「最高のエンターティナーにして、出版界のフランシスコ・ザビエル!」――フワちゃんが心酔する伊坂幸太郎はいろいろすごすぎる
更新日:2020/7/12
インタビュー:フワちゃん
初めて読んだ大学1年生のときからずっと、“伊坂ハイ”が続いているというフワちゃん。スト-リーの面白さはもちろん、エンターテインメントとして、毎回違った趣向で読者を楽しませようとする、その姿勢から多大な影響を受けているという。人気YouTuberのフワちゃんが伊坂作品から受け取ったものとは?
伊坂作品は、価値観のジュエリーボックス
とんでもない角度からの考え方を幾度となく見せつけられて、
影響されないわけないよね
東京都生まれ。大学在学中にお笑い養成所に入学、お笑いの道へ。コンビ解散後、ピン芸人として活動中の2018年4月にYouTube個人チャンネル「フワちゃんTV/FUWACHAN TV」を開設。現在、登録者数は59万人超え。バラエティ番組への出演多数。@fuwa876
「すごいの、みつけちゃった!」って思った、初めて伊坂さんの作品を読んだのは大学1年生の春休み。巷のみんながあまりにも『アヒルと鴨のコインロッカー』がおもしろい!って言うので、ヴィレヴァンに行って探したの。
あのヴィレヴァンの黄色のポップで、『完全に伊坂ハイですっ!!!!』って書かれてオススメされてた。って言っても装丁もそんなに攻めてないし、タイトルに動物が2匹も出てきちゃってる。「ほのぼの系の話っぽいな」って思って読み出したら、全然そんな緩いもんじゃなかった!!
キャラクター同士の会話も粋だし、穏やかなのに穏やかじゃないストーリーだし、痺れるどんでん返しもあるし!! もう本にめり込む勢いで「うっそ、サイコーじゃん!」って言っちゃった!!
もう彼の第一印象は最高。あたし完全に伊坂のトリコ! だから、その後も伊坂さんのことを調べてみたの。そしたら他にも作品がたくさんあったから、「この面白さをまだまだ体験できるんだ!」って、超嬉しかったのを覚えてる。
重たいテーマの作品もしっかり全部エンタメ、秒で物語に引き込む
次は『ゴールデンスランバー』を読んでみたの。しょっぱなから「暗殺」とか「謀略」とか、難しいワードが飛び交ってもうあたしお手上げ! ちょっと待ってよ! あたしのバイブルは『セックス・アンド・ザ・シティー』。オシャレと友情のことしか考えてないあたしにこんな難解なテーマ、分かるはずない!って諦めかけたんだけど、本当に伊坂って凄いよね。そんなん言いながらも、結局、秒で引き込まれちゃった。
『アヒルと鴨~』とはうってかわって、今度は姿を現さない大きい敵と戦う規模の大きい話なんだけど、日常を残したまま非日常が描かれるから、しっかりリアリティがあって心拍数が超上がる!!こんなにスリリングなのにキャラクター同士の愛情にグッとくるとこもあって、もう本当憎いよね、伊坂!
『ゴールデンスランバー』で「見えない敵」との戦いを経験したから、もうあたしどんな相手でも怖くなくなった! 今日も大御所芸能人にタメ口聞いちゃう!
伊坂さんの作品って、テーマ的には重たいものもあるけど、全部しっかりエンターテインメントになってるよね。監視社会を描いた『モダンタイムス』とか、独裁について考えさせられる『魔王』とか。結論を問題提起だけで終わらせず、ちゃんと物語としても最高に面白くて、本っ当に好き。生粋のエンターティナーだね、伊坂さんは!!!
あたし正直重めの話題にはあまり精通してなかったんだけど、伊坂さんが描く物語ならどんなテーマでも面白くて、興味持って読める。そういう人って結構いると思うよ!そう考えると伊坂さんは、最強の物語を通して、みんなに様々なことへの興味を沸かせる「宣教師」みたいな人だなぁと思った。ヤバイ! ザビエルじゃん! かわいい! 出版界のフランシスコ・ザビエル!
毎回、世界観の違う小説が書ける不思議! 悪役もすべて愛らしい
「陽気なギャング」シリーズ、「死神」シリーズ、『グラスホッパー』『マリアビートル』『SOSの猿』『オーデュボンの祈り』……これまでいろいろな伊坂作品を読んできたけど、ぜーんぶ傾向がバラバラだよね。
同じ作者が考えているのに、なんでこんなに世界観の違う小説が書けるんだろうって、もう超不思議! 才能が溢れて止まらなくなっちゃってるんじゃない⁉
「毎回違った方向性」っていうのはあたし、伊坂さんから完全に影響を受けてるの。自分のYouTubeも、いっちょ前に「同じことやりたくない」って言って毎回仕掛け変えてみたり。
テレビのバラエティとかでもウケると同じことを要求されがちだけど、番組のスタッフさんに「もうちょっと新しいことしたいですね」とかエラそうなことを言っちゃったり(笑)。伊坂幸太郎に出会ってなければ、おりこうにいうこと聞いてたのに! 変な自我ついちゃった!!(笑)
伊坂作品の登場人物って、みんな愛おしくて愛しちゃう。ちょっと憎たらしいアイツも自信のないのアイツも、そのはじける個性に憧れちゃうしどこか親近感もあってなんだか知ってる人みたい。
死神、殺し屋、ギャング。とんでもない肩書きの悪役もたくさん出てくるけど、みんななんであんなに愛らしいんだろうな! この肩書きで人から愛されるってなかなかの実力だと思わない??? 超ハンデだもん普通、肩書きが「殺し屋」って。
殺し屋コンビ・蜜柑と檸檬には、ラジオ番組をやってほしい
きっと、いつまでも聴いてられる
なかでも私が好きなのは『マリアビートル』に出てくる殺し屋のコンビ、蜜柑と檸檬!
新幹線の中で人が殺し殺されまくるドヤバイ話なのに、悲壮感なく軽快なテンポで楽しめるのは、純文学オタクの蜜柑と機関車トーマス好きの檸檬の、噛み合ってるようで噛み合ってない会話が最高のエッセンスになってるってのもあるんじゃないかな!!
二人とも殺し屋としてのテクニックは一流でカッコイイし、仕事に対する使命感もあるのに、自分の好きなものの話になると、相手に伝わっていようといまいと固有名詞をガンガン出して語りまくるの。緊張感が消えたり宿ったり、本当忙しい! 超楽しい! あの二人のラジオ番組、やらないかなぁ! きっと、いつまでも聴いてられちゃうよ!
私は今回のコロナの件で、みんなから「もっとステイホームを発信して」「この記事を拡散して」って頼まれることが多かったの。でも私の役割はみんなを楽しませたり、エンタメを提供することだから、むやみに問題を提起するようなことはしなかったの。でも伊坂さんのやり方を見て、テーマが重くてもそこから最高のエンタメは作れるって改めて学ぶことができたな!
自分の頭の中の世界を常にアップデートさせて、いろんな違う種類の物語で魅せてくれる伊坂さん、そんな最高のエンターティナーにあたしはこれからも一生ついていきます!!
取材:河村道子
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