愛されて、知ったことがある。強く、たくましく、優しく進む、LiSAの現在地――LiSA『LEO-NiNE』インタビュー

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更新日:2020/11/17

LiSA

 LiSAが、17枚目のシングルと、5枚目のオリジナルフルアルバムを、10月14日に同時リリースする。『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の主題歌“炎(ほむら)”と、『LiTTLE DEViL PARADE』以来3年半ぶりとなる、『LEO-NiNE』。LiSAが立つステージ、LiSAが歌う楽曲が見せてくれる景色は、この1、2年で飛躍的に大きく、広がってきた。主にそれを引き寄せたのは、TVアニメ『鬼滅の刃』の主題歌であり、2019年のNHK紅白歌合戦に初出場を果たしたときに歌われた“紅蓮華”だった。受け取る誰かの心を動かし、奮い立たせる楽曲を、音楽を届けることの意味が変わってしまいそうなほどの状況に見舞われた2020年も、LiSAは歌い続けている。それは、自らのメッセージをブレることなく発信し続けてきた、LiSAだからこそできることなんだと思う。そして来年、2021年に、LiSAは自身の名義でデビューしてから10周年を迎える。LiSAの歩み・楽曲・メッセージは、これからも僕たち聴き手の背中を押し、楽しませてくれることだろう。

 今回の2作同時リリースにあわせて、2本立てのインタビューをお届けしたい。後編は、5thアルバム『LEO-NiNE』がテーマだ。LiSA自身が、アルバムについて「炎のように。ライオンのように。強く、たくましく、優しく、自分らしく、未来を最高だと信じながら、どこまでも進んで行けますように。」と言葉を寄せているが、まさにその通りで、強さとたくましさ、そして特に優しさを感じさせる、素晴らしい1枚である。アルバム制作に臨んだ際の自身の心情と、『LEO-NiNE』を経て実感したことについて、話を聞かせてもらった。

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目の前のことに一生懸命立ち向かう、向き合うことを続けてきたから、このアルバムを出せることに対して、今はすごく自信がある

――5枚目のフルアルバム『LEO-NiNE』、前作の『LiTTLE DEViL PARADE』から3年半経って、待望の1枚ですね。最初に感想を言わせてもらうと、このアルバムをラストまで聴いて、泣きました(笑)。

LiSA:ははは。どの曲ですか? “晴レ舞台”?

――では、ないです。もちろん、“晴レ舞台”もすごくいい曲だけど。

LiSA:じゃあやっぱり、“BEAUTIFUL WORLD”ですか。

――なぜ?

LiSA:“BEAUTIFUL WORLD”は、歌詞から「愛せたんや。こいつはついに自分を愛せたんやぁ」って、グッときてしまったんじゃないかな、と。

――そう(笑)。

LiSA:(笑)やった~(拍手)。

――“BEAUTIFUL WORLD”に感動してぶっちゃけ泣いたし、このアルバムに出会えたことに感謝するし、LiSAと同じ時代に生きていてよかったなあ、としみじみ思う、そんな1枚が『LEO-NiNE』です。で、もちろんそれは自分だけではなく、そう感じる人は、きっとたくさんいると思います。

LiSA:ありがとうございます。今、全LiSAッ子がそう感じてくれる確信を持てたので、安心しました(笑)。

――まずはこのアルバムの出発点を聞いていきたいんですけど、実はアルバムへの本人コメントが、ある意味すべてを表しているな、と思ってまして。「炎のように。ライオンのように。強く、たくましく、優しく、自分らしく、未来を最高だと信じながら、どこまでも進んで行けますように。」という。

LiSA:わたし、このアルバムに入れる手紙を書いていて。実はアルバム自体が延期になったことと、結果どういうアルバムであったらいいなと思っているかを、ラブレター(CD)の中に仕込んでるんです。その手紙を書いているときに、今こういう状況だからこそ、みんなの背中を押すような曲であったり、このアルバムがすごく必要だと思って。「だから今、届けます」っていう手紙を書きました。ずっと、いつアルバムを出すべきなのかを考えていたけど、それが今だって思えたし、自分の中でしっくりきました。

 もともとこのアルバムは、春に出るはずでした。でもその頃はみんな生きることに必死だったような状況で、新しい楽曲を届けたとして、みんなもそれを受け取ってくれるだろうけど、すごく酷なことだな、と思ったんです。もっと大事にしなくちゃいけないものがあったと思うし、今までも音楽をたくさん作ってきたから、今じゃないなって。で、ライブも全部延期になっちゃって、ほんとに先が見えない状態だったけど、わたし自身も今年に入ってから実家に帰れなかったり、おばあちゃんにも会えてない、みたいな状況もあって。みんながピリピリしていて、でも同時にみんなが遊びたがってる、日常を求めてる、もともと幸せだったことを思い出しているのが、今の時期なのかなって思いました。新しいことにみんなが立ち向かっていく時期、というか。遊び方をそれぞれが考えていくときに、今この『LEO-NiNE』を出すのは、ピッタリだな、と。

――まさにそうですね。「もう1回前を向いて進もうよ」って思ったときに『LEO-NiNE』があると、めちゃくちゃ心強いし、力を与えてくれるなって思うし。

LiSA:そうなんです。

――ライブができないことは、アーティスト・LiSAのあり方にどんな影響を与えたんでしょうか。

LiSA:う~ん……もう、リアルに立ち止まりましたね。本当の意味での音楽のあり方、CDの出し方、CDの意味を考える機会になりました。ライブで会うためのラブレター、じゃなくて、相手のことを思って作る、思いを継ぐラブレターとして、その本質を考える機会になったと思います。やっぱりわたし自身も、ライブで見せるための曲作りを意識的にやっていた部分はあって。それは、わたしにとってライブが日常だったからですけど、CDを聴いてくれる人にとって、もしかしたらライブは日常じゃないかもしれない。だから、ひとりでいるときだったり、今会えない状況のときに聴く音楽として、みんなが受け取ってくれるラブレターとして作る必要があると思ったし、そういう音楽をやる必要があるな、と思いました。

――CDはラブレターであると、もう10年近く言い続けてきたじゃないですか。「今日もいい日だっ」も言い続けてる。ずっと同じメッセージを発信し続けてきて、それが今、改めて大きな意味を持っているな、と思うんですよ。

LiSA:うんうん。

――このアルバムを聴くと、本当にそう思う。デート(ライブ)にしてもそうで、作品は、ライブはLiSAにとって何であるのかを、言葉にし続けてきた。それってすごく強いことだし、その気持ちがアウトプットされたのが、この『LEO-NiNE』であると。自分はずっと表現者のあり方としてLiSAは正義であると思っていて、それは常に相手のことを考えて、相手のために全力を尽くしている。その根底には愛されたいという気持ちもあったし、そう願ってきたし、実際にたくさんの人に愛される存在になった。今までやってきたことがすべて積み重なったときに、今のこの状況さえもある意味ではLiSAの味方になってる、というと変だけど、自分がやってきたことが間違ってなかったことを示してくれるアルバムなんじゃないかな、と思うんですよね。

LiSA:そうですね。もちろん、そこまで考えられていたわけではないけど、生き方というか、自分のアーティスト人生の進め方として、目の前のことに一生懸命立ち向かう、向き合うことを続けてきたから、このアルバムが完成して、出せることに対して、今はすごく自信があります。

――よく、歌詞を書くために身を削ってきた、みたいな話をしてたじゃないですか。でも、それも自分自身のためだけにやってきたことじゃなくて、誰かに何かを届けるためにしたことでだし、愛してくれる人たちに一生懸命応えるための結果であって。そういう意味でも、『LEO-NiNE』は今までのすべてが報われたようなアルバムだなって思う。

LiSA:そうですね。そして(M-1の)“play the world! feat.PABLO”の歌詞にも書いてるけど――愛される覚悟を決めて、愛し抜く覚悟も決めて、まだまだ進んでいくぞっていう気持ちを入れられました。

――《愛される覚悟も決めた》という歌詞は、超パワーワードですよね。これこそ、ちゃんと向き合ってきた人だけが言うことを許される言葉だから。その努力をしてこなかった人がこれを歌ってたら、なんて図々しいんだ、と思うし(笑)。

LiSA:「愛されてやるよ」って?(笑)。

――そう。だから、なにげにすごい始まり方をするアルバムだなって思う。ちゃんと自分がやってきたことに自信や確信がないと、こんな言葉から始まれないでしょう。

LiSA:うんうん。でも、そうですね。

――ちなみに、『LEO-NiNE』ってどういう意味なんだろうって考えていたときに、アルバムのクレジットに入ってるクリエイターさんを数えたら、編曲の江口亮さんを加えると、ちょうど9人で。

LiSA:おお~~……それにしましょ(笑)。

スタッフ:よくわかりましたね(笑)。

LiSA:それは意図してなかったですけど、ご想像にお任せします(笑)。

――(笑)しかも、わりと同じ人たちが関わり続けてきて、音楽が進化し続けてるのもすごいな、と。

LiSA:それはほんとに、みんながLiSAをすごく愛してくれてるからだと思う。わたしに「LiSAちゃんはこうであるべき」「俺はこれしかできない」って、作家のみんなが押しつけないし、みんなが同じLiSAを見て一緒に進めてくれている、というか。今回、すごく愛されていることに改めて気づきました。『LEO-NiNE』自体は、「ライオンのように、勇猛な、堂々とした、たくましい」っていう意味の持つ言葉です。

――LiSAとしての活動は9年目だし?

LiSA:そうそう、それは合ってます。作家さんが9人、は気づかなかったけど。9人のライオンで作りました(笑)。

――(笑)さっきのコメントの話に戻ると、このアルバムに特に感じるのは「優しい」の部分でした。強さとかたくましさも当然入っているけど、「アルバムをどう届けたらその人たちのためになるのか」を考え抜いたところに、受け手に対しての気持ちが出ているし、音楽にもそれが現れている。それこそ前編で話してくれた“紅蓮華”のエピソードからしても、今のLiSAというアーティストは、ある意味目の前に一緒にいる存在ではないような気がするんですよ。でも、前を歩いていて、我々が見えるところにいて、そこで待っていてくれている。だから『LEO-NiNE』を聴くと、この人に未来を預けたいな、任せたいな、と思う。

LiSA:待ってます(笑)。わたし自身、毎日ブランドものを着るようなスターになりたいわけじゃなかったから。もともとパンクが好きだった理由も、自分にすごく近い存在だったからだし、いつまでも近所のお姉ちゃんでいたいんですよね。

――近所のお姉ちゃんにしては、最近の活躍ぶりには後光が差してる感があるけど(笑)。

LiSA:(笑)近所のお姉ちゃんなのに呼び捨てされる感じがいいんですよね。昔、団地に住んでたことがあったんですけど、年下の男の子たちや妹の友達が、平気で「おい、りさー!」って呼んできたんですよ(笑)。その感覚と今って、すごく似てると思っていて。みんながずっと同じように扱ってくれるから、すごく気が楽ではあります。

LiSA

着飾ってないわたし自身の気持ちがたくさん入ってるから、わたしの中でこのアルバムはパンク

――アルバムの収録曲を、いくつかピックアップして、話を聞いていきたいんですけど――。

LiSA:わたし、“晴レ舞台”がめっちゃ好きなんですよ。というのは、わたしも何度もこのアルバムを聴いてるんですけど、“晴レ舞台”って、わたしが紅白に出たときの気持ちでもあるんですよね。みんなに支えられて生きているんだけど、わたし自身が自分であることを歌っていく歌、というか。自分自身が歌を歌うことに向き合った時間を書いている歌なので、すごく好きです。

――なるほど。ちなみに、M-1の“play the world! feat.PABLO”を聴いて感じたのは、圧倒的なポジティブさでした。で、圧倒的なポジティブさって、「LiSA自身だけ」のものじゃない気がするんです。実際には、けっこう内省的な人なわけで。

LiSA:そうですね。

――これは、LiSA自身の外からやってきたいろんな要素が作用して、この歌詞を書かせてくれたんじゃないかな、という印象がありましたね。

LiSA:うんうん。“play the world! feat.PABLO”は、一番そういう曲かも。今まで愛してきてくれた人たち、それはファンの子たちも含めて、何があってもずっと信頼してくれる人たちがいるから。最後の“BEAUTIFUL WORLD”でも《傍にある愛に気づいたから》って書いてるけど、そばにずっとあったものが本当の愛だったんだって気づいたんですね。

――LiSAに向けられたすべての愛情が、ポジティブさを生み出している、と。

LiSA:そう。愛されることで、人は自信を持って、世界のことを愛したり、自分のことを愛したりできるんだなって。そのことに、アルバムを通して気づきました。

――M-4の“マコトシヤカ”ですけど、「なんで中日の応援ソングをやってるのか?」が、とりあえず気になって。岐阜の人だから?

LiSA:一番の理由は、やはり岐阜県という東海エリア出身だから。でも、野球を観るようになって、すごく楽しいんですよ。めちゃめちゃハマっちゃって。今までまったく観たことがなかったですけど、これってアニメに対する姿勢と同じで、関わらせてもらう機会がきたから「頑張る、愛するぞ」って勉強したら、めっちゃ好きになっちゃった。“マコトシヤカ”はやっぱり、先輩(田淵智也。作曲)は本当にこういう曲を作るのが上手です。野球を観ていて、自分でも「この歌、最高だな」って思うし(笑)。

――(笑)M-8の“わがままケット・シー”は、エロさと生々しさにビックリしました。

LiSA:これは、ちょっと王子(BIGMAMA・金井政人。作詞・作曲)のせいにして、楽しませてもらいました(笑)。

――この曲だけ、歌詞にも作曲に本人は関わってないじゃないですか。ある意味一番のチャレンジだっただろうし、今までだったらこの曲を選んでないでしょう。

LiSA:うん、選んでないですね。みんなが一番ビックリする曲だと思います。

――M-11の“ハウル”は新曲じゃないけど、アルバム全体のメッセージを感じてから“ハウル”で紡がれている歌詞の言葉を見ると、非常に感動するなあ、と思いまして。

LiSA:『LEO-NiNE』の構成を組んでいたときの最初の候補には、“ハウル”は入ってなかったんですよ。でも、『LEO-NiNE』っていうタイトルができて、自分の中で構成を組んでいったときに、ここに“ハウル”が必要だ、と思ったので、入れました。

――LiSAはそこで待っていてくれる存在だ、という話をしたけど、その象徴がこの曲だなって思いました。《待たずに行け》って歌詞で言ってるんだけど、同時にLiSAは待っていてくれてるんだって感じさせてくれるし、聴き手を安心させてくれる曲なんじゃないかな、と。

LiSA:ありがとうございます。

――M-13の“BEAUTIFUL WORLD”は、《もういいよ》という歌詞がとにかくささりました。実は近くにある愛に気づいたし、十分受け取ってきたんだよ、と。このフレーズを聴くと、熱いものが伝うわけです。

LiSA:ははは。みんみん(小南泰葉。作曲)も、歌詞が《もういいよ》から《Won’t be long》になるのいいねって言ってました。「そこ、めちゃめちゃ気持ちいいね」って(笑)。

――(笑)やっぱり、誰よりも愛されることを願ってきた人の言葉だな、とも思うんですよね。

LiSA:はい。で、それもやっぱり、自分を縛るものだったと思うんです。もちろん、そのためだけに頑張ってきたわけではないけれども、そこから解放された、自由になったというか、今の自分は全部を受け入れてもいい気持ちなんだなって思いました。自分が愛情を表現するときに、それが押しつけがましくならないように、大人だから引かなきゃ、意図的にそうしなくちゃって思いつつ、もがきながらそれをずっとやってきたけど、“play the world! feat.PABLO”で書いているように、愛されて知ったことがあるし、こういう自分でもちゃんと愛してもらえるんだなって感じて。自分の身を削り過ぎなくても、大事なものはそばにいてくれるんだなって思ったから、“BEAUTIFUL WORLD”の歌詞が書けました。このアルバムを改めて聴きながら――言葉としてしっくりくるものなのかわからないですけど――すごく等身大だな、と思ったんです。わたしの生身の気持ちというか、着飾ってないわたし自身の気持ちがたくさん入ったアルバムだから。わたしの中で、このアルバムはパンクだと思ってるんですけど(笑)。

――(笑)アルバム全体が?

LiSA:はい。パンクって、自分が自分であることを飾るんじゃなくて、自分で自分であることの象徴なんですよね。人を攻撃するのではなく、自分を守る音楽なんです。だからそれは、自分自身でもある。コメントにも、「自分らしく」っていう言葉を入れたし、『LiTTLE DEViL PARADE』のときも、今までも散々「自分らしく」って言ってきたけど、それは「そうでないといけない、自分らしく生きていくんだ!」っていう、もがきもちょっと入っていたと思います。でも今は、もう少しフラットな気持ちですね。

――確かに、『LDP』のときも「自然体だ」と言ってましたね。剥いでも剥いでも自然体が出てくる、マトリョーシカみたいな状態になってるけど(笑)。

LiSA:そうですね(笑)。

――長いことこうして話を聞かせてもらっていて、「この人変わったな」と思ったことがないんですよね。LiSAという人は、なんでもかんでもが大好きな超ポジティブ人間というわけではないし、イヤなことがあればシュンとなることもある。その自分って、簡単には変えられないじゃないですか。人間性は変わらず、表現者としてはどんどんタフに、優しくなっている。その上で、近くにいてくれる存在であることを教えてくれるアルバム、それが『LEO-NiNE』だと思います。

LiSA:ありがとうございます。

――では最後に、10周年に向けての決意をお願いします。

LiSA:やっぱり、変わらないですね。目の前にあることに対して、誠実に、一生懸命進んでいく、一生懸命生きていく。これからもよろしくお願いします。

取材・文=清水大輔  撮影=藤原江理奈
スタイリング=久芳俊夫(BEAMS) ヘアメイク=田端千夏

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