「絶望系アニソンシンガー・ReoNa」を形成した、アニメソング10曲とは?――ReoNa『unknown』インタビュー(後編)

アニメ

公開日:2020/10/7

ReoNa

 ReoNaの初のフルアルバム、『unknown』(10月7日発売)が完成した。神崎エルザ starring ReoNaとしてのリリース、そして1stシングル『SWEET HURT』の発表から、2年あまり。以来、ReoNaを「破格の才能」と称し、その楽曲の素晴らしさをお伝えしてきたが、『unknown』もまた、自信を持って「これを聴いてほしい」と幅広くオススメしたい作品である。心を動かすメロディ、聴き手の感情を受け止める言葉たち、そして何より、繊細さの中にさらなる力強さを宿すようになった、ReoNaの歌。「絶望系アニソンシンガー」を掲げて歩んできたReoNaの「破格の才能」は、数々の物語や、ライブでの出会いを通して豊かになり、可能性を広げてきた。結果、『unknown』は、ReoNa自身の足跡を映し出すとともに、あまねく聴き手に届く普遍性を持つ、傑作となった。

 今回は、『unknown』が生まれるまでの背景をたどるとともに、アニソンシンガー・ReoNaを形成するルーツの一端を知っていただきたいと考え、2本立てのインタビューをお届けする。後編では、ReoNaがいち音楽リスナーとして親しみ、影響を受けてきたアニソンについて語ってもらった。

“奈落の花”(『ひぐらしの鳴く頃に 解』)は、正に「絶望系アニソン」だな、と思います

①“季節は次々死んでいく”amazarashi TVアニメ『東京喰種√A』EDテーマ

『√A』の物語自体は、大好きな原作とはまた違った物語……というところで、ある意味半信半疑の気持ちを持ちながら観始めましたが、1話を観終えてED曲が始まった瞬間に、心をギュンと掴まれた曲。いろんな思い出だったり、後悔を残しながら季節はどんどん死んでいって、その中に何を残していても戻れることはなくて、でも毎年桜が咲くように、毎年同じ季節が巡ってくる。「テロップがなくても歌詞が届く」お歌、言葉の伝え方に、ものすごく影響を受けたと思います。amazarashiさん自体は知っていて、何曲か聴いたことはあったのですが、この曲を機に、amazarashiさんの楽曲もさらにいろいろと聴くようになりました。

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②“手をつなごう”絢香 アニメ映画『ドラえもん のび太と緑の巨人伝』主題歌

 人生で初めて買ったCDであり、人生で初めて買ったアニソン。映画館で『ドラえもん』の映画を観て、映画の内容と同じぐらい楽曲に衝撃を受けました。グッズ類、パンフレット類を映画館から買って帰ることはほとんどなかったんですけれど、その1枚を買って帰って、CDプレイヤーの前でほぼ1曲リピートしていました。

③“決意の朝に” Aqua Times アニメ映画『ブレイブストーリー』主題歌

 当時は「面白そう!」と思って(『ブレイブストーリー』を)観たものの、まだ難しくて、内容が理解できていたかといえばそうではないんですけれど、曲はものすごく鮮明に残っていて、数年後にドラマ『ごくせん』の主題歌でAqua Timezさんの“虹”を沢山聴いていた時期に、そういえば……、と思って聴き始めた楽曲。当時、中学受験とか物心ついて以来初めて環境が大きく変わるのを感じながら聴いてきた記憶。

④“アンインストール”石川智晶 TVアニメ『ぼくらの』OPテーマ

 当時、わたし私自身が「子ども」だったこともあって、どんどん「インストール」されていくまわりからの情報だったり、悪意だったり、知りたくないことばっかり増えていくのに、耳を塞いでも入ってくるいろんなものやまわりの人から散々押し付けられてくるものを「アンインストール」したいなあ……と思いながら聴いていました。

⑤“プリズム”池田綾子 TVアニメ『電脳コイル』OPテーマ

 毎週、せめてOPに間に合うように急いで帰って、テレビにかじりついていました。「出来る限りリアタイしたい……!」って思った、初めてのアニメ。当時、聴いたことがない音から始まるイントロが、少し仄暗い、たまにちょっと怖いな、と感じていた作品の世界観にぴったりで印象に残っています。

⑥“花 -a last flower-”ASA-CHANG&巡礼 TVアニメ『惡の華』EDテーマ

『惡の華』っていう作品自体、「アニメって自由だなぁ」とすごく思った作品でした。独特のリアリティがある作風に、ゾクゾクする生々しさがある内容、OPのストーリー展開につれてそれぞれの登場人物にそった歌詞が展開していくのも衝撃でしたが、その衝撃を超えていくEDでした。1話を観た時に、「この衝撃を味わっている人が他にもたくさんいるはず……!」と思って、いろんな動画サイトに上がってるコメントやSNSを見て回りました。

⑦“サムライハート(Some Like It Hot!!)”SPYAIR TVアニメ『銀魂’』EDテーマ

 小学校の頃に観た『銀魂’』の主題歌。アニソンとかアニソンじゃないとか、当時はまだあんまり気にしておらず「かっこいい……!」と思ってひたすら聴いていた楽曲。実はデビュー前にライブでカバーしたこともあるお歌。当時は数十人のお客さんの前で披露して、「みんなが知っているアニソンを披露すると、こんなに盛り上がるんだ…!」と思った記憶。

⑧“奈落の花”島みやえい子 TVアニメ『ひぐらしの鳴く頃に 解』OPテーマ

「アニメってやっぱりとんでもない……」と思うきっかけになった作品です。救いのないストーリーの中で、それに寄り添うサビの歌詞がぐるっと全部まとめてたまらなく刺さりました。正に「絶望系アニソン」だな、と思います。

ReoNa

『PSYCHO-PASS サイコパス』を観て……「きっとわたし、犯罪係数高いんだろうな」と(笑)

――「絶望系アニソンシンガー。ReoNaを形成した10曲」、ここまで非常に興味深いラインナップになってますね。

ReoNa:自分の中の、色濃いところから取ってきました。音楽的にも、作品的にもが好きな曲を選んでいます。めぐりあわせじゃないですけど、もともと好きだった原作で、アニメを観始めてがっちりハマった曲、それこそamazarashiさんなどは心を掴まれました。「この楽曲があったから自分はこうあれた、自分はこうなった」という曲たちです。

――ここ数年のアニメソングで言うと、どういう曲が好きなんですか。

ReoNa:『暗殺教室』のエンディングテーマになっていたmoumoonさんの“Hello,shooting-star”が好きです。アニメの中ではすごくドンパチやってる中で。絵本みたいな絵の中で、この曲が流れていて絵とあわせてすごくよかったんです。エンディングのあったかさというか、歌のあったかさが好きでした。自分自身、「そういえば自分も色にまつわることを歌うようになったなあ」と思って、改めてこの曲の歌詞を読み返したときに、《描いても描いても きれいにならない/選んだ絵の具に 罪はない》っていう歌詞を見て、今でもささるなあ、と思いました。

 あと、『PSYCHO-PASS サイコパス』の“名前のない怪物”(EGOIST)も好きです。わたし、当時リアルタイムじゃなくて、追いかける形で『PSYCHO-PASS サイコパス』を観始めたんです。「このアニメも絶望系だよ」って勧められて。なんかこう……「きっとわたし、犯罪係数高いんだろうな」みたいな(笑)。

――ははは。うーん、こう言ってはなんだけど、係数高そう(笑)。

ReoNa:(笑)「自分は係数高いんだろうな」と思いながら観ていて。気持ちを数値化されるときに「なんで?」って思いそうだな、と考えてました。それって、めちゃくちゃ理不尽じゃないですか。“名前のない怪物”は、曲自体は知っていて、ラジオとかでも聴いたことがあったけど、アニメを観ていろいろなことを考えながら聴いたときに、改めて「“名前のない怪物”、なるほど!」と思いました。

――話を聞いていると、アニメの物語としっかりつながっている、連携している楽曲を好んで聴く、そういう楽曲から影響を受けてきた、という傾向が見えてきますね。

ReoNa:そうではない曲って、曲自体は好きになれても、作品との紐づきがない分、記憶の中でどんどん作品と離れていっちゃいます。「なんでこの曲を知ってるんだろう?」と思ったら、あの作品の曲だった、みたいな紐づきがあるほど、記憶の中で色濃いものになります。それが自分の体験とくっつくと、さらに強いものになっていく感じがします。

――なるほど。“Hello,shooting-star” “名前のない怪物”を含めて、アニソンを10曲挙げてもらったわけですけど――。

ReoNa:挙げようと思えば、ボコボコと挙がってきます。原作が好きだったので『クズの本懐』を観ていたんですけど……やっぱり「平行線」っていう言葉(EDテーマ“平行線”さユり)は、あの作品の痛くも儚くも美しい、切実な思いと思いのぶつかりあいを表していると思いました。原作を読んでいたときから、「少女漫画なのに、なんでこんなに人の汚いところ、生々しさやドロドロしたところをこんなにかわいらしくフォーカスできるんだろう」と思っていて。その中で、どこまでいっても交わらない、交われない、作品の中に出てくる人物像と曲のタイトルの“平行線”が、自分の中でズバッと一致して、「はあ~~」ってなってました。あとは、それこそ『ソードアート・オンライン』ですね。“シルシ”(LiSA。TVアニメ『ソードアート・オンライン』《マザーズ・ロザリオ》編 EDテーマ)を聴くと、物語のある瞬間にすごく強く結びついた曲が、自分の中に残るんだろうなって思ったりします。

――シーンとセットで、楽曲が記憶されていく。

ReoNa:はい、生きた印を託していったユウキが……まさに、シルシ、ですよね。あの世界の中で生きて、人と交わって、自分が生きたシルシを、誰かに残していく。《アリシゼーション》編でも、ユウキの魂はそこにあったので、それを思い返しても、あのシーンは言葉にならなくて。もう、つぶやいて共有したいけどつぶやけない、みたいな気持ちで観ていました。ユウキっていうキャラクターだったり、“シルシ”という曲は、《マザーズ・ロザリオ》編の映像と一緒に、すごく記憶に残っています。

ReoNa『unknown』インタビュー 前編はこちら


取材・文=清水大輔 写真=北島明(SPUTNIK)
ヘアメイク=Mizuho