオパオチャンネル」の活動休止後、現在は映像企画を中心に活躍するぶんけいさんが、ほぼ同じタイミングでエッセイを発売した。

 虫眼鏡さんが発行累計11万部超のシリーズ第3弾『真・東海オンエアの動画が6.4倍楽しくなる本 虫眼鏡の概要欄 ウェルカム令和編』(講談社)を、ぶんけいさんが初の著書『腹黒のジレンマ』(KADOKAWA)を執筆することによって浮き彫りになった、おふたりの違いや想い、世界の捉え方をうかがった。

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初対面は「酔っ払って僕のベッドで寝てなかった?」!?

──おふたりが知り合ったきっかけは?

虫眼鏡 僕がぶんけいさんのファンだったんです。同業者だという意識以上に、普通におもしろいなと思ってTwitterでフォローしたら、彼からすごくていねいなDMが届いて。実際に会ったのは、YouTubeのイベントですね。同じ事務所に入っていた時期もあるので、そこで仲よくなりました。

──初対面の印象はどうでしたか?

ぶんけい ざわくん(虫眼鏡)は普段の動画内で、声を張り上げてメンバーを説教したり、やられ役になってやり返したりしていたので攻撃的な人なのかと想像してたんですけど……実際は大人でした。攻撃されなかったです(笑)。

虫眼鏡 はじめて会ったときかな、めっちゃ酔っ払って僕のベッドで寝てなかった?

ぶんけい もうちょっとあとだよ、さすがに一発目じゃないよ!(笑)「東海オンエア」がUUUM(虫眼鏡さんの所属事務所)に入ったときの打ち上げじゃない? ざわくんがベロベロに酔っ払って、それをぼくが介抱して、こうやって(肩を貸すしぐさ)帰って、「あー、ぼくも寝よ」ってなったんだよ。

虫眼鏡 そうだったかなあ……(笑)。

ぶんけいさんは「片思い体質」、虫眼鏡さんは……?

──おたがいの本をお読みになった感想は?

虫眼鏡 シンプルに、「ぶんけいさんが本を出した、こんなに自分のことをさらけ出してくれた!」っていうことがうれしかったし、「こんなに文章書けるんだ……」という驚きもありましたね。僕とぶんけいさんは、大きなくくりでは似ていると思うのですが、その中にある考え方の違いも発見できました。この考え方は参考にしてみようとか、一緒にごはんを食べに行くとき直接聞いてみようと思うことがたくさんあった。友達の本だからということは関係なく、勉強になっちゃいましたね。

──どういうところが違うなと思われましたか?

虫眼鏡 まず、料理を作るのが下手なところ(笑)。

──そういうところをさらけ出してくださると、ちょっと身近に感じられますね。

ぶんけい よかったです、狙いどおりです(笑)。

──ぶんけいさんはいかがでしたか?

ぶんけい ざわくんは、どんなことにもストイックで、芯のある人だなと思っています。今回の本は、それが凝縮されていましたね。彼は、概要欄の文章を「落書きみたいな文」って言うんですが、ぼくはそんなふうには思わない。生き方や社会に対するメッセージがきちんとこもっているのに、トゲのないものに見せかけるトリックがうまいんですよ。へたに近づいたら刺されちゃう(笑)。楽しく読みながら、言葉の裏にある想いを汲み取ろうとするのもおもしろいですね。ぜひ、そういう読み方もしてみてください。

虫眼鏡 ぶんけいさんと僕の違い、まだありますよ。ぶんけいさんが「片思い体質」だっていうところ。僕も恋愛が苦手というか、今はそんなに「彼女欲しい」とは思っていないんですが、ぶんけいさんに彼女ができない理由って……まあ、作ろうとしてないんだとは思いますけど、僕に彼女ができない理由とはちょっと違うんだなと。「みんなのことがある程度好きだからこそ、そこから恋愛に一歩突出することがあまりない。なかなか恋愛に火がつかない」みたいに書いてるところ、ああ、違うなあって。

ぶんけい どう違うの?

虫眼鏡 僕は最初に「好き!」ってなっちゃうから。

ぶんけい なるほど、違うね! ぼくはたぶん、段階的に好きになるんですよ。最初に好きになるってすごい。

「誹謗中傷をやめよう」は理想論、実現を祈るよりもできることがある

──ふだんは動画でご活躍のおふたりですが、「動画で見せる」ことと「本で読ませる」ことに違いはありますか?

虫眼鏡 僕はグループで活動しているので、「グループには迷惑をかけちゃいけない」っていうブレーキが一応あります。ところが、本は「虫眼鏡が書いた本」なので、完全に僕の責任になるんですよ。僕以外のメンバーに矢が飛んでくることはない。そういう意味でフルスロットルで書けるところは、動画との違いのひとつです。一方で、動画などの音声がついたものと違って、誤解が生じやすすぎるなと思うことはありますね。ふざけて言っているのか真面目に言っているのか、文章だけではわかりにくい。そういう部分は、日本語を間違えないように気をつけたり、わざと「今はふざけてますよ」ということがわかる口語形を挟んでみたりと、工夫しました。

ぶんけい ぼくははじめて書いた本なので、分析中ではありますが……動画って「ながら見」ができるんですけど、本だとそれができないのは大きな違いかもしれません。たとえば、本を読みながらサブで音楽を聴くことはあるけれど、音楽をメインで聴いてサブで本を読むことはありませんよね。そう考えると、本って一対一のやりとりになる性質が強いなと思います。今後はその点を意識したものを作っていけるようになりたいなと思いますし、今回の本でも、いつもの動画より自分をさらけ出すとか、言わなくてもいい本音まで書くとか、一対一だからこそできる演出も考えながら書きました。

──おふたりとも、リプライやコメント欄での心ない発言についても書かれていましたが……。

虫眼鏡 僕は、有名人などの《叩かれる側》がいて、一般人っていう《叩く側》がいると仮定したとき、《叩かれる側》が《叩く側》に「やめろ」って言うのも、《叩く側》が《叩かれる側》に「叩かれるようなことするな」って言うのも、不毛だと思うんですよ。僕たちが有名人側なのであれば、自分たちを叩く側に「やめてください」って言うよりも、一種の諦めになるのかもしれませんが、なにが飛んできてもいいように自分を守るすべを身につけるほうが平和だなと。

 もちろん「そんなことが起こらない世界」というのが理想です。でも僕は、「地球上で理想が実現したことなんてあったっけ?」とも思う。どんな立場でも、多かれ少なかれ、なにかしら自分を傷つけるものは飛んできますよね。「自分を傷つけるものがない世界になりますように」と祈ることより、「そういうこともあるよね」という心を育てたほうがいいような気がしています。敵の攻撃力を下げるか、自分の防御力を上げるか……どちらも正解だと思いますし、僕は自分の防御力を無敵にして「どこでも大丈夫です」って言えるようにしたいですね。

ぶんけい ざわくんの言ったこと、「わかる!」と思いますが、すごく勇気のある発言でもありますよね。「誹謗中傷をやめましょう」というのは、ぼくも理想論だと思う。その上で、ぼくは「自分だって不完全な存在なのに、他人の評価をするなんておこがましくない?」と考えます。有名人サイドとしての意見ではなく、ぼくも誰かを誹謗中傷するようなことを思いたくないし、言いたくない。

 これは大前提として、他人に対して「ああしろ」「こうしろ」と指示したり、決めつけたりすることをやめませんかという話だと思うんです。まさに今、人種問題やLGBTQ、個人のあり方を認めようといったことが議論されていますが、そちらを解決していけば、誹謗中傷の問題はおさまっていくのかなと。今、なにかから「外れている」と言われる人たちが、もっと社会の「ふつう」になれば、「どんな人でも認めた上で、その人とつき合っていくかどうかは自分で決めていい」ということになる。「誹謗中傷をやめましょう」と言っているうちは、誹謗中傷はなくなりません。「嫌いなものとはかかわらない」と自分で決められる世の中になっていくしか、解決の方法はないと悲しいかなそう思います。

この状況が、「新しい挑戦を応援する」練習にもなった

──新型コロナウイルスの影響もあり、ネットを介したエンタメの比重が大きくなったことを実感しています。クリエイターのおふたりが考える、今後のエンタメとは?

虫眼鏡 エンタメの可能性が一気に発掘された感じはありましたね。「まだこんなにあったんだ!」というような。希望的観測ではありますが、今後おさまっていくにつれて、今までのエンタメも息を吹き返すと思うんですよ。だからといって、発掘されたものがまた地面に埋まっちゃうかというと、たぶんそんなことはない。一気に氷河が溶けて、いろんないいものが見つかりましたっていう時代になりそうですね。

ぶんけい わかる。エンタメは一時的に大打撃を受けているし、職を失った方もいらっしゃるので、一概には喜べませんが……業界にとっては、大きなバネにもなるだろうと思います。ぼくも今回、「そういえば、どうして今まで会場と生放送の同時ライブってやらなかったんだろう?」と気がつきました。みんなこの期間に今後の作戦を立てたと思うし、事態が落ち着いたころに作戦を実行に移す人もいるだろうし、この期間の動きを踏まえて、もっと新しいライブの形を生み出す人もいるかもしれません。世の中の「当たり前」が壊されたことは、そういう観点ではよい側面もあったんじゃないかな。みんなが「新しい挑戦を応援する」という練習になったなと思います。

取材・文=三田ゆき 撮影=岡村大輔